「琵琶湖・湖東地域の農業濁水問題に関する研究
−水域への汚濁負荷の削減に向けた社会科学的アプローチ−」
田中拓弥
水域の水質悪化を抑制する上では、流域からの汚濁負荷の削減が必要である。たとえば琵琶湖では、これまで、家庭や工場・事業所等の特定汚染源(点源)からの汚濁負荷削減策として、下水道整備や法的規制がおこなわれてきたが、農地や市街地等の非特定汚染源(面源)からの汚濁負荷に対する削減策は十分ではなく、一層の強化が求められている。なかでも、代かき田植え期に琵琶湖へ流入する農業濁水は、琵琶湖の水質悪化のみならず、河口域の景観悪化や河川下流域の生物に対する悪影響をもたらすと考えられ、実態を把握して削減する必要がある。
発表では、湖東地域における代かき・田植え期の農地からの汚濁負荷の現状や農業濁水削減策(農業土木的手法・環境保全的農業)について概説する。その上で、個々の農家による環境配慮行動を促す社会心理学的な試みについて紹介する。また、環境負荷削減活動をはじめとする水域保全活動へ、個人や組織が主体的に参加する条件についても、これまで得られた知見を述べたい。なお、演者は、琵琶湖・湖東地域の農村地域をフィールドとする異分野連携型プロジェクトに参加したが、本発表はそこで得られた成果に拠っている。