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研究活動

2005

第174回 2005年12月13日(火)14:00〜17:00

鷲谷いづみ(東京大学農学生命科学研究科)

サクラソウの保全生態学

サクラソウは,今でこそ絶滅危惧種として野生のものをめったに見ることのできない植物になってしまったが,数十年前までは,火山灰土壌の地域であれば,水田のまわりにも,人が管理する草原や落葉樹林などにも,ごく普通にみかける植物であった.野生植物の中では例外的に基礎的な知見が蓄積しており,また、保全の実践を意識した情報発信に心がけてきたこともあり,サクラソウは,「かつて普通の絶滅危惧種」の保全のシンボルとしての地位を獲得している.絶滅リスクに対して種内の遺伝的多様性はきわめて多義的な内容を含み,個体群過程と密接に係わる動態を示し,さらに,核酸という物理的実体に制約された仮想的一次空間ともいうべきゲノムにおける遺伝子間相互作用の影響を強く受ける。そのため、個別の生物学的な階層内に閉じた研究では,保全や再生の現場に有効な情報・理解を得ることが難しい.生態的な諸関係の複合としての個体群統計学的過程と多様な遺伝子の相互作用を含む遺伝的な過程を,それらの間の相互関係も含めて包括する研究することが求められる。ここでは、野生植物の遺伝的多様性を考慮した保全戦略に寄与するサクラソウを他殖 性野生植物のモデルとした包括的で基礎的な研究の初期段階の研究成果について、その一端を紹介する。

安東義乃(京都大学生態学研究センター)

外来昆虫アブラムシが外来植物セイタカアワダチソウの繁殖パタンとその上の昆虫群集に与える影響

生物多様性の低下などの外来生物の生態系への影響が懸念され、早急にその対策を取る必要があるといわれている。しかしながら、防除への関心が先行する中で、外来生物が実際にどのようなメカニズムでいかなる影響を生態系に与えるかについては、ほとんどわかっていない。

北アメリカからやってきた外来植物セイタカアワダチソウは、秋の風物詩となるくらいに日本でその姿は珍しくはないが、生態系へのかく乱を理由に危険度の高い外来種として登録されており、刈り取りなどの対策がとられている。それでは、セイタカアワダチソウはどのように在来種に影響を与えているのだろうか?この新参者は日本の昆虫と相互関係を築いてきたが、刈り取りによってどのようなことが起こるであろうか?これらのことを明きらかにするために、まずセイタカアワダチソウがどのような昆虫とどういった相互関係を形成しているかを明らかにする必要がある。同じ原産地北アメリカからきたセイタカヒゲナガアブラムシは、セイタカアワダチソウ上の昆虫群集に間接的な相互作用を通して大きな影響を与えていた。さらに、このアブラムシの吸汁により、セイタカアワダチソウは種子繁殖よりも地下茎による栄養繁殖を行うようになった。今回は、在来の昆虫に対して与える影響の実態と今後の予測について生物間相互作用というメカニズムの観点から考察する。また、セイタカアワダチソウの繁殖様式が植物群落にあたえる影響に注目し、在来植物への影響を考 察する。さらにこれらのことを踏まえた上で、刈り取りという対策への問題点と今後の外来生物とのつきあいかたについて議論したい。

参加レポート

吉田祐樹(前期博士課程2年)

今回のセミナーは東京大学の鷲谷いづみ教授と、生態研センターの大学院生である安東義乃さんに講演していただきました。

絶滅危惧生物の保全を考える上で重要な概念の一つに「種内の多様性」が挙げられます。鷲谷教授のアプローチは、サクラソウというモデル種を設定し、目に見える生活史や個体群動態を追うだけでなく、遺伝学的な手法やゲノムの視点を取り入れて、種内の遺伝的多様性の挙動まで包括的に明らかにしようというものです。

具体的には、局所個体群内および個体群間での遺伝子流動を把握すること、遺伝子流動に重要な生活史特性を把握すること、種内の遺伝的多様性を大きな地理的スケールで把握すること、近交弱勢の実体を把握すること、などを目標にされています。その基盤として先ず、葉緑体DNAやマイクロサテライトの多型マーカーを開発しました。さらに鷲谷教授らの特筆すべき点は、QTLマッピングを見据えてサクラソウの連鎖地図作成にも着手している点です。以前より野生サクラソウには花筒の長さや開花時期など、繁殖に影響するであろう形質に関して個体差が知られていました。異なるタイプ同士を交配し、雑種後代において表現型と連鎖するマーカーを探すことで、表現型の違いをもたらす遺伝子座がいくつあり、それらが何番染色体のどの領域にあるのか位置をつかむことができます。将来は、花筒の長さを決める遺伝子がどのような自然選択を受けて進化してきたのかなども、(理論ではなく)実証的に明らかにできるでしょう。

分子マーカーを用いた例として、沢沿いに分布する数十haのメタ個体群の遺伝構造を解析し、種子と花粉の分散様式が異なることを明らかにした研究や、実験個体群を作って、トラマルハナバチ女王に媒介される花粉流動のパターンを追跡した研究などが紹介されました。とりわけ、局所個体群のサイズが小さい場合にランダム交配で予測されるよりもヘテロ接合度が高くなったという現象には、多くの聴衆が興味を示していました。これは近交弱勢の害が強く、ホモ接合個体がどんどん淘汰された結果だと解釈できます。人為的に自殖させて得た種子と他殖由来の種子を同時にまいたコホートを追跡したところ、自殖由来の株では高い死亡率や形態異常、開花の遅延など、様々な障害が顕在化したそうです。

以上はサクラソウが衰退していった原因をうまく説明します。人為的開発によって局所個体群が分断され孤立化すると、トラマルハナバチによる長距離の遺伝子交流がなくなり、周囲が血縁個体ばかりになるため、強い近交弱勢によって種子繁殖が失敗し、クローン繁殖によって生きながらえるのみとなったのです。また、これらの研究成果を統合することで、野生植物の保全策を立てる上での一般性のあるモデル例を構築できると期待されます。実際に鷲谷教授らは、わずかに残っている各地のサクラソウ個体群を診断し、地元の保護団体と協力して具体的な計画を立て、保全の実践につなげておられます。

現時点ではサクラソウのゲノムについて、遺伝子流動を追跡できるくらいの精度でしか分かっていません。将来的に個々の遺伝子の機能まで調べられるようになれば、異型花柱性などの繁殖形質を実現する分子メカニズムと、その進化も明らかにできるでしょう。鷲谷教授はサクラソウの園芸化に寄与した花形態の多型に興味がおありだそうですが、その違いはどの遺伝子の塩基配列で決まっているのでしょうか。多型はどう維持されているのでしょうか。今後もサクラソウ研究の進展から目が離せません。

スペシャル 2005年12月2日(金)14:00〜17:00

Kenji Kato (Faculty of Science, Shizuoka University)

Microbial loop everywhere on and in the earth

Fever to reveal unknown bacteria from various systems using culture-independent technique i.e., small subunit gene analysis seems to cease suddenly though it provides an aspect of bacterial diversity as if we opened the "Pandora's box." A grand question remains, however, as we hardly found the similar clone (>99% matches in only several hundred sequence) even from the same habitat. If we employ 97% rule to discriminate "species" of bacteria, the number of bacterial species would be infinite. Now many microbial ecologists come back to the very basic and radical stand point that we need to know "who are doing what in situ ? "

Microbial loop is a central concept in microbial ecology and probably one of the most apparent breakthroughs in Ecology since the memorial work done by a young limnologist, Raymond Lindeman, in 1942. Microbial loop works as an essential process in aquatic ecosystem driven by photosynthetic primary production. My talk today is a trial to answer the question whether microbial loop operates in another ecosystem driven not by photosynthesis. Since the finding of chemolithoprophic bacterial endsymbiont of gutless tubeworm in hydrothermal vent, food web has long been neglected from the study there. We confirm that planktonic chemolithotrophic bacterial production is significant and supports an essential portion of vent ecosystem. Furthermore, the finding solves question how hydrothermal vent constituents move and develop according to the casing and creating of a new vent.

