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研究活動

2013

第252回 2013年12月20日(金)14:00〜17:00

韓 慶民(独立行政法人 森林総合研究所 北海道支所)

結実が樹体内貯蔵資源量に及ぼす影響
Reproduction affects resource storage in masting tree species

多くの資源量を必要とする種子生産は、栄養成長など他の生活史機能と資源を巡って競合する。これは"繁殖コスト"と呼ばれる。結実豊凶(マスティング現象)が起こる植物種では、豊作年には種子生産のために貯蔵資源が枯渇し、その再蓄積に一年以上がかかるため、マスティング現象が起こると理解されている。この仮説(資源収支モデル)は、炭素資源をベースに理論的に検証されたが、繁殖期には巨大なサイズに達する樹木では実験的に実証される例は極端に少ない。このセミナーでは、安定体同位体ラベリング実験より明らかとなった樹木の種子生産の炭素・窒素資源のソースについて紹介する。また、豊作後の炭素・窒素の樹体内における貯蔵量の変化を解明するために、ブナ成木の枝・幹・根における非構造性炭水化物と窒素濃度を5年間モニタリングしてきた。その結果を紹介する。更に、大気中の二酸化炭素濃度の上昇による繁殖と栄養成長への炭素資源の配分の変化について紹介する。

吉村謙一(独立行政法人 森林総合研究所 関西支所)

葉群光合成の時空間変動と樹木生長への寄与
Processes in carbon use and growth of trees: Temporal and spatial variation in photosynthetic rates

森林に生育する樹木の生長は樹種によって異なり、生長の樹種差は将来的な現存量の差に反映される。そのため、森林の現植生から後継植生への植生遷移を包括的に理解するには樹木生長の樹種差およびその生理的メカニズムを把握する必要がある。光合成で吸収した炭素量のうち呼吸によって放出した炭素量を差し引いた余剰分が樹木生長に用いられる。光合成・呼吸ともに環境要因によって制限されるため、樹木生長は光や水・温度といった環境変化によって大きく変動することが予想される。しかし、樹木現存量は複利的に増加し、その速度は年変動がみられるものの比較的安定していることが知られている。このような背景の上で、本セミナーでは@光合成・呼吸は環境要因に支配される中でどのようにして樹木生長が安定するか、A長期的に被る弱い環境ストレスもしくは短期的に被る強い環境ストレスが樹木生長にどのような影響を及ぼしうるか、B環境ストレスと樹木生長の関係には落葉樹と常緑樹でどのような違いがみられるかについて発表する。

参加レポート

第251回 2013年11月15日(金)14:00〜17:00

力石嘉人(独立行政法人海洋研究開発機構)

アミノ酸の窒素同位体比を用いた生物の栄養段階の解析:陸上環境を含めた生物生態系の解明に向けて
Food chain analysis by nitrogen isotopic composition of amino acids: Application to terrestrial environments

生物に含まれるアミノ酸には,食物連鎖に伴い15Nが強く濃縮するもの(例:グルタミン酸, Glu)とほとんど変化しないもの(例:フェニルアラニン, Phe)が存在する。すなわち,両者の同位体比を比較することで,その生物の栄養段階(TP:trophic position)を見積もることが可能となる(式1)。

TP = [(δ15NGlu- δ15NPhe+ β)/TDF] + 1      式1

(βは,水棲生態系で -3.4,陸上C3生態系で +8.4,陸上C4生態系で -0.4,TDFは+7.6‰) このアミノ酸の窒素同位体比を用いた手法は,捕食者のみの調査で生物の栄養段階を推定することが可能であり,bulk同位体比を用いた従来の推定法に比べて見積もり精度が極めて良い(水棲生態系で1σ=0.12,陸上C3生態系で1σ=0.17)。本セミナーでは,「アミノ酸の窒素同位体比を用いた生物の栄養段階の解析法」の原理を解説し,また,なぜ一次生産者によってβの値が異なるのか,TDFは全ての生物で一定値を示すのか,などをテーマに,これまでに我々の研究室で得られた結果など紹介しながら議論を行いたい。

赤松史一(京都大学生態学研究センター)

