底生藻の採集とクロロフィルa量の測定
クロロフィルaは、植物が光合成に用いる光を吸収する色素である。この量を測定して底生藻の現存量の指標とする。底生藻は非常に微小なのでろ紙の上にろ過して集める。
1) 湖底の平石を拾い、6cm×6cmコドラート内の藻類をブラシで剥ぎ落とし、白いバットの上で剥がしたものを水で良く洗い流す。
2) 100mlポリびんに入れて実験室に持ち帰る。
3) ろ過器具である吸引びん、ろ過器、ハンドポンプを設置する。ろ過器に強熱処理した47mmGFフィルターをセットする。
4) 懸濁水量、濾水量を記録する。濾水量は濃度に応じて判断する(吸引しにくくなる直前に止める)。ろ過器上部から付着藻類懸濁水を入れ、ハンドポンプで吸引する。
5) 懸濁物を濾したフィルターは、キムワイプの上に置き水分を吸収させる。
6) フィルターをはさみで細かく(3〜4mm幅)裁断して三角フラスコに入れ、90
% アセトンを15 ml 注入する。
7) 三角フラスコの口をパラフィルムで包み、一晩冷暗条件(クーラーボックス)で放置する。
8) ロートに紙ろ紙(ADVANTEC,
No.5, 90mm)をセットし、三角フラスコのアセトンをろ過して(GFフィルターの繊維を除去するため)、試験管に移す。
9) ユネスコ法:分光光度計でアセトン抽出液の750,
663, 645, 630 nmにおける吸光度を測定する。この際、90%アセトンをコントロールとする。750 nmの吸光度は濁り成分なので、各測定値から差し引く。アセトン抽出液は測定したら、試験管に戻す。全Chla濃度を式1より計算。
10)ロレンツェン法:750, 665 nmの波長で吸光度を測定後、アセトン抽出液に1規定の塩酸2滴を添加し数分間置く。再度750,
665 nmの波長で吸光度を測定する。活性のあるChla濃度とフェオフィチンa濃度を式2&3より計算。
式1-3は試験管の中に入っているアセトン抽出液1 ml中に含まれるクロロフィルaおよびフェオフィチンa量を表す。
式-1: 全クロロフィルa(μg/ml) = 11.64×E663−2.16×E645+0.10×E630
式-2: 活性のあるクロロフィルa(μg/ml) = 26.7 (E665-E665a)
式-3: フェオフィチンa(μg/ml) = 26.7 (1.7×E665a−E665)
*1. E663, E645, E630は、663, 645, 630 nmの各吸光度から750 nmの吸光度を差し引いた値。つまり濁り成分を除いた吸光度のことである。
*2. E665は、上と同じく665 nmの吸光度から750 nmの吸光度を差し引いた値。E665aは、塩酸を加えた後に測定した吸光度から塩酸を加えた後の750 nmの吸光度を差し引いた値である。
*3.フェオフィチンaはクロロフィルaが分解した物質である。フェオフィチンが多いのは、藻類の活性が低い、すなわち死細胞・衰弱細胞が多いことを表す。
11) 底生藻類の剥離面積と懸濁水を濾過した割合から、底生藻類のクロロフィルa量を単位面積当たり(mg/m2)に換算する。
藻類現存量(mg・chl a/
m2) = 1/1000×chl a濃度×抽出量×(懸濁水量/濾水量)×(1/剥離面積)