Fereidoun Rassoulzadegan (Villefranche Oceanography Laboratory, CNRS, France / Visiting Professor, Center for Ecological Research, Kyoto University)

Life in extreme oligotrophy. The Eastern Mediterranean

Ocean biogeochemistry aims to understand the role of biological processes in the cycling of major elements in the sea. The majority of oceanic basins are believed to be oligotrophic. In this context, the Eastern Mediterranean Sea may be one of the interesting sites because of its extreme oligotrophy. In this environment, the P-limitation has often be observed for both heterotrophic bacteria and. This presentation tends to explain pathways for such a P-limitation, by proposing hypothesises, based on in-situ data we gathered during the last decade. By integrating these data, we present a conceptual model of the microbial food web in the surface layer the Mediterranean with an emphasis of its biogeochemical role.

第173回 2005年11月18日(金)14:00〜17:00

椿 宜高(独立行政法人 国立環境研究所)

動物の空間分布予測:生物多様性科学が生み出した、生態学と生物地理学の接点

生物多様性の保全という実用的な要請がさまざまな分野の融合を促している。生態学と生物地理学はこれまでも何度かの接触があったが、また新しい接点が生まれようとしている。これまで、生態学は主として地域個体群、群集、生態系に見られる生物間の相互作用の解明をめざしてきたため、観察の対象を狭い空間、しかも観察しやすい場所に限ることが多く、得られた結果の拡張性に難点があった。一方、生物地理学は生物の分布範囲の今と昔が主な興味の対象であり、分布範囲内の個体数の濃淡(分布構造)への関心は薄かった。そこに生物多様性保全からの実学的な要請が割り込んできたのである。その結果、生物地理学的な知見と生態学的な知見を盛りこんだ生物の生息分布地図が必要だが、これまで両分野が作ってきた生物分布地図は保全目的には使い物にならないことが露呈されてしまった。このことは、道路地図の使い勝手と比較するとよくわかる。狭い地域を綿密に調べる生態学と広い地域を薄く調べる生物地理学から脱却して、綿密かつ広域の地図を作るには、生息地選択に関する情報をパラメータ化した一種の経験モデルが役に立つと思われる。

このような観点から、動物、とくに昆虫類の推定分布地図作りを行っている。情報源は主に環境省の自然環境基礎調査、気象庁のメッシュ気候値、国土地理院の地図情報(標高データ)である。自然環境基礎調査の動物分布情報はさまざまな弱点をもっている。最大の問題は生息記録だけで非生息の情報を含まないデータセットであり、ある生物の生息記録がないのは、本当に生息していないのか、調査が不十分なために記録がないのかを区別できない点にある。このような弱点のいくつかを克服する手法を開発し、日本の主四島産のトンボ130種(ほぼ全種)の生息地選好性を検出し、その結果を用いて分布予測地図を作ってみた。まだ荒削りなものであるが、話題提供としたい。

片山 昇(京都大学生態学研究センター)

花外蜜腺をもつ植物の被食防衛ーアリ防御戦術のコストと利益ー

植物は自身を食害する昆虫などに対抗して様々な防衛手段を進化させてきた。花外蜜腺もその一つで、花以外の器官から蜜を出してアリを誘引し、アリに植食性昆虫を攻撃・排除させていると考えられている。花外蜜腺は、多系統の植物で独立に進化してきたと考えられ、さらに、同属の近縁種間でも花外蜜腺をもつ種ともたない種がみられる。このことは、花外蜜腺による防衛手段には、生理的または生態的制約がかがることを示唆する。

カラスノエンドウVicia angustifoliaは、温帯地域に分布するつる性のマメ科の一年草である。カラスノエンドウは葉柄部に花外蜜腺を持ち、アリが植物上に誘引される。本研究では、花外蜜腺による被食防衛の特性を明らかにするために、室内および野外実験によりアリによる被食防衛の効果を推定し、以下の結果が得られた:(1)カ ラスノエンドウはN含有量の高い良質な葉を生産し、植食者に攻撃されやすい、(2) 花外蜜腺に誘引されたアリは植食者を排除する、(3)他の防衛戦術に比べアリによる被食防衛効果は低い、(4)花外蜜へのエネルギー的な投資量は低い。これらの結果から、アリ防衛戦術の長所と短所をまとめ、カラスノエンドウのアリによる被食防衛の意義について考察する。

参加レポート

崎山弘樹(前期博士課程1年)

11月18日のセミナーでは国立環境研究所の椿宜高博士と生態学研究センターの片山昇博士に講演していただきました。前半、椿博士は動物の分布予測地図の作成について、後半の片山博士は花外蜜腺による防衛の性質についてのお話でした。

生物多様性が重要視されている現在、それを守る方法として、保護区の設定が考えられます。限られた保護区でできるだけ大きな多様性を確保するには、ある生物がどこにどれだけいるのか、という個体密度を含めた分布が判っている事が前提となります。しかし、分布域の変遷を追う生物地理学も、特定の調査地のみを扱う生態学も、これに応える事はできませんでした。そのため演者は、環境省が行っている「自然環境保全基礎調査」、通称「みどりの国勢調査」のデータを利用しました。しかしこのデータは一般人の協力によって得られたもので、種毎、また地域間の差が大きく、そのままで使えるものではありません。そこで長年トンボを研究してきた演者は、トンボを例に、「みどりの国勢調査」のデータから分布域の推定を試みました。まず信頼できる区画を選び出し、それらの間の気温、植生を比較し、ある種の生息確率を高める要素(広葉樹林がある、等)を見つけます。気温、植生は全国について確認されているので、それらを組み合わせる事で、全国についての生息確率の推定地図を作る事ができました。元の「みどりの国勢調査」のデータとも矛盾はないようです。今後は河川の情報を取り入れる等、手法を発展させると共に、過去や将来の生物相の推測にも役立てたいとの事でした。

カラスノエンドウは花外蜜腺を持ち蟻を誘引して防衛の役に立てていますが、近縁のスズメノエンドウは花外蜜腺を持たず主に化学防衛を行っているようです。カラスノエンドウは大きな植物体を持ち、またその高い窒素含量は菌根菌との密接な関係を窺わせます。花外蜜の主成分は単純な糖で、化学防衛に比べ安価だと考えられるので、カラスノエンドウは防衛よりも成長や繁殖に多く投資しているという仮説が立てられます。防衛への投資と成長・繁殖への投資との間にはトレードオフがあるのか、同じ場所に生育するこれらの種がどのように進化したのか等がこれからの調査課題になります。

僕は不勉強にして「みどりの国勢調査」自体を知りませんでしたが、椿博士の丁寧な講演によりすんなりと内容に入る事ができました。大きな視点からだけでも、近くの視点からだけでも全体を知る事はできないというのはひどく示唆的です。そして、多くの、しかし断片的な情報からモデルを引き出す手法に、理解できたとは言えないながらも思わず聞き入りました。それが本当に正しいかは今後の検証を待たなくてはならないかもしれませんが、これが有用な道具になる事は間違いないでしょう。

第172回 2005年10月21日(金)14:00〜17:00

巌佐 庸(九州大学大学院理学研究院生物科学部門)

リーディングエイト:間接互恵によって高い協力レベルを維持できる社会規範について

間接互恵性は、ヒト社会において協力を維持する上で重要である。相互作用する相 手は頻繁に入れ替わっても、社会的評判をもちいて相手の適切性を評価し、協力する かどうかを判断する。良い評判の相手には協力し、悪い評判の相手には協力しないと いう条件依存型の行動が広がる結果、高い協力レベルが維持できる。

良い/悪いという社会規準をどのように決めれば、その結果利他行動を交換して協 力的な社会を築けるのだろうか?

