陸域のリン循環に及ぼす人間活動の影響−資源及び水循環系からの視点−

 

小野寺真一(広島大学大学院総合科学研究科)

 

20世紀後半の50年間で肥料使用量が10倍以上に増加し、結果として、肥料資源としてのリン鉱石が今後数十年で枯渇するだろうと議論され始めている。合わせて、再利用・再循環技術が検討されてきているが、この技術の実用化にはまだ時間を要するため、現循環系における再利用及び再循環の検討も重要である。現在までの活発化した人間活動の中で、陸域のリン循環は極めて加速してきたといえる。この点についてこれまでの研究レビューの結果を紹介したい。特に肥料を大量に使用してきた農地での変化が著しく、その影響範囲は海域を含む流域スケールまでスケールアップした。また、一部のリンを吸収した農作物は収穫され都市に収束し人間を通して大量に都市部で排出されている。流域スケールの循環系の中ではこの点も重要な意味を持つ。さらに、陸域から海域への物質輸送は河川及び地下水によって行われているが、河川は極めて非定常に、地下水は不均一にリンの輸送に関与している。この点についてもこれまでの私たちのグループの研究事例も含めて紹介したい。