河畔域に生息するクモ類の餌資源利用から見る水域と陸域生態系のつながり
Linkages between aquatic and terrestrial ecosystems from the point of view of prey use by riparian spiders

水域と陸域の移行帯である河畔域では、水を媒介にして土砂、栄養塩など様々な物質、生物が水域と陸域間で往来しており、複雑な食物網を形成している。河畔域に生息しているジェネラリスト捕食者は、陸域由来の餌資源だけでなく、水域から羽化してくる水生昆虫など水域由来の餌資源も利用している。羽化した水生昆虫の陸域への流入量は季節変動し、大雨や渇水などによる河川流量変動に応じても大きく増減する。このような水域由来の餌資源流入は、河畔域に生息する捕食者にとって、どのような影響をもたらすのだろうか。本公演では、河川から供給される餌資源補償効果について、河畔域生態系のジェネラリスト捕食者であるクモ類を対象に個体から生態系レベルの観点から研究を行った内容を紹介する。

参加レポート

スペシャル 2013年10月4日(金)15:00〜16:30

宮崎祐子(岡山大学大学院環境生命科学研究科)

野外操作実験と遺伝子発現解析で探る樹木の開花・結実の年変動の至近要因
The proximate factor of inter-annual fluctuation of flowering intensity through field experiment and transcriptome analysis

多くの植物種では開花・結実量に年変動がみられ、その至近要因には外生要因である環境(気象)要因のほか、内生要因である個体内養分量が関与している可能性がこれまでの研究で示唆されているが、未だ解明には至っていない。本発表では発表者らがブナ科樹木を材料としてこれまでに取り組んできた1)自然生育条件下で開花の年変動とその要因について探り、2)野外実験により環境条件を操作して開花量の変化を調査し、3)同実験環境下で花芽形成から種子成熟までに起こる遺伝子発現変化を捉えることで年変動を引き起こす要因を明らかにする研究内容について紹介したい。

第250回 2013年10月18日(金)14:00〜17:00

粕谷英一(九州大学理学部)

AIC(赤池情報量規準)は正しいモデルを選ばない -生態学におけるデータ解析とモデル-
Does AIC choose the correct model? data analysis and models in ecology

生態学に限らず科学一般で、データから結論を引き出すには確率モデルに基づく統計的方法が使われるのが普通である。生態学でのデータの解析では、実態により近い複雑なモデルが使われるようになってきた。そこでは、モデルがどれだけデータをよく表しているのかはとくに重要な問題になる。最近、AIC最小のモデルを正しいモデルと見なしている研究例をよく見るが、それは妥当かどうかを検討した。AICは予測の最適化の目的で提案され、データを生成したモデルという意味での正しいモデルを選ぶことを目的としていない。予測の最適化と正しいモデルを選ぶことが同じかは、AICの提案後、時間をおかずに検討されており、一般には両者は異なる。両者のちがいを現実的かつある程度一般的な状況で説明し、その食い違いはデータの量が増えても(サンプル数無限大でも)解消せず比較的大きいことを示す。また、AICの差の絶対値に閾値を設けて、AICの他のモデルとの差の絶対値がその閾値を超えたときにAIC最小のモデルを正しいモデルとする、"修正版"についても検討する。最後に正しいモデルを選ぶ方法の可能性について述べる。

細 将貴(京都大学白眉センター)

右利きのヘビ仮説:追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化
Right-handed snake hypothesis: Coevolution of chiral asymmetry between snake predators and snail prey

ヒトの心臓、ヒラメの眼、フクロウの耳…。左右の非対称性は、実にさまざまな動物の体に見られる現象である。ところが、こうした顕著な例ですら、なぜ・どのように進化してきたのかはほとんどわかっていない。なかでもカタツムリには、あからさまに非対称な「巻き型」の謎に加えて、「巻き型の左右逆転」という進化の謎がある。種数のうえで多数派である右巻きのカタツムリから、幾度となく独立に進化してきた左巻きのカタツムリ。ところが、突然変異で生まれてきた左巻き個体は右巻き個体とうまく交尾することができないはずである。自然選択説が予測するのは左巻き突然変異個体のすみやかな排除だが、なぜかこの繁殖上の不利を乗り越えて、左巻きのカタツムリは進化してきたのだ。本セミナーでは、この謎を解く鍵を握っていた「右利きのヘビ」と、謎解きの過程で発見されたカタツムリのさまざまな対ヘビ防御機構、とくに自切に関する話題を提供する。