これを考えるために、以下のモデルを考えた。各時刻で、プレイヤーは良い/悪い の2値の評判をもつ。また、1世代にランダムに選んだ多数の相手と一回限りのゲー ムを行ない、毎回相手が入れ替わる。このとき相手および自分自身の評判にもとづい て協力するかどうかを決める決め方「行動戦略」は全部で16通りある。各プレイヤー の評判は「評判ダイナミックス」にもとづいて変化する。評判ダイナミックスとは、 行為(協力か非協力か)、本人の評判、相手の評判に応じて次の時点での評判を決め るもので、社会規範を表す。ゲームは第3のプレイヤーが観察しそれを集団中のすべ ての他のプレイヤーに報告する。協力の実行および評判の報告に際して、希に誤りが 生じる。常に非協力をとるAll-Dは、いつもESSである(大多数を占める集団では他の ものよりも適応度が高い)。しかしその他にもESSがあり、より高い協力レベルの維持 が可能になることがある。

すべての評判ダイナミックスのもとにおけるESSすべてを解析的に計算した。全部で 4096通りの可能性の中で、8つだけは、利益とコストとの比率が1よりもわずか高け れば、ESSになれ(AllDなどの戦略が侵入できない)、かつそこでほぼ最高レベルの協 力が維持できる。これら「リーディングエイト」は次の性質をもっている:[1]互いの 間で協力が維持される、[2]裏切ったものは直ちに認識し、他の個体が罰をあたえ、ま た罰する行動自体は正当化される。[3]自らがミスをおかしたときはすぐに謝罪し、た だちに許してもらえる。またこれらの性質をもつ社会規準は、リーディングエイト以 外にはないことがわかる。

さらにリーディングエイトが示すESS 条件やESSにおける維持される協力レベルにつ いての数学的証明を示す。

時間が許せば、ESSだけでなく大域的挙動についての解析結果を示す。第3者に関す る評判がプレイヤー間で異なる可能性があると、協力が複数の戦略の共存によって実 現するなどの結果も報告する。

三木 健(京都大学生態学研究センター)

メタ群集プロセスと細菌間相互作用が駆動する細菌群集の遷移と物質循環過程の変化

生物群集は、環境変化に応答して、その「構造」(=種構成や多様性)と「機能」(=有機物の生産速度・生態的転換効率・無機化速度などの物質循環過程に関わるパラメータ)をどのように変化させるのか?という疑問は、陸域生態系・水界生態系問わず生態系科学において広く一般的な問題設定である。近年、生物群集の「構造」と「機能」の変化を説明・予測するために、「メタ群集:metacommunity」および「複雑適応系:complex adaptive systems」という新しい世界観の適用が提案されている。しかし、これらの抽象的な世界観が、特定の生物群集を対象にした理論的・実証的研究に適用された例はほとんどない。

そこで本セミナーでは、その具体例として、海洋における細菌群集とこの細菌群集の担う有機物の無機化・再生産プロセスに注目した理論研究について紹介する。上記の2つの世界観に基づく数理シミュレーションモデルの解析から、植物プランクトンによる有機物生産量の変化に応答した、細菌の群集組成と有機物無機化プロセスの変化する方向を予測できた。さらに、このような環境変化に対する細菌群集の柔軟な変化は、種のプール(=メタ群集レベルの多様性)が大きいこと、そして、個体の移動分散能力が大きいこと、によって実現していることが明らかになった。これら2つの特徴は水界の微生物が一般に持つ特徴であり、メタ群集と複雑適応系理論は、水域微生物群集・食物網研究に適用可能であるといえよう。

参加レポート

林 素行(前期博士課程1年)

さる2005年10月21日金曜日京都大学生態学研究センターで九州大学理学研究院生物科学部門巌佐庸教授と本センター所属後期博士課程3年三木健さんによる講演が行われました。僕はタイトルをみてまず「リーディングエイト」などという言葉あったかなと思っておりました。

まず巌佐庸教授には異なる利害を持つにも関わらずお互いに協力し合うことで結果的にお互いに利益を生み出す利他行動の進化を数理的に解析した結果を報告していただきました。これまで利他行動の進化に関しては相互作用する相手の血縁を重視した血縁淘汰や血縁には関係なく繰り返しお互いに利他行動を行う互恵的利他行動がよく取り上げられてきました。しかし現実のヒトの社会を見ると相互作用する相手は血縁には関係ないことは勿論相手も頻繁に入れ替わる、つまり一回限りの協力関係を繰り返しているにも関わらず高度な協力レベルを維持していることに気づかされます。こういった協力レベルを維持するために問題となってくるのが社会的寄生(協力してもらうばかりで相手には協力しない)を排除することです。ここで有用となるツールが「評判」となります。つまり悪い評判の相手には協力しない、良い評判の相手には協力することで高い協力レベルを維持できるようになります。今回巌佐教授は高度な協力レベルが進化的に安定に維持される(ESS)ためにどのように評判を決定するか、そしてその評判をもとにどのように行動すれば良いのかについて網羅的に調べられました。結果ほとんどのケースで常に非協力をとる時がESSである中「リーディングエイト」と名付けた8つのケースの場合のみ高度な協力を維持できる場合があることを示されました。僕はその命名の理由がわかって苦笑するとともに高い協力レベルを維持するためには制裁を正当化するとともに謝罪も受け入れる必要があるとしたことを知り紛争の絶え間ない国際社会と照らし合わせてなるほどと感心しました。巌佐教授は講演の最初に「全然生態学と関係のない話ですが」と笑いながらおっしゃっていました。しかし将来は生物多様性の経済効果についても研究していきたいと考えている僕にとっては実際の環境保護の現場でも異なる利害を調整しつつ全体にとって最大の効用を達成するためいかに協力し合っていくかを考える際にとても有益な話でした。

続いて三木さんが海洋細菌群集とそれが担う物質循環過程の関係についてお話をしていただきました。三木さんは細菌群集が移動分散可能な複雑多様なcomponentの集まりであるなど「メタ群集」として捉えられることに着目しました。そして植物プランクトンが生み出すPOC(溶存態有機炭素)とDOC(粒子態有機炭素)という2つの形態の有機物が付着細菌と自由遊泳性細菌の2種類の細菌群集によって無機化、再生産されるプロセスが「複雑適応系」の概念を応用することで予測可能なことを示されました。僕はあまりメタ個体群動態の理論に詳しい訳ではないですが「メタ群集」が水圏微生物集団にも適用できる可能性を知り、改めて生態系の安定を考える上で「メタ群集」の概念の重要性に気づかされました。

今回のセミナーは二人とも理論関係の方とあって参加者の数がどうかなとも思ったのですがセミナーもその後に行われた懇親会も教官、院生多数の出席をみて盛況のうちに終わりました。巌佐教授は非常に高名な方ですがとても気さくな方でほかの方の議論にも熱心に応じていらっしゃいました。僕は今回のセミナーで自分の勉強不足を痛感するとともにこれからは異分野のセミナーも含めて積極的に参加し、研鑽を積んでいきたいと思いました。

スペシャル 2005年9月14日(水)15:30〜17:30

Jonathan M. Brown (Biology Department, Grinnell College, USA)

Evolution of host association and wing patterns in the endemic Hawaiian tephritid flies

Evolutionary biologists have long studied island radiations to understand how adaptive and non-adaptive processes interact to produce a diversity of species and interactions in communities. The Hawaiian archipelago has been a productive place to undertake such speciation studies, because its extreme isolation from continental sources of immigrants and variable environments have spurred spectacular radiations of the few lineages to have successfully colonized it. The 25 described endemic species of Hawaiian tephritid flies (Tephritinae: Tephritini) feed as larvae on plant tissues, either within seedheads (capitula), on shoot-tip meristems, or within stem galls. Hosts are species of the endemic Hawaiian "silversword alliance", and endemic Asteraceae. An understanding of the evolutionary processes that have spurred this radiation requires information on host relationships or geographic distribution for most species, and a hypothesis for their phylogenetic relationships.

