溶存酸素安定同位体比を用いた水域生態系の環境診断
陀安 一郎
水域環境のメタボリズムは、光合成と呼吸のバランスにより大きく理解される。水域生態系の溶存酸素濃度はその影響を受けて大きく変化するため、生態系の環境状態を示す指標と考えることが出来る。また、底質の酸化還元環境は化学反応を通じて系の物質動態にも影響を与える。溶存酸素の安定同位体比は、光合成・呼吸・大気との交換を受けて変化するために、溶存酸素動態を解析するツールとして用いることが出来る。そこで、本発表では、まず光合成と呼吸において溶存酸素同位体比がどのように変動するかに関する基本を説明する。琵琶湖においても近年、湖底近傍の溶存酸素濃度の年最低値が減少しているという報告があり、琵琶湖における溶存酸素動態は研究が必要となっている。本発表では、続いて演者らが近年行っている琵琶湖における溶存酸素の消費過程の研を紹介する。その他、モンゴル河川における溶存酸素同位体比の変動など、溶存酸素同位体比を用いた研究の応用に関していくつかを紹介する。