参加レポート

第249回 2013年9月20日(金)14:00〜17:00

奥山雄大(国立科学博物館植物研究部筑波実験植物園)

チャルメルソウ属の生態的種分化の謎に迫る -フィールドからゲノムまで-
Unveiling the mechanisms of ecological speciation in AsianMitella: From field ecology to genomics

植物の生態的種分化がどのような状況で引き起こされ、今日の生活史形質の多様性を生み出したかを理解する上で、進化生態学と遺伝学の両面から特定の生物群の自然史に迫る手法は極めて有用である。13種の日本固有種と1種の台湾固有種からなり、日本列島で顕著な種分化を遂げた特異な系統群であるチャルメルソウ属チャルメルソウ節(sectionAsimitellaria)は、このような研究アプローチに最適なモデルである。本発表ではまず、このチャルメルソウの仲間が送粉者の転換による種分化を繰り返しており、その直接の引き金が特定の花香成分の変化であること、またその原因遺伝子が少数であることを示す。さらに、同所的に生育し、繁殖に関わる形質に大きな違いが見られる近縁な2種、コチャルメルソウとミカワチャルメルソウの雑種F2世代を用いた遺伝学的解析から、これら種間の形質分化の遺伝基盤について得られつつある様々な知見を紹介する。最後にこれらの知見からフィールド生態学に立ち戻り、「種分化の瞬間」をいかにして合理的に復元するかについて展望を述べたい。

末次健司(京都大学大学院人間・環境学研究科)

従属栄養植物が宿主や送粉者、種子散布者と織り成す多様な相互作用
Diverse interactions between heterotrophic plants and their hosts, pollinators and seed dispersers

植物の最も大きな特徴の一つとして、光合成を行い、独立生活を営むことがあげられる。しかしながら、植物の中には、光合成能力を失い他の植物や菌類から糖を含むすべての養分を略奪するという特異な進化を遂げた従属栄養植物が存在する。これらの植物はその奇異な形態から人々の関心を集めてきたが、経済的に大きな被害をもたらす一部の寄生植物を除いては、その研究のほとんどが、宿主の報告にとどまっているのが現状である。 しかしながら、「従属栄養植物がその特異な生活史を全うするためにどのような進化を遂げたのか」を理解するためには、生活史全般において、どのような適応が見られるのかを知る必要がある。例えば、確実に受粉を達成することは、次世代に子孫を残すために必要である。しかしながら従属栄養植物の生育場所は、薄暗い林床であることが多く、ハナバチなどの訪花性昆虫のにぎわいとは無縁の世界である。そのような環境に生育する従属栄養植物は、薄暗い林床で受粉を達成しなければならない。実際に従属栄養植物の送粉様式を検討したところ、昆虫に受粉を頼らずに済む自動自家受粉を採用しているものや、通常主要な送粉者とはみなされないショウジョウバエなどの薄暗い環境に普遍的に存在する昆虫に送粉を託すものが多数発見された。 これまで「宿主との関連性」に注目が集中していた従属栄養植物であるが、その特異な性質を獲得、維持するために、それ以外の点でも数々の数奇な適応を遂げていることを、演者自身によって発見された特殊な受粉様式や種子散布様式などを例に挙げながら、説明したい。

参加レポート

スペシャル 2013年9月10日(火)14:00〜15:30

Richard P. Shefferson (CER, Kyoto University / Odum School of Ecology, University of Georgia)

Demography and evolution in herbaceous plants: complex life cycles, sprouting, ageing, and symbiosis