Our early studies of host ecology, population structure and phylogeny of these species include these findings: (1) Surveys of endemic hosts have identified several undescribed taxa (2) A preliminary molecular phylogeny based on mtDNA sequence supports a single ancestor for the Hawaiian tephritid radiation; sequence divergence suggests the age of radiation is ~ 3 mya, well after the origin of the silversword radiation. (3) There is no evidence for cospeciation between plants and herbivores; e.g., capitula-feeding species use phylogenetically distinct hosts in the same location. Shifts from feeding on capitula to shoot meristems or to stem galls may have occurred more than once. (4) Island populations of widespread species are distinct, as measured by mtDNA sequence, AFLP variation, and variation in wing pigmentation patterns.

第171回 2005年9月9日(金)14:00〜17:00

岡部貴美子(森林総合研究所)

ドロバチとヤドリコナダニの共生関係の進化 -腐食者から寄生者へ

キノウエコナダニ科ドロバチヤドリコナダニ亜科のダニは、ドロバチ類の共生者であり、その巣でのみ生存繁殖できる。キノウエコナダニ科のダニは植物体上、特に樹上に生活するものが多く、祖先的な状態は菌食者あるいは腐食者であったと推測される。ドロバチは植食性の小蛾類を狩るものが多い事実から、我々は、ダニがガ幼虫に伴って偶然巣に持ち込まれたことから、ドロバチとヤドリコナダニの共生関係が進化したのではないかと推測している。ドロバチのほとんどは巣を再利用しないため、ダニは羽化した新成虫に便乗して新しい巣へ運んでもらわなければならない。このことからダニはホストと生活史を同調させるようになり、その過程で寄主特異性を獲得したのだろう。やがて、元々腐食者だったダニに寄生性のものが出現した。我々は寄生性が発現した種として、オオフタオビドロバチヤドリコナダニを発見し、その生活史を記載した。ダニとの関係が最も特殊化していると考えられるキタドロバチ属成虫の体表面には、あたかもダニを便乗させるために発達したかのような、アカリナリウムと呼ばれる顕著なくぼみまたは空洞がある。ヨーロッパ産を含むキタドロバチ属の6種の形態を比較した結果、腹部のアカリナリウムは祖先的な状態では浅く、深いものが派生し、さらには窪みに屋根がついた"ドーム"状が最も派生的な状態であると考えた。そして、アカリナリウムの発達の方向と各ホストを利用するダニの(形態から推察される)系統がおおむね一致することを発見した。従って、アカリナリウムはダニとの共進化による産物と推測している。しかしながら、アカリナリウムが何故出現し、発達し、そして維持されているかは謎のままである。ハチはダニを世代から世代へと引き継ぎたいのだろうか?ダニと共生することにメリットがあるのだろうか?これらの答えとして、我々の仮説も紹介する。

城所 碧(生態研センター)

単独性ハナバチ、キオビツヤハナバチ(Ceratina flavipes)の生活史と交尾行動

Ceratina (ツヤハナバチ)属(Ceratina: Apidae)は熱帯から亜寒帯まで広く分布する、単独性ハナバチである。越冬期をもつ単独性ハナバチの基本的な生活史は、越冬後、雌雄が交尾。その後、雄は死亡し、雌は巣設、産卵を行う。繁殖期後、多くの雌は死亡し、次世代が越冬、と考えられ、Ceratina属の生活史も同様とされてきた。しかし越冬期間の長い、高標高地域に分布するCeratina megastigmata(クロツヤハナバチ) の雌は、越冬中すでに交尾済みであると報告されている。またC. megastigmataのオスは比較的長い寿命を持つことが知られている。これらは単独性ハナバチとしては稀な性質である。Ceratina属数種について、交尾期については報告されていないが、オスが通年のサンプリングで捕獲されていることから、C. megastigmataと同様、越冬中に既に交尾済みの可能性が示唆されている。本研究ではCeratina flavipes (キオビツヤハナバチ)を用い、交尾期を特定し、その生態学的意義を考察した。@ 越冬期間の長い北海道においてC. flavipesの野生個体を定期サンプリングし、生活史と交尾時期を明らかにした。この結果から、北海道ではC. flavipesが越冬前に交尾をおこなっている事が明らかになった。また日本各地17箇所において、越冬期間に本種のサンプリングを行い、交尾の有無を確認したところ、すべての地域において71-81%の雌が交尾済みであることが明らかになった。A しかし、過去の飼育下での観察から、越冬後交尾とされている事、雄が越冬後も生存している事から、多回交尾が示唆される。このためマイクロサテライトDNAを用いて、雌バチ(雌細胞)と雌と交尾した雄(雌の受精嚢の精子細胞)を比較し、メスの交尾回数、交尾時期、および交尾相手との均衡係数を求めた。結果、均衡係数はそれぞれ、越冬期前は0.80、越冬期中0.60、越冬後 0.31、産卵期 0.38、となり、越冬期前には近親の雄と、越冬後には非近親の雄と交尾していた事が示唆された。

参加レポート

犬塚直寛(前期博士課程1年) 『セミナーから自分の研究へのトップダウン効果』

9月9日に、第171回生態研セミナーが行われました。講演者は、森林総合研究所昆虫生態研究室長の岡部貴美子博士と、生態学研究センターの城所碧博士で、共に「ハチ」に関する講演をしていただきました。

岡部博士はハチとダニの共生関係のお話で、それまで自分はダニに関してあまりよく知らなかったのですが、ダニの分類や生態から生活環、昆虫との共生関係まで詳しく説明されたので、とても分かりやすいお話でした。昆虫との共生関係を進化させるに伴って、ダニは腐食者から寄生者へとその特性を変化させ、一方、ハチはダニによって形態を変化させるということでした。中でも、最後に話された「アカリナリウム」の進化についてはとても興味深いものでした。アカリナリウム(acarinarium:ダニ室)とは、ハチの体表面に作られた顕著なくぼみ又は空洞のことで、寄生するダニがその中に入るような構造のものです。岡部博士自身も、なぜアカリナリウムが発達したのか不明とのことでしたので、講演後にはセミナー参加者がそれぞれ仮説を考えて活発に議論をしていました。私も研究材料として昆虫を使っていますが、昆虫がダニと密接な共生関係を進化させたというお話を聞いて、昆虫の生活史や個体群動態などを調べる上でもダニの存在が重要であるかもしれないと気づかされ、非常に有意義なお話でした。

城所博士はハチの生活史についてのお話でした。博士は、一般的にオスの寿命が短いハナバチ類の中で、キオビツヤハナバチのオスの寿命が長いことに注目し、その交尾期間の長さを特定しました。そして、その交尾期間の長さがハチにとってどのような生態的意義があるのかを、交尾相手との均衡係数を調査することによって明らかにされました。この研究は、キオビツヤハナバチのオスが長寿命であるという、よく観察していなければ分からないような1つの手がかりから、その生活史や生態的意義を解明しており、興味深いものでした。私も研究で野外調査を行っていますが、決められたデータを取ることだけではなく、詳しく観察をすることで気づくような現象が、研究を発展させる可能性があることに気づかされました。

私はまだ修士課程1年であるため、研究に関しては独りよがりにはならずに先輩や先生方に研究についてのアドバイスを積極的にもらうようにしたり、他の研究者の研究を理解し、幅広い知識を身につけることが自分にとって最も必要なことだと思っています。その点に関して、生態研セミナーで様々な研究者の発表を聞くことは、今回のような私と同じ昆虫を題材とした研究だけではなく、別の分野の研究の発表も含めて非常に良い体験になると思います。今後もセミナーには積極的に参加していきたいと思います。

スペシャル 2005年7月26日(火)10:00〜15:00

Robert Holt (University of Florida)

On the 'inflationary' impact of temporal variation in sink environments

In this talk, I will discuss some interesting population and community processes that arise when temporal variation is combined with spatial flows in heterogeneous landscapes. I will first provide a context for this issue by reflecting on the "central paradigm of community ecology" in closed vs. open communities. I will then focus on how temporal variation affects population size in sink habitats, where populations persist because of recurrent immigration from sources. Theoretical and experimental studies demonstrate that autocorrelated temporal variation can increase the average abundance of sink populations. The effect can be large enough that it can permit the persistence of a metapopulation, where no site is a permanent source. After presenting these results for single populations, I then return at the end of the talk to the broader issue of understanding the impact of temporal variation on species coexistence in open communities.

