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センター長からのあいさつ
中野伸一 センター概要トップへ
 

 生態学研究センター(以下、生態研)は、1991年にIGBP(国際地球圏生物圏共同研究計画)のBiosphere(生物圏)部門の研究を担当するために創設されました。第一期生態研(1991〜2000)は、「生態学の基礎研究の推進と生態学関連の国際共同研究の推進」を目的として活動しました。2001年からは第二期生態研として「生物多様性および生態系の機能解明と保全理論」を研究目標として掲げ、今日に至っています。2011年以降、第三期生態研としての位置付け・在り方が京都大学から求められておりますが、2013年4月現在、京都大学が進めている京大全体の部局再編と文部科学省が進めているミッション再定義の双方に関係するため、未だ議論のあるところです。しかし私は、長年にわたって生態研の創設に尽力された国内外の生態学研究者のコミュニティが創設当初に生態研に期待された役割は、時代は変わろうとも現前として存在し、これを果たすことが我々生態研に課せられた社会的に重要な任務であると考えています。

 私は、生態学は日本において未だ「Weak science」であると感じています。確かに、日本や世界では環境問題や「エコロジー」がある程度浸透し、環境負荷の少ない社会の実現は世界的潮流となりつつあります。しかし、そのような中でも、少なくとも日本において生態学が果たしている社会的役割は、我々が当然果たし得るレベルに未だ達していないのではないかと、私は考えています。上述したWeak scienceとはこのような意味です。この原因の一つは、我々生態学関係者が、様々な社会・立場の人々に対して、我々の研究や活動の社会的重要性を十分にアピールできていないからではないでしょうか。現代においては、いま研究者自身がどんなに魅力的だと感じている学問分野であっても、国民的・社会的なサポートがなければ、持続的な研究活動は保証されません。地球環境問題が国際的な重要課題の一つとなり、国民が生態学と生態学者に大きな期待を持つ現在、我々生態学者は、生態学以外の世界でも自らを売り込まねばなりません。このためには、我々は日本生態学会を含めたより大きな学問的コミュニティや学際的な研究活動、社会活動の中でもしっかりした仕事をおこなうことで生態学の存在感を出すべきと、私は考えています。私は、我々生態学および関連学問分野の研究者は、長期的な視点にたって、より結集して組織的に動き、我々自身の学問的な将来像とそれに基づいた日本の将来ビジョンを掲げていくことが大切だと思います。これらのビジョンに立った上で、学問的には国際舞台での活躍に耐えうる人材を輩出できるような研究・教育活動、社会的には生態学および関連学問分野の価値を高める活動により、国内的・国際的な信頼を得ることが重要と考えています。

 第二段落に戻りますが、生態研に課せられた社会的に重要な任務は、大きく3つあると考えています。一つ目は、全国の研究者のための共同利用・共同研究拠点としての役割です。生態研が有する施設等は、生態学を含む多くの学問分野の研究者により大変活発に利用されています。全国共同利用の時代から行われている公募型の研究集会/ワークショップ、平成22年度から行われている公募型の共同研究は、現在に至るまでいずれも好評で、これらには我々生態研の研究者の研究も重要なシーズとして機能しています。二つ目は、国際的な生物多様性の事務局(DIWPA)の運営です。今後10年の地球環境問題の国際研究をリードする新たな統合研究プログラム「Future Earth: research for global sustainability(FE)」が動き出しました。我が国では、文科省が中心となってFEに対応していますが、この中で生物多様性に関わる研究者コミュニティについては日本生態学会がメインのサポーターです。生態研は日本生態学会のバックアップにより設立された経緯を持っており、DIWPAを核としてFEにおける生物多様性に関わる課題に貢献すべきと、私は考えます。三つ目は、総合地球環境学研究所(以下、地球研)との連携です。生態研は、これまで地球研において5つの連携プロジェクトを立ち上げ、生態学と理工学・人文社会科学との連携に基づいた学際的研究を推進し、地球研の他大学・他機関からの研究者とともに、地球研の目指す「人間と自然系との相互作用環の理解に基づく地球環境問題の解決」に資する地球環境学の構築に貢献してきました。生態研と地球研との連携研究には、全国から多くの生態学と諸分野の研究者が参加することに加えて、生態学などの若手研究者がポスドクとして参加することで、生態学と他の学問分野との協同を促進し、生態学のすそ野を広げる新たな研究も生み出しています。また、地球研は、FEのアジアにおける窓口としても機能しようとしています。この点でも生態研は何らかの役割を担うべきでしょう。以上まとめますと、生態研に課せられた社会的に重要な任務とは、共同利用・共同研究拠点、DIWPA活動、地球研との連携の3つの活動を通じて、生態学を含めた多様な学問分野の研究者が集まる機会を提供し、各学問分野の発展および相互交流の促進と、関連分野の社会的活動に関する議論を活性化する役割を担うことと、私は考えます。

 生態研は、以上述べたような多くの研究者コミュニティを集める「財産」を有していることから、生態研が生態学および関連研究者コミュニティの発展を促進するための「触媒」として機能することは、大変重要であろうと思います。が、これらの活動は生態研単独で為し得るものではありません。我々生態研は、コミュニティの皆様に使っていただき、我々も皆様からご支援をいただき、これらの成果を通じてより高いレベルに皆で到達すべきものと思います。

 少なくともこれからの2年間、私がセンター長として取り組む生態研の主な任務は、以上述べさせていただいた内容であろうかと考えています。私は、生態研出身者で初めてセンター長を務める人間として、生態研に元々課せられていた重要なミッションを引き継ぎながらも、生態学および関連学問分野の新たな潮流を取り入れ、日本の生態学がより高いステージに昇るために仕事をしたいと考えています。私ども生態研は、これからも研究者コミュニティのために尽力させていただくことをお約束しますとともに、これからも生態研の活動に貴重なご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。