Herbaceous plants present a number of paradoxes to evolutionary biologists. First, they have complex life cycles that make predictions of evolution in response to natural selection in the environment difficult. Second, these life cycles often involve periods without sprouting. During these times of vegetative dormancy, they cannot photosynthesize, nor can they flower, and so enter a seemingly maladaptive state that is nonetheless fairly common across the plant kingdom. Third, they seem to escape senescence, yielding growth trends that suggest that they continually improve with age and that mortality rates continually decline with age. Finally, they often specialize on odd mycorrhizal fungi and at times even parasitize them, thus potentially limiting their distributions to the distributions of the fungi. Using eco-evolutionary theory, evolutionary demography, game theory, and phylogenetic analyses of a number of herbaceous perennial taxa, I show the adaptive contexts and potential solutions to these paradoxes, including the eco-evolutionary relationship between genetic variance in fitness components and long-term population trends, optimal sprouting rates when sprouting can be costly, senescence when physiological trends depend strongly on size, and fungal feedback onto plant fitness. I conclude by suggesting potential links between phylogenetic patterns in mycorrhizal specialization to microevolution using modified invasion analyses linked to microbial fitness using soil feedback functions.

第248回 2013年7月19日(金)14:00〜17:00

浜崎恒二(東京大学大気海洋研究所)

太平洋における微生物プランクトンの多様性・群集構造・機能
Diversity, community structure and function of planktonic microbes in the Pacific Ocean

「多様性と機能の解明」は微生物生態学の主要テーマの一つであり,群集を構成する微生物の種類と生物量によって,微生物が果たす生態学的機能が規定されることから,環境変化に対する生態系応答や物質循環変動を理解するためには,多様性,群集構造,機能を把握することが必要となる.環境中の微生物多様性と群集構造は,16S rRNA遺伝子のPCRアンプリコンシーケンスによって明らかにされてきた.海洋中深層での重要性が指摘されているアンモニア酸化古細菌や亜硝酸酸化細菌,酸素極小層で重要とされるANAMMOX細菌などは,rRNA遺伝子配列から識別できる機能群だが,出現頻度が数%以下であるため,従来のクローンライブラリー法やフィンガープリンティング法のリード数ではこれらを捉えることは難しい.しかし,超並列シーケンス技術による16S rRNA遺伝子の大量リード(ディープシーケンス)を行うことによって,こうした特定機能群の動態を把握することが可能となってきた.また,群集全体の機能を包括的に把握するには,メタゲノミクスによるアプローチも有効である.本発表では,太平洋低緯度海域における横断観測や西部北太平洋における時系列観測などを対象に,16S rRNA遺伝子ディープシーケンシングによる多様性と特定機能群の解析,定量PCRによる機能遺伝子の分布解析,メタゲノミクスによる機能ポテンシャル解析について紹介したい.

潮 雅之(京都大学生態学研究センター)

ツンドラの植生遷移系列に沿った土壌微生物群集の定性的・定量的解析
Quantitative and qualitative analysis of soil prokaryotic community along vegetation gradients in an arctic tundra ecosystem

膨大な量の炭素が蓄積されている高緯度域の土壌において、土壌微生物群集は土壌からの炭素放出を司っており、陸域炭素循環の主要な担い手である。今回のセミナーでは、スウェーデン北部のツンドラ生態系で見られる植生遷移系列で、陸域炭素循環の担い手である土壌微生物群集の組成とアバンダンスを複数の手法を用いて調べた研究を紹介する。まず、蛍光顕微鏡を用いて土壌微生物の全菌数を調べ、さらにCARD-FISH法によってドメイン・門レベルでの優占度を定量的に評価した。蛍光顕微鏡による分析は、ツンドラ土壌で真正細菌が60-70%、古細菌が30%程度の優占度を占めていることを示した。また、16S rRNA遺伝子を標的としたパイロシーケンスも行い、より詳細な群集組成を評価した。CARD-FISH法とパイロシーケンスによる分析結果を比較したところ、パイロシーケンス法では過小評価・過大評価された分類群がいくつか存在した。以上の結果をもとにして、ツンドラ土壌の微生物群集の全体像、高緯度地域の炭素循環過程、また、蛍光顕微鏡を用いた微生物分析とパイロシーケンス法の利点・不利点を議論したい。

参加レポート

スペシャル 7月18日(木)14:00〜15:30

Toby Kiers (Vrije Universiteit Amsterdam)

The Evolution of Cooperation in Microbial Mutualisms

Associating with microbes in the rhizosphere can have both costs and benefits for host plants. Because associations generally involve multiple microbial genotypes varying in mutualistic benefit, a potential tragedy of the commons can arise. How do plants maintain cooperation with the most beneficial rhizosphere microbes over the course of evolution? Specific mechanisms may be employed that reduce the fitness benefits to microbes from "cheating". In some rhizosphere mutualisms, symbionts cannot be "enslaved", and biological "markets" have evolved in which control is bidirectional. Microbial biological markets will be discussed, as well as the impact of global change on trade dynamics in microbial systems.