References:

Gonzalez, A. and R.D. Holt. 2002. The inflationary effect of environmental fluctuations in source-sink systems. Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 99:14872-14877.
Holt, R.D., M. Barfield and A. Gonzalez. 2003. Impacts of environmental variability in open populations and communities: "inflation" in sink environments. Theoretical Population Biology 64:315-330.
Roy, M., R.D. Holt, and M. Barfield. In press. Temporal autocorrelation can enhance the persistence and abundance of metapopulations comprised of coupled sinks. The American Naturalist (to appear in August, 2005 issue).

Shunsuke Utsumi (CER, Kyoto University)

How does willow compensatory regrowth affect leaf beetle density and arthropod community structure?

We first examined the indirect effects of the stem-boring insect Endoclita excrescens on the leaf beetle Plagiodera versicolora on three willow species, Salix gilgiana, S. eriocarpa, and S. serissaefolia. When the branches were damaged by the stem-boring insect, the willows were stimulated to vigorously produce lateral shoots. Newly emerged lateral shoots were longer and upper leaves had a higher water and nitrogen content. Larvae and adults of the leaf beetle P. versicolora were significantly more abundant on lateral shoots than on current-year shoots. Leaf beetle female mass and fecundity were also improved when they fed leaves on newly emerged lateral shoots in the laboratory experiment. The stem-boring insect positively affected the leaf beetle via producing new food resources as a result of the resprouting responses of the three willow species. However the degrees of the leaf beetle response to willow regrowth differed among the three willow species because of different regrowth responses to boring damage.

Second, we examined the hypothesis that willow regrowth in response to physical damage influences arthropod community structure. In willow species, newly emerged lateral shoot sprouted in response to physical damage caused by the boring insect and flooding. Relative abundance was significantly greater on newly emerged lateral shoots of trees damaged by boring and flooding than those on current-year shoots of damaged and undamaged trees. Although species richness did not signigicantly differ among these shoots, arthropod communities were significantly different among trees damaged by the boring insect, damaged by flooding and controls. Densities of herbivores and predators increased on trees damaged by flooding. On the other hand, only herbivore densities increased on trees damaged by the boring insect. Also, we found negative correlation between abundance of leaf beetle P. versicolora and other herbivores on lateral shoots of trees damaged by flooding. These results suggest that physical damage which cause willow regrowth affects arthropod community structure in terms of increasing herbivore abundance, while the effects of the boring insect and flooding differed on density of each member of herbivores and predators.

Hideki Kagata (CER, Kyoto University)

Carbon-nitrogen stoichiometry in a bottom-up trophic cascade: plant alterability and insect homeostasis

Higher quality of plants can indirectly increase performance of the third trophic level through bottom-up cascading effects. However, the mechanisms responsible for the increased performance of the third trophic level are unclear. The present study examined the carbon-nitrogen stoichiometry in the bottom-up cascading effect in a tri-trophic system consisting of the willow, leaf beetle, and predatory ladybird beetle, and determined the mechanisms of the cascading effects.

The bottom-up cascading effects originated from changes in leaf quality due to artificial cutting of willow trees. Leaf beetle density increased due to the willow cutting, and the ladybird beetle was observed only on the cut willows. The relative growth rate (RGR) of the leaf beetle increased when fed on cut willow leaves. The RGR of the ladybird beetle also increased when fed on leaf beetles reared on cut willow leaves. The cut willow leaves had higher nitrogen content than the uncut willow leaves. Hence, the increased RGR of the leaf beetle would be due to the high leaf nitrogen in the cut willows. However, the increased RGR of the ladybird beetle cannot be explained by the quality of the lower trophic level, because the leaf beetle nitrogen was not affected by host plant quality. Therefore, the mechanisms responsible for the bottom-up cascade would be different for plant-herbivore and herbivore-predator interactions.

Noboru Katayama (CER, Kyoto University)

The ant-mediated indirect interactions between plants with extrafloral nectaries and ant-tended aphids

Plants with extrafloral nectaries (EFNs) and ant-tended aphids attract ants by extrafloral nectar and honeydew, respectively. Therefore, when ant-tended aphids parasitize on plants with EFNs, there should be not only direct interactions but also ant-mediated indirect interactions between the plants and the aphids. To elucidate the dynamics of interactions among multi-species and factors that influence them, we analyzed the direct and indirect interactions among Vicia angustifolia with EFNs, aphids and ants.

First, we conducted a field census and field experiments to clarify the effect of herbivore exclusion by ants. The number of leaf-herbivorous insects on V. angustifolia decreased with increasing number of ants on the plants. Second, we conducted laboratory experiments to examine the attractiveness of EFNs and of aphids to ants. The number of ants attracted by EFNs was conspicuously lower on shoots with aphids than on those without, and ants frequently used the honeydew of aphids on shoots with aphids. This result showed that the attractiveness of aphids to ants was superior to that of EFNs. Finally, we conducted a field survey to evaluate the net-benefit of aphid parasitism for V. angustifolia by measuring the seed production per plant. In spite of the negative effects of sap feeding by aphids on V. angustifolia, aphids provided indirect benefits to the plant by attracting more ants that exclude leaf-herbivorous insects from the plant. However, the negative effect would increase rapidly at high aphid density. Therefore, it is considered that the indirect benefit of herbivore exclusion by ants for the plant might exceed the cost of the parasitism by the aphids at lower aphid density, but that the cost might exceed the benefit for a plant at higher aphid density.

Takefumi Nakazawa (CER, Kyoto University)

A new model of intraguild interaction between host, parasitoid and predator

Intraguild predation (IGP) occurs when one species preys on a competitor species that shares a common resource. We propose a novel model of IG interactions between host, parasitoid and predator, in which the predator eats parasitized and nparasitized hosts, and the adult parasitoid density is explicitly expressed. Depending on interaction strength (parasitization and predation on unparasitized and parasitized host), the model provides six types of community structure; (1) only the host exists, (2) the host and predator coexist, (3) the host and parasitoid coexist, (4) the host-parasitoid population dynamics are unstable, (5) the three species coexist, and (6) the population dynamics of the three species are unstable. In contrast to a traditional prey-predator model with prey infection, which predicts that population dynamics are always locally stable, our model predicts that they are unstable when the parasitization rate is very high.

Takeshi Miki (CER, Kyoto University)

Intraguild predation reduces bacterial species richness and loosens the viral loop in aquatic systems: 'kill the killer of the winner' hypothesis

Viruses perform an ecological function (diversity regulation) and a biogeochemical function (viral loop) in microbial food webs. We used an idealized food web model to evaluate the impact of viral loss by protozoan grazing on these two functions. Viral loss by protozoan grazing is an example of intraguild predation (IGP); protozoan predators kill viruses, which in turn kill the winner of the nutrient competition among bacteria. The model considers the interactions among uninfected and infected host cells, free-living viruses, protozoa, and nutrients. Calculations showed that this "kill the killer of the winner" (KKW) process has a negative effect on bacterial species richness (BSR). This is because the KKW process reduces the virus to bacteria ratio, which then causes the "kill the winner" (KW) process to deteriorate. In particular, the intensity of the KKW process is influenced by the latent period of viruses; a longer latent period leads to a reduction in BSR by causing the viruses in host cells to be more at risk of being killed by grazing. In addition, when the latent period is long, eutrophication leads to a decrease in the virus to protozoa ratio, resulting in a lower BSR and a smaller contribution of the virus loop to nutrient cycling, whereas the changes are small when the latent period is short.

第170回 2005年7月8日(金)14:00〜17:00

和穎朗太(京都大学生態学研究センター、COE研究員)

Climate and mineral controls on soil organic matter storage in tropical forest ecosystems

Soil organic matter (SOM) strongly affects terrestrial ecosystem processes and functions through the storage of carbon and nutrients, development of soil structure, and alteration of nutrient cycling. SOM dynamics also greatly influence global carbon cycle. We, however, have little understanding on how SOM pool responds to climate or land-use perturbations because of the complexity in (a) soil-climate-rock-biota interactions and feedback processes among them at larger spatio-temporal scales, and (b) associations of SOM of different decay stages with a range of soil mineral particles at finer scales. Here I present two studies using undisturbed rainforest soils developed on two contrasting rock types along an elevation gradient in Mt. Kinabalu, Borneo, to tease apart some of these complexities. At the end, I discuss future research direction including possible linkage to "biological diversity".

