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研究活動

2017

第285回 2017年4月21日(金)14:00〜17:00

東樹宏和(京都大学生態学研究センター)

誰も知らない生物間相互作用を求めて
Exploring novel interactions in ecosystems

従来の群集生態学では、現実の自然の中から「植物群落」や「節足動物群集」といったサブセットを抜き出すことから研究が始まるのが常であった。しかし、この人為的なサブセットの中で見出される知見の蓄積だけでは、生態系レベルの動態を本質的に理解することはできないであろう。次世代シーケンシングによるDNAバーコーディングを始めとする技術が登場した現在、一人の生態学者がさまざまな生物群を研究対象とすることが可能になってきた。動物・植物・真菌・原生生物・細菌の多様性と自然史に関する知識を果敢に統合した先にこそ、まだ誰も思いつきもしない群集・生態系動態の鍵が隠されているのではないだろうか?本発表では、動物・植物・真菌・原生生物・細菌を対象に進めてきた未知相互作用の研究について、最新の知見と手法を紹介しながら語りたい。また、次世代シーケンシングやDNAバーコーディングを用いた研究の次に来るべき分野の動向についても議論したい。

宇野裕美(京都大学生態学研究センター)

複雑環境の中の食物網
Food webs in the heterogeneous world

自然環境は多様で空間的に複雑な構造を持つ。また、その環境は季節や一日の時間によって大きく変化する。そんな中、生物は各々の成長段階や環境変化に応じて、様々な景観の間を移動し利用している。自然界での生物間相互作用を理解するうえでは、このような環境の複雑性と生物の移動・フェノロジーを考慮することが必要不可欠である。私はこれまで、自然の中でも特に複雑な環境を有する河川―渓畔林生態系を対象として、その空間的な複雑さや環境の季節変化が生物多様性の維持に果たす役割や、生物間相互作用に与える影響について研究してきた。本セミナーでは、河川渓畔林食物網のなかで重要な役割を果たす水生昆虫が複雑で変化に富む河川環境をどのように利用し、さらにその動態が河川渓畔林食物網にいかに影響を及ぼしているかについて紹介する。

第284回 2017年2月24日(金)14:00〜17:00

光永 靖(近畿大学農学部)

持続的漁業を目指したテレメトリーによる琵琶湖魚類の行動解析
Telemetry study on native and alien fish in Lake Biwa for sustainable fishery

これまで琵琶湖の在来・外来魚類に超音波発信機を挿入して放流するテレメトリー調査を行ってきた。湖に設置した34台の自己記録式受信機,和船に搭載した1チャンネル受信機,モーターボートに搭載した4チャンネル受信機を用いて,行動を解析した。ビワマスは北湖全域で表層から底層まで広く利用していること,ニゴロブナは産卵期に特定の水温域を目指して南湖内を移動すること,オオクチバスは2月に大きく移動するため刺し網などの受動漁具での捕獲が有効であることなど,持続的な漁業に向けた行動解析結果を紹介する。

木村里子(京都大学フィールド科学教育研究センター)

音響観測で探るイルカの生態:アジアの超沿岸域に棲むスナメリを例として
Passive acoustic monitoring for dolphins and porpoises: a case of finless porpoise living in shallow waters in Asia

水棲生物の多くは、光や電磁波と比べて伝達減衰の少ない音を利用しています。中でも鯨類は、コミュニケーションや環境認知等に音を積極的に用いています。近年この特性を利用し、鯨類の発する音を受信して存在位置や行動を割り出す、受動的音響観察と呼ばれる手法が広く用いられるようになってきました。

私は、この手法をアジアの沿岸域各地で適用し、イルカ類の行動や生態を明らかにしようと研究をおこなっています。主な対象は、スナメリというアジアの沿岸域、河川域にのみ生息する小型のイルカです。大きな回遊をせず一生を沿岸域のみですごすため、継続的なモニタリングが最も必要となる海棲哺乳類種の一つです。しかし、本種は目視観察による発見が難しく、野生下における行動や生態があまり明らかになっていませんでした。

本発表では、発声行動、日周性、来遊パターン、分布の季節変化、個体群の分断、資源量など、スナメリの発する超音波を捉えることで見えてきた、彼らの生態について紹介させていただきたいと思います。

第283回 2017年1月20日(金)14:00〜17:00

村瀬雅俊(京都大学基礎物理学研究所)

未知への挑戦‐未来創成学の展望‐
Challenging to Unknown Situation: Perspectives on the basis of Advanced Future Studies

グローバル化によって、人類は政治・経済・情報・産業・医療・教育など多様なシステムの集中化と脱集中化を繰り返し、世界総体はあたかも巨大生命システムと化した。その結果、あるシステムの最適化・効率化が別のシステムの脆弱化を招き、システム全体が崩壊に至るという”相殺フィードバック”に、私たちは翻弄され続けている。安定な時代には有効であった、一度に一つの方法、固定されたものの見方を適用するという伝統的な縦割り的アプローチは、もはや通用しない。今こそ、斬新な視点に基づく、新たなアプローチが望まれている。本セミナーでは、既存科学の限界に挑むべく、未来からの視点を駆使する「未来創成学」の展望を、具体例を示しながらご紹介したい。

大串隆之(京都大学生態学研究センター)

生態進化ダイナミクス:「故き」を温ね「新しき」を知る
Eco-evolutionary dynamics: Studying the past to learn the new things

自然界における生物の存在様式は、個体・個体群・群集・生態系という生物学的階層によって特徴づけられる。このため、種々の生態現象を理解するには、各階層での現象を個別に扱うのではなく、生物階層間をつなぐ相互作用に基づく必要がある。しかし、20世紀の生態学は各生物学的階層に分かれて発展してきたため、進化と生態プロセスを統合するという発想が欠如していた。ようやく21世紀に入って、「生態進化ダイナミクス(Eco-evolutionary Dynamics)」の考え方が台頭し始め、進化と生態を結ぶ研究領域を拓く機運が急速に盛り上がっている。ここで忘れてはならないのは、生態進化ダイナミクスは今世紀になって新たに生まれた視点ではないということだ。進化と生態を結ぶという考え方は、今を去る半世紀前、1960年から70年代にかけて大きく花開いた個体群動態研究に見ることができる。野外において適応形質が個体群動態に果たす役割についての先駆的な試みとして、(5万匹の個体識別マーキング調査に基づく)植食性テントウムシの実証研究を振り返り、生態進化ダイナミクスの観点から再考したい。

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