第247回 2013年6月21日(金)14:00〜17:00

内海俊介(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)

進化群集生態学のキモ:拡散進化のダイナミクス
Toward an evolutionary community ecology: dynamic interplay between diffuse selection and ecological community

21世紀に入り、群集生態学と進化生物学の統合を目指す研究アプローチがいくつも提案され関心を集めてきている。その中で重要な問いの一つは、「生物群集の特性や多種間の相互作用ネットワークが、群集を構成する生物の形質に対する選択圧としてどのように機能するか?」というものである。すなわち、拡散選択(diffuse selection)とそれへの応答(diffuse evolution)の実態を解明するという目標である。多様な種から構成される生物群集における進化を理解する、ということは決して新しいアイデアではないが、拡散選択は近年改めて定義された概念で日本国内でもまだあまり浸透していない。本講演ではまず、ヤナギを基盤とした昆虫群集の相互作用ネットワークにおける拡散選択の実態について迫る研究成果を紹介する。さらに、拡散選択によるハムシの形質の進化の影響がヤナギ上の昆虫群集へフィードバックすることによって生じる、群集と拡散進化のダイナミクスについて論ずる。最後に、大学研究林を活用した今後の研究展開についても紹介したい。

辻かおる(京都大学生態学研究センター)

花の防御の性差と花食者の適応
Sexual difference in flower defenses and florivore adaptation

約2割の被子植物では性の分化がみられる。このような植物では、様々な性差がみられ、植食者による被食害の程度にも性差がある。これは、植物の性差が植食者の適応度や選好性に影響を与えた結果と考えられる。 本研究では、雑居性雌雄異株植物ヒサカキの花防御の性差とそれに対する花食者の適応を明らかにした。まず、雄花は雌花より多く食害されていること、雄花と両性花を食害するが雌花は食害しない花蕾専食性ソトシロオビナミシャク(以下ナミシャク)がいることを示し、次に、雌花萼は雄花萼より化学防御物質を多く含むこと、ナミシャク幼虫は雌花萼を食べると死亡することを明らかにした。さらに、ナミシャクの雌成虫は幼虫に適した餌である雄花蕾に対する産卵選好性を持っていることも明らかにした。そこで、ヒサカキの分布しない地域にもナミシャクが分布することを利用し、産卵行動の地域間比較と分子系統地理解析を行い、適応的な産卵行動がヒサカキへの適応進化の結果であることを示した。

参加レポート

スペシャル 2013年6月14日(金)15:00〜17:00

Marc David Abrams (School of Forest Resources, The Pennsylvania State University)

Impacts of global climate change and land-use history on forests of the eastern United States

The impacts of global warming and land-use have been the major environmental topic of study in recent decades. As a result of fire suppression in the eastern U.S., shade-tolerant plants are replacing light demanding, fire-tolerant plants in a processed termed "mesophication". This has resulted in micro-environmental changes (cool, damp, and shaded conditions) which continually impede fire-adapted species. Plant communities are undergoing rapid, novel and undesirable compositional and structural changes. My dendrochronology (tree-ring) studies reveal accelerated tree growth that may be related to the stimulatory effects (warmer, wetter, elevated CO2) of global change over the last 50 - 100 years. Forest management to promote fire-adapted Quercus and Pinus regeneration and sustainability will be discussed.