Study 1: Temperature sensitivity of SOM decomposition by microbes in the field is currently under debate. Heterogeneous SOM can be separated according to density: light-density plant detritus free of mineral particles (f-LF), LF associated with mineral particles (m-LF), and microbially-processed OM associated with minerals (HF). In the first study, using the elevation gradient, we tested the hypothesis that temperature sensitivity of OM in HF is low due to the buffering capacity of soil mineral matrix while that of OM in f-LF and m-LF is high because f-LF is easily degradable and the formation of m-LF is likely controlled by the abundance of f-LF.

Study 2. Major fractions of SOM were in HF and well-buffered against temperature difference in the studied soils, implying that OM association with minerals controls SOM preservation. Little is known, however, on how OM is bound to mineral particles at sub-micrometer scale, preventing our mechanistic understanding of SOM dynamics. Therefore, in the second study, we used a gas sorption approach to examine how OM associates with the surfaces of fine minerals (e.g., clays) along the elevation gradient.

Teresa C. Balser (Assistant Professor, Dept. of Soil Science, University of Wisconsin-Madison, USA / Visiting Researcher, Center for Ecological Research, Kyoto University)

Climate and ecosystem functioning - does microbial diversity matter?

Soil microbial communities mediate many biogeochemical processes that are central to ecosystem functioning, including carbon (C) mineralization to CO2, nitrogen (N) cycling, and trace gas production and consumption. Despite the centrality of microbes, scientists often study ecosystem functioning without explicit reference to the microbial communities carrying out soil processes. The potential for rapid microbial growth, and the high degree of diversity and genetic exchange in microbial systems, has led to a common assumption that microbial activity does not constrain the processes involved in ecosystem nutrient transfer and transformation. Models of ecosystem functioning have thus been based on assumptions that only work well under pseudo-equilibrium conditions. For example, the assumption of first-order kinetics common in carbon cycle modeling may work well at equilibrium, but its utility in predicting soil process rates may be compromised in systems undergoing environmental transition or disturbance. In order to predict the transient responses of ecosystems to changing environmental conditions, we may need a detailed understanding of the relationship between microbial community response and changes in soil processes such as decomposition and nitrogen mineralization. We transplanted soil between a grassland and conifer forest ecosystem, incubating intact cores in situ for two years, and quantified soil process rates and microbial community parameters in cores remaining in place and in those moved to a new climate/ecosystem. We used these data to assess the importance of microbial community characteristics independent of climate in the response of soil processes to transplant.

参加レポート

潮 雅之(前期博士課程1年)

今回のセミナーの発表者は生態学研究センターの和穎さん、Teriさんでした。それぞれ、熱帯土壌に関する研究者ということで、和穎さんが土壌有機物と鉱物の関係について、Teriが気候と土壌微生物群集の構造について発表してくださいました。

和穎さんの発表では、マレーシアのキナバル山での異なる3つの標高で土壌を調査した結果が示されました。土壌を密度によって3つの画分に分け、サイトごと、画分ごとに土壌有機物がどのように変化していくか、また、土壌有機物と鉱物がどのように結びついているかといった話を聞くことができました。今まで、土壌有機物と鉱物はただ単に結合しているだけだと思っていた程度だったので、非常に新鮮な話でした。

Teriさんの行った実験は、アメリカのシエラネバダ付近の針葉樹林と草地の土壌をそっくり入れ替えて、2年間の後、土壌中の微生物群集にどのような変化が起こるかをみたものでした。BIOLOGという微生物の基質利用活性をみる実験では入れ替え実験の後、入れ替えた土壌は周りの環境に影響されてか、周りの土壌と同じような活性を持つに至っていました。しかし、PLFAという微生物群集の構造(特徴)をみる実験の結果は、2年間の入れ替え実験の後でも微生物群集の構造はほとんど変化していなかった、というものでした。これは微生物群集が気候などの環境要因だけに影響されているのではないということを示しています。微生物群集が一体どのように変化し、いつ、どうやって環境に影響を与えているのか、という疑問に対する一つのヒントになっていると思いました。

土壌というものは植物の土台となっていて、土壌を研究することは森林や草地などの植生を理解することだと思います。植物を理解することは、地球温暖化問題が深刻になっている現代社会では非常に重要なことであるし、学問的にも非常に興味深いことだと思います。

生態研セミナーは通常2人の発表者がいて、2つの題目について話がされます。普段の自分の研究とは異なった内容が聞ける機会が多くあるのは非常に刺激になることだと思います。しかし、内容が複雑になるとまだまだ理解できない部分が多く、修行が足りないということを実感せざるを得ませんが、積極的に参加していきたいです。

スペシャル 2005年7月4日(月)15:00〜17:00

Ake Brannstrom (Postdoctoral Research Fellow, Nara Women's University)

Evolutionary dynamics of altruism and cheating among social amoeba

Dictyostelium is an amoeba which, when starvation is imminent, aggregates to form fruiting bodies consisting of a stalk of dead cells that supports spores. Since different clones may be involved in such aggregations, cheater strategies may emerge that allocate a smaller fraction of cells to stalk formation, thus gaining a reproductive advantage. We model the evolutionary dynamics under the realistic assumption that the number of clones involved in aggregations follows a random distribution, and show that under these assumptions evolutionary branching into cheater and altruist allocation strategies may occur.

第169回 2005年6月17日(金)14:00〜17:00

Maurice Sabelis (Professor, Section Population Biology, Institute for Biodiversity And Ecosystem Dynamics, University of Amsterdam, the Netherlands / Visiting Professor, Center for Ecological Research, Kyoto University)

Genetic architecture of polyphagy in a soil-dwelling predatory mite

Arthropod predators usually feed on a variety of prey types. At one extreme, populations consist of an ensemble of specialists and at the other they are composed of indiscriminate generalists. In between these extremes populations may be composed of generalist predators with learned or genetically fixed prey preferences. Whether mono- or polymorphism will evolve depends on various factors, such as the cost of flexibility for the generalist, the variability in supply of various prey species and the degree to which the population is homogeneously mixed with respect to mating. Here, we report on experimental evidence for genetic variation in a local population of the haplo-diploid predatory mite, Hypoaspis aculeifer, collected from c. 0.25 m2 sandy soil in a lily field. Using two species of astigmatic mites as prey (Rhizoglyphus robini and Tyrophagus putrescentiae) two-way selection for prey preference during four generations yielded lines with preference for one or the other prey. Cross-breeding in both directions resulted in hybrid females with intermediate preferences and the choices found in females from F1xParent backcrosses were best explained by assuming monogenic inheritance without dominance. We also demonstrate that this genetic polymorphism can be maintained by heterozygote advantage and disassortative mating.