参加レポート

第246回 2013年5月17日(金)14:00〜17:00

高梨琢磨((独)森林総合研究所)

昆虫における振動情報の機能解明と害虫防除への応用
Functional analyses on vibration signals in insects and application to pest control

昆虫において振動や音の感知は必須であり、これらの感覚は高度に発達している。とりわけ昆虫は固体を伝わる振動を、捕食者からの回避や配偶者の認識のために情報として用いる。この振動の感覚と機能の知見を害虫に応用することで、振動を用いて害虫を防除することが可能になる。演者のグループは、マツの害虫であるマツノマダラカミキリにおいて、1)1kHz未満の振動が驚愕反応やフリーズ反応(行動の停止)などの回避行動をひきおこすこと、2)肢の腿節内弦音器官が振動受容器であることを明らかにした。さらに、3)配偶行動や寄主植物選択においても振動が利用されていることを示した。以上より、振動によって様々な行動が制御可能であることから、振動を用いた害虫防除法を開発した。この予備的成果として、特定の振動をマツに与えると、マツノマダラカミキリの産卵は阻害されることを示した。現在、化学農薬に頼らない、振動を用いた害虫防除の実用化を目指して研究を進めている。

松浦健二(京都大学大学院農学研究科)

社会性昆虫の繁殖システムの進化
Evolution of reproductive systems in social insects

アリ・ハチ、シロアリなど真社会性昆虫のコロニーの血縁構造、延いてはメンバーにとっての包括適応度利益は、その繁殖システムに大きく依存する。近年、社会性昆虫の新たな繁殖システムの実態が次々と明らかになっており、繁殖システムの多様性をもたらす進化的要因について関心が高まっている。特に、複数のアリとシロアリにおいて、女王が産雌単為生殖で次の女王を生産していることが明らかになっており、次世代への遺伝貢献を巡る雌雄間の対立が、繁殖システムの進化に大きな影響を与えていることが示唆されている。アリの新女王の単為生殖生産とシロアリの単為生殖による女王継承(AQS)システムは、一見似ているように見えるが、その結末は大きく異なる。アリでは、女王側の利己的戦略として新女王が単為生殖で生産され、雄アリは次世代に遺伝子を残す術を失い、激しい性的対立を伴った進化的袋小路となる。このような種では、繁殖システムに地理的変異があることが知られており、元の有性生殖で女王生産をしている集団も見つかっている。一方、シロアリのAQSは創設女王の次世代への遺伝的寄与を維持するだけでなく、近親交配回避や末端融合型オートミクシスによる劣勢有害遺伝子の排除を通じて王や他のメンバーにとっての利益をもたらし、コロニーレベルでも有利に機能している。そして、一旦AQSが起源すると、地理的変異を残さず集団中に一気に広まっていることが分かってきた。また、AQSシステムのシロアリでは、単為生殖で生まれた子が、女王フェロモンによる抑制を回避して女王分化していることが分かっており、これには母系ゲノムのインプリンティングが関与している可能性が高い。シロアリでは、次世代への遺伝貢献を巡るゲノムレベルの対立が、より長期安定なコロニー存続を可能にする繁殖システムの進化をもたらしたという新仮説について議論する。

参加レポート

スペシャル 2013年4月24日(水)10:00〜12:00

Antonio Hernandez-Lopez (Visiting Research Scholar, Center for Ecological Research, Kyoto University)

Adaptive evolution: diversification, specialization and radiation of insects and bacteria

The study of both neutral and loci mediating the link between environmental conditions and adaptive traits, can help to understand the genetic basis of adaptation, and provide insights into the process of ecological speciation. Levels of genetic differentiation are highly variable across the genome, and habitat-based divergence in taxa that are diverging via adaptation to contrasting habitats is expected to be more rapid at loci involved in habitat adaptation. Furthermore, if selective pressure is strong enough during the process of population divergence with gene flow, neutral markers can hitch-hike selected loci and present high levels of differentiation. Other important evolutionary processes, such as geographic isolation and genetic drift , variable mutation rates and low levels of recombination, can also promote high levels of both population and genomic differentiation. I present results obtained for different organisms and at different evolutionary scales, focusing on co-evolution of hosts and parasites, and adaptation of infectious bacteria: the common thread in the evolution of such diverse organisms is ecological adaptation.