里村多香美(京都大学生態学研究センター)

冷温帯落葉広葉樹林の細根動態 - ミニライゾトロンを用いた研究 -

森林生態系の炭素循環において,細根(根の最も細い部分)は重要な役割を果たしている。細根の現存量は少ないが,細根は動的で大きな根よりも回転速度が速いためである。言い換えると,無視できない量の炭素が,細根の成長,生成―枯死サイクルや呼吸に費やされている。しかし,自然生態系における細根の役割を定量的に評価したデータは少ない。発表者らは冷温帯落葉広葉樹林でミニライゾトロン法を使って細根の動態を定量化した。細根の生成速度のピークは夏であり,時間の経過とともに序々に減少した。秋の樹木が落葉する時期でも,林文全体の細根の生成速度は高かった。林床にある常緑のササの光合成活性は上層木によって被陰される夏よりも秋に高く,ササが秋の高い細根の生成速度に貢献していると考えられた。これらの結果から立地レベルの細根の動態研究における下層植生の重要性が示唆された。

参加レポート

米谷衣代(前期博士課程2年)

今回のセミナーは、生態学研究センター客員教授(アムステルダム大学教授)としてセンターに滞在されていたモーリス・サベリス教授と京都大学生態学研究センターでPDをされている里村多香美さんに講演していただきました。

モーリス・サベリス教授は「土壌に生息する捕食性ダニの雑食性に関する遺伝的な構造」という題名で捕食性ダニ(Hypoaspis aculeifer) の局所的な個体群に起きる遺伝変異を実験により証明する研究について講演されました。

節足動物の捕食者は多様なタイプの被食者を摂食しています。捕食者の個体群には極端にいうと、複数のスペシャリストからなる個体群と、ジェネラリストからなる個体群があります。その考えから、個体群内に多型が進化するかは、@ジェネラリストにとってさまざまな被食者へ順応するためのコスト、A多様な被食者の供給量変動の大小、B個体群内における交配がどの程度ランダムかのような様々な要因に依存しているだろうと考えられています。

モーリス・サベリス教授は具体的には視覚がほぼ使えないRhizoglyphus robiniTyrophagus putrescentiae 2種を被食者として用い、捕食性ダニH. aculeifer 4世代に渡り選抜し、それぞれの被食者に対し選好性をもつ系統をつくられました。二つの系統を両方の方向に交雑するとハイブリッドのメスは中間の選好性を示し、さらに、F1 x parent の戻し交配で生まれたメスにみられた選好性は優性ではなく単一遺伝子による遺伝形質であると仮定するとうまく説明できることを明らかとしました。また、彼らはその遺伝的多型はヘテロ超優性か異類交配によって維持されることも明らかにしたとのことです。

質疑応答の時間には、先生やPDの方々を中心に質問が出されました。多くのコメントや質問が出され、白熱した議論がなされていました。残念ながら学生からの質問はありませんでしたが、多くの学生にとってセンターでは研究されていない分野の話を聞く良い機会になったと思います。モーリス・サベリス教授は最後に「今後研究していく課題を今回の議論の中から見つけられたので、発表してよかった。」と述べておられました。質の高い発表と議論が繰り広げられた良いセミナーだったと思います。

潮 雅之(前期博士課程1年)

今回の生態研セミナーの後半では、生態学研究センターの里村多香美さんが発表されました。題目は「冷温帯落葉広葉樹林の細根動態 −ミニライゾトロンを用いた研究− 」で、日本の高山(岐阜県)で行った細根動態の研究について話していただきました。

細根とは直径1.0 mm以下の非常に小さな根のことで、森林生態系の炭素動態に大きな影響を与えていると考えられるものです。しかし、その小ささや地下に存在しているという点から、観測が困難であり、特にアジア地域での研究例はほとんどありませんでした。今回の発表された研究では、ミニライゾトロンというスティックの先端にカメラがついた機器を用いて、土壌中の細根を破壊を起こすことなく観測し、その生成−枯死サイクル、細根の生長の解析を行っていました。その結果、森林生態系において細根生産による炭素消費が植物の地下部生産の50 % 近くを占めていることや、細根の動態が低木層植物の影響を受けていることなどが示されていました。しかしながら、森林生態系における細根の役割を理解するためには、さらに長期の観測が必要になってくるだろう、ということでした。

地下部という通常では見ることのできない場所での、細根という非常に小さなスケールのものが、森林生態系という大きなスケールのものに影響を与えているということが、とても興味深かったです。また、細根のような人間の感覚だけではとらえられない対象を、機器の力を借りて観測する際には、その結果表示されたものが一体どういう処理過程を経て、表示されたものであるかということをしっかり理解していなければならないということを感じました。

今回の生態研セミナーは発表が英語で行われました。聞いていてまだまだ理解度が低く、当然質問することもできませんでした。しかし、これからの生態研セミナーでも多くの英語の発表が行われるはずですので、異なった分野の方の発表でも眠らずに聞いて、理解度を上げて、できれば質問できるようになりたいと思います。今回行われた懇親会には参加できませんでしたが、積極的に参加することは重要ですので、次回はぜひ参加したいと思います。

第168回 2005年5月20日(金)14:00〜17:00

武岡英隆(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)

沿岸環境と生態系の長期変動に関する愛媛大学21世紀COEの研究活動

愛媛大学21世紀COEプログラム「沿岸環境科学研究拠点」では、「内分泌撹乱物質等有害化学物質の環境動態と生態影響」と「沿岸環境と生態系の長期変動」の2つのテーマのコアプロジェクトと関連する5つのサブプロジェクトを展開するとともに、科研費等による比較的大きな規模の5つのプロジェクトも並行して遂行している。本セミナーでは、これらの中から沿岸環境と生態系の長期変動に関する各プロジェクトの概要を紹介する。さらに、気候変動による沿岸域の栄養塩環境の変動、近年におけるクラゲ類の大量発生問題、陸域の人間活動による沿岸環境の長期変動の3つの話題 に関して詳しく述べる。

奥田 昇(京都大学生態学研究センター)

高次消費者の安定同位体比から沿岸生態系の健全性を診断する

人口の集中する都市部沿岸域では、陸域からの有機物負荷や水産資源の過剰収奪による生物多様性の消失や生態系機能の低下が問題となっている。さらに近年、地球温暖化に伴う海洋構造の変化が沿岸生態系の生産性に与える影響も強く懸念されている。しかし、沿岸生態系に与えるこれらの人為的影響を網羅的かつ定量的に調査した研究は極めて少ないのが現状である。本研究は、愛媛県宇和海沿岸の主要な漁獲対象であり、底性生物群集中で優占する高次消費者ホタルジャコの炭素・窒素安定同位体比の変動パターンに着目することによって、人為的環境攪乱下における食物網を介した物質循環過程の変遷を長期的にモニタリングする手法を確立することを目的とする。さらに、この方法論を用いて、海洋資源を持続的に利用するための生態系の健全性に基づく資源管理の在り方について提言する。2002年より毎月ブリ網漁によって採集されたホタルジャコの食性を解析するとともに、本魚とその餌生物の炭素・窒素安定同位体比の測定を行った。解析の結果、有光層下の生物が表層の植物プランクトン生産物によって賄われるという従来の海洋学の定説「表層-底層カップリング」に反して、水深60mに生息するホタルジャコを中心とした底性生物群集の炭素供給源が底性藻類であることが判った。春のブルームに伴って、表層由来の餌生物への一時的なシフトが見られるものの、その相対的寄与は低かった。また、基礎生産構造は年変動を示し、栄養塩供給に深く関わる底入れ潮の挙動が影響しているものと推察された。春のブルーム後、三次消費者であるホタルジャコが一次消費者である橈脚類を頻繁に摂食することによって、窒素同位体比の顕著な低下が認められた。宇和海の主要な二次消費者であるカタクチイワシ仔稚魚の乱獲により、食物網構造が不安定化している可能性が示唆された。最後に、地球環境変動による沿岸生態系へのインパクトについて若干の考察を加える。

参加レポート

苅部甚一(前期博士課程1年) 「生態研セミナーに初参加」

今回のセミナーは、愛媛大学沿岸環境科学研究センターのセンター長である武岡英隆教授と京都大学生態学研究センターの奥田昇助教授に講演していただきました。

武岡英隆センター長には愛媛大学21世紀COEの研究活動の概要について説明していただきました。愛媛大学沿岸環境科学研究センターは、21世紀COEプログラムの沿岸環境科学研究の拠点として「内分泌攪乱物質など有害化学物質の環境動態と生態影響の解明」と「地球環境変動による沿岸域生態系変動機構の解明と将来予測」という2つのテーマを中心に研究を進めているそうです。今回の講演では沿岸環境と生態系の長期変動に関する研究のことが中心となりましたが、特に印象に残っているのは生物試料バンク(es-BANK)についてです。これは過去40年以上の間に世界各地で採集された生物試料や大気、水および土壌などの環境資料を保存しており、これらを整理して有効に活用できるようにするというものです。すでに一部はデータベース化されています。

奥田昇助教授には高次消費者の安定同位体比から沿岸生態系の健全性を診断するという研究について講演していただきました。愛媛県宇和海沿岸の底性生物群集の中で優占する高次消費者のホタルジャコの炭素・窒素安定同位体比に着目することによって、宇和海沿岸の生態系の健全性が分かるというものでした。健全性とは食物網構造の長さであり、長ければ食物網構造は安定し、短くなれば不安定になります。つまり、生物の炭素・窒素安定同位体比を生態系の健全性の指標にするということでした。この講演の最後には生態系の健全性についての議論が活発に行われていました。

セミナーが終わると懇親会が行われました。私も参加しましたが、とても自由な雰囲気でセミナー参加者や講演者の方々といろいろなお話ができました。セミナーの時には質問できなかったことなどを講演者の方とお話できるのはこの懇親会だけなので、私自身にとってはとても意味のある懇親会となりました。

私は生態研セミナーに今回はじめて参加しました。セミナー、懇親会ともに知らないことがほとんどで、学ぶべきものがたくさんありました。次回もセミナーに参加して多くのことを学びたいと思います。

第167回 2005年4月15日(金)14:00〜17:00

竹内 望(総合地球環境学研究所)

雪氷生物研究の現在

氷河や雪渓などの雪や氷の世界には,低温環境に適応した特殊な生物(雪氷生 物)が生息している.雪氷生物の研究は,ここ数年間で急速に世界の研究者の注目を集めている.南極ボストーク湖を初めとする極地低温環境の微生物群集,スノーボールアース(全球凍結)期における生物の生存,低温極限環境における生体機構,雪氷藻類による二酸化炭素の吸収,火星など地球外での生物探査への応用などへの期待からである.我々日本国内の雪氷生物の研究グループは,過去十数年間,ヒマラヤなどの 山岳氷河を中心に,雪氷にすむ昆虫やミジンコ,コオリミミズなどの動物,雪氷藻 類,バクテリアなどの研究を進めてきた.また,雪氷生物の地球物理学への応用として,雪氷生物の氷河融解への影響,アイスコアの微生物分析による過去環境の復元などにも,力を入れて研究してきた.今回は,我々の今までの研究成果とともに現在行われている国内のプロジェクト,さらに世界各国で行われている雪氷生物関連のプロジェクトを紹介する.

高津文人(独立行政法人 科学技術振興機構)

大型プロジェクトとの関わりの中での同位体生態学研究

演者が関わってきた決して多くはないが様々な研究プロジェクトの中で、どういった同位体生態学を展開してきたかを振り返りながら、自らの研究でプラスになった点、もう少し改善できた所を示したい。具体的には、未来開拓での西の湖研究、標津川再蛇行化事業、海外科研でのモンゴル草原の食物網研究について。現在も河川の健全性を同位体指標から評価するJSTの大型プロジェクトのメンバーの1人として富栄養化と食物網の関係を研究している。まだ多くはない解析結果を示しながら、今後の展開も含めた話しをしたい。

スペシャル 2005年3月31日(木)13:30〜18:00

群集における生物間相互作用動態とその進化
From Dynamics To Evolution in Community

〜タイムテーブル〜

*イントロダクション: 山村則男・三木健

第一部: Dynamics in Community (13:30〜15:10)

  • 加賀田秀樹「生態化学量論からみた栄養段階カスケード効果:植物の変化性と動物の恒常性」
  • 仲澤剛史「宿主-寄生者-捕食者系におけるギルド内捕食モデル」
  • 三木健「ギルド内捕食がバクテリア群集の多様性を低下させる」
  • 小林由紀「河床バイオフィルムにおける細菌群集の存在量と多様性」

休憩(15:10〜15:30)

第二部: Evolution in Community (15:30〜17:00)

  • 安東義乃「帰化植物上で新たに形成される生物間相互作用網(仮)」
  • 林珠乃「植物の遺伝的変異と空間的不均一性の、上位栄養段階の群集構造に対する相対的重要性」
  • 小林豊「食物網上を伝播する「におい」と「好み」の共進化」
  • 廣永良「食物網は大量絶滅を選択的にしてその後の回復にも影響を与える」

(以上京都大学生態学研究センター)

第三部: スペシャルレクチャー (17:00〜18:00)

  • Charles Godfray (NERC Centre for Population Biology, Imperial College, U.K.)
    "Evolution of Resistance and Countermeasures in Insect-Parasitoid Interactions"

*総合コメント: 大串隆之(京都大学生態学研究センター)

コメンテータ: Elisa Thebault (Laboratoire d'Ecologie, Ecole Normale Superieure, France), 大串隆之, 山村則男

第166回 2005年1月21日(金)14:00〜17:00

川北 篤(京都大学大学院人間・環境学研究科)

コミカンソウ科における絶対送粉共生系の起源

イチジク属およびユッカ属の花はそれらの子房に特異的に産卵する雌のイチジクコバチ、およびユッカガによってそれぞれ送粉されている。これらの幼虫は発達途中の胚珠を食べて成熟するが、種子の一部は食われず残るために両者は巧みな相互依存関係にある。このように植物がその送粉者に種子の一部を報酬として与える共生関係は「絶対送粉共生系」と呼ばれる。これらの絶対送粉共生系はその種数の多さや高い種特異性といった特徴のほか、能動的な送粉行動や特殊化した花形態といったさまざまな共進化の産物が見られることから、古くから生態学や進化学のモデル系として多くの研究がなされてきた。

近年、こうした共生系の新たな例がコミカンソウ科(広義のトウダイグサ科)カンコノキ属において発見された。アジア、オーストラリア熱帯を中心に約300種が知られるカンコノキ属は、それぞれが種特異的な種子寄生者であるEpicephala属のホソガによって送粉されている。ホソガは夜に花を訪れ、口吻を巧みに使って自ら送粉を行った後、めしべまたは子房壁に産卵する。ホソガの幼虫は発達途中の果実の一部のみを食害するため、カンコノキは種子を残すことができる。

カンコノキ属にはオオシマコバンノキ属、コミカンソウ属、ヒトツバハギ属などいくつかの近縁な属が存在するが、これらの送粉様式を調査したところ、Epicephala属との絶対送粉共生系が周辺属のいくつかの植物でも見られることがわかってきた。一方ほかのいくつかの植物では、送粉を行わない種子寄生的なEpicephala属ホソガが見つかった。植物、ホソガ双方における分子系統解析、および相対年代の推定の結果から、コミカンソウ科でみられる絶対送粉共生系はいくつかの系統で独立に複数回起源したらしいことがわかった。また送粉者であるホソガの系統では二次的に送粉行動を失うといった寄生性への進化が起こっていることが明らかとなった。これらの結果からコミカンソウ科Epicephala属において絶対送粉共生系の進化を促したと考えられる生態的要因について考察したい。

東樹宏和(京都大学理学研究科動物生態学研究室)

ツバキ‐シギゾウムシ相互作用系における軍拡競争の時空間動態

チャールズ・ダーウィンが長さ30cmのランの距から、それに対応した口吻をもつ蛾の存在を予測して以来、共進化が生み出す極端に発達した表現型は進化学者たちを魅了し続けてきた。ランナウェイ選択や軍拡競争と呼ばれるこの過程は、多くの理論研究の対象となってきたが、モデルから生み出される予測は野外で追うことの出来る時間スケールをはるかに超えているため、未だに実証面での知見の蓄積はほとんどないに等しい。そこで本研究では、理論の対象となる大進化スケールの形質進化パターンと実証研究の対象となる小進化機構を、相互作用の地理変異解析によって橋渡しする。材料には、ヤブツバキ(Camellia jponica)とその種特異的な種子食害昆虫であるツバキシギゾウムシ(Curculio camelliae)を用いる。この系においては、共進化が起こっていない集団と軍拡競争による方向性選択が検出される集団が観察され、共進化形質の発達段階を地理軸に沿って再現することができた。さらに、系統地理解析から、この軍拡競争は最終氷期以降急速に起こったことが示唆された。

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