第245回 2013年4月19日(金)14:00〜17:00

長井 敏((独)水産総合研究センター 中央水産研究所 水産遺伝子解析センター)

メタゲノム解析手法を用いた沿岸プランクトンモニタリングの現状について
Application of metagenome technology to plankton monitoring

各県の水産試験場等が1970年代前半から,環境モニタリングを実施しており,動植物プランクトンのデータは蓄積されてきたが,優占種の情報がほとんどであり,レア種や微細な植物プランクトンの情報はほとんどない。2008年から本年にかけて相次いで商品化された次世代シーケンサーの登場により,生命科学とバイオ産業に大きな変革が起きている。次世代型と呼ばれるシーケンサーは,従来型シーケンサーの数十〜数百倍の性能を発揮する。シーケンス革命の到来により,メタゲノムから“ペタゲノム”という言葉が使われる時代になり,従来の形態情報を重視していたモニタリングのスタイルを,大量に得られるゲノム情報をフル活用した革新的なスタイルに変換していく必要がある。本研究では,ユニバーサルプライマーによるPCR増幅と次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析を行い,日本国内外の異なる海洋生態系に生息する動植物プランクトンの出現種の情報を網羅的に記録することで,これまでになく詳細なレベルでの生物多様性比較を目的している。今回は,ユニバーサルプライマーを用いたPCR,膨大な量のNGSデータの取り扱い,とりわけNGSエラーやキメラの除去,種同定などの技術的な部分と,実際に天然海水サンプルを用いた解析やモニタリングの実例について解説し,プランクトンメタゲノム解析技術の現状(長所・短所)について解説したい。

後藤慎介(大阪市立大学大学院理学研究科)

ナンキョクユスリカの活動リズムと概日時計:フィールドでの実験と実験室内での実験
Locomotor activity rhythm and circadian clock of the Antarctic midge Belgica antarctica

ナンキョクユスリカは南極大陸に生息する唯一の昆虫である.2年間の幼虫期間を経て,夏に蛹となり速やかに成虫へと羽化する.成虫期間は約10日間と非常に短い.温帯に生息する多くの昆虫は一日のどの時間帯に活動するかが決まっており,この活動の周期性は環境からの情報がない一定条件下でも継続する.このことから,内因性の時計である概日時計が活動の周期性を制御していると考えられる.光は概日時計を同調させる重要な環境要因である.一方,南極の夏は温帯の夏とは大きく異なり,明るい時間が非常に長く暗い時間が短い.このような環境のもとで,ナンキョクユスリカは活動においてどのような日周リズムを示すのか,そしてその活動リズムは概日時計によって制御されているのかどうかについて,フィールドおよび実験室内での行動観察,そして概日時計遺伝子の発現解析により検討した.

参加レポート

スペシャル 2013年4月11日(木)10:00〜

Nelson G. Hairston, Jr. (Department of Ecology & Evolutionary Biology, Cornell University)

Eco-Evolutionary Dynamics in Laboratory and Natural Populations

Over the past decade, it has become increasingly recognized that adaptive evolutionary change can be so fast that it may occur on the same time scale as ecological change. Since ecological processes drive natural selection, and evolving traits determine the strength of ecological interactions, evolution and ecology can be intimately linked in an eco-evolutionary dynamic that Tom Schoener recently called “The Newest Synthesis.” I will review studies from my collaboration with Steve Ellner and our research group that illustrate these processes. I will start with laboratory microcosm communities in which population dynamics are radically altered when at least one of the species evolves as its environment changes, and will describe the research directions in which we are continuing to exploring these processes (retrospective analysis of other studies; three-species food webs). I will then describe methods for quantifying the relative importance of ecological and evolutionary changes for the outcome of ecological processes, and will illustrate these methods with examples from both laboratory and natural populations.

第244回 2013年2月22日(金)14:00〜17:00

柏山祐一郎(JSTさきがけ研究者(立命館大学))

水圏微生物によるクロロフィルの解毒代謝
A detoxification catabolism of chlorophylls by aquatic protists

水圏環境には,珪藻など植物プランクトン(微細藻類)を捕食する,従属栄養性ないし混合栄養性のプロティスト(原生生物=単細胞性の真核生物)が食物網の基底部分において重要な役割を果たしている。光合成を行なう生物はクロロフィルを多量に含有するが,細胞死などにより精密な制御機構が破綻した状態では,クロロフィルは光により励起されて活性酸素を発生させる非常に危険な有機分子として振る舞う。これらを捕食するプロティストにとって,クロロフィルは本来,重大な毒素であるはずである(光毒性)。本講演では,最近発見されたプロティストによるクロロフィルの解毒代謝に関して紹介し,その代謝産物である光毒性のない色素「シクロエノール」の微生物生態学および地球化学における研究展望を紹介する。

木村成子(京都大学大学院農学研究科)

共進化によりもたらされるラン藻とファージの遺伝的多様性の創出と維持
Generation and maintenance of genetic diversity of cyanobacteria and phage throughout their co-evolution

ファージ(細菌に感染するウイルス)は水圏環境中に最も豊富に存在する。それらは、感染を通して物質循環に影響を及ぼすだけでなく、遺伝子伝播や 進化的軍拡競争(宿主の防御機構とファージの防御回避機構の共進化)によって、宿主の遺伝的多様性にも影響を及ぼすと考えられている。本セミナーでは、高 い遺伝的多様性を有するラン藻Microcystis aeruginosaとファージの感染系を例として、両者が共進化を繰り広げる中で、それぞれの多様性がどのようにして創出され、維持されてきたのかを紹介する。

参加レポート

第243回 2013年1月18日(金)14:00〜17:00

Atsushi Kawakita (Center for Ecological Research, Kyoto University)

Pollinator-mediated isolation, species coexistence and the origin of high species richness in Phyllantheae

Studies demonstrate that species richness is non-random across the tree of life. Variation in species richness is typically explained by differences in diversification rate, and traits that influence diversification rates are called key innovations. However, diversification is constrained by the amount of area that a lineage can occupy and thus slows down as the lineage approaches a "carrying capacity" set by their ecological properties. Thus, any attribute of the organism that influences its carrying capacity, either by expanding its geographical extent or generating more species per given area, will allow for higher species richness. Within the tribe Phyllantheae, lineages associated with specialized Epicephala moth pollinators are more species rich than those that are not. In this seminar, I examine the factors that cause such differences in species richness and argue that Epicephala pollination sets a higher carrying capacity for Phyllantheae plants over other pollination systems, therefore leading to higher species richness.

David Hembry (Center for Ecological Research, Kyoto University)

Coevolution, phylogenetic history, and network structure of the Glochidion-Epicephala mutualism on oceanic islands

Biologists have been fascinated by specialization since the time of Darwin. Many hypotheses have been proposed to explain which factors promote the evolution of specialization, but few studies have examined how patterns of specialization vary across space or time within a mutualism. In obligate, pollinating seed-predation mutualisms like those between figs and fig wasps, or leafflowers and leafflower moths, specialized insects pollinate the flowers of their host plants and oviposit into the flowers so their larvae may feed on the developing seeds. These interactions are marked by extremely high species-specificity. In this research, we examine the phylogenetic history of codiversification and patterns of specialization in the leafflower tree-leafflower moth (Phyllanthaceae: Glochidion; Lepidoptera: Gracillariidae: Epicephala) mutualism on continents and on young oceanic islands. Glochidion and Epicephala have co-diversified recently on young oceanic islands in Eastern Polynesia in the south Pacific. Phylogenetic analysis reveals that both Glochidion and Epicephala have colonized Eastern Polynesia recently, but the colonizations are not congruent; two Epicephala clades of differing age are associated with a single clade of Glochidion in the region and the two taxa have not cospeciated. We then examine specialization and network structure in this mutualism on volcanic islands in the Society archipelago in Eastern Polynesia. In Asia, species-specificity in this mutualism is extreme and often one-to-one, but in the Society Islands, specialization is clearly lower than on continents. Combining phylogenetic and network approaches reveals that the proximate cause for lower specialization on oceanic islands than on continents is the multiple colonizations of Eastern Polynesia.

Future research will examine the ultimate factors that determine network structure in this mutualism, as well as whether the patterns of specialization observed here are evolutionarily stable.

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