「琵琶湖をモデルシステムとした沿岸食物網の時空間構造解析」

 

 琵琶湖は日本で最も大きな湖です。単にその面積が大きいというだけでなく、沿岸帯と沖帯という異なる構造をもった生態系から成り立っているのが特徴です。また、南北に細長い地形のため、南部には温帯性の生物相が、北部には冷温帯性の生物相が形成されます。その集水域に目を向けると、北西部は人口密度の低い急峻な山岳地帯、東部は水田地帯、南部は住宅街と異なる土地利用のパターンが見られます。その集水域から琵琶湖に流入する河川は500本以上にのぼります。それぞれの河川から琵琶湖に運ばれる物質の種類と量は、人間の土地利用の仕方の違いを反映して、大きく異なります。これら気候・地質・水質などの環境が様々な時空間スケールで変化することによって、潜在的には同一の生物群集プールを共有する琵琶湖の沿岸には場所ごとに異なる食物網が形成されます。この食物網の時空間動態を制御する要因と仕組みを理解するのが本研究の狙いです。食物網を定量的に解析するツールとして安定同位体分析を利用しています。

<安定同位体分析により描いた沿岸食物網構造の概念図>

左図は人間の影響が少なく、生産構造のバランスが取れた健全な生態系。右図は、河川から過剰な栄養塩が負荷されることによって、植物プランクトン生産が余剰になった状態、いわゆる「富栄養化」した生態系。

 

<共同研究者>

永田俊@東京大学

陀安一郎@京大生態研

小板橋忠俊@京大生態研

由水千景@京大生態研

武山智博@新潟大学

苅部甚一@京大生態研

酒井陽一郎@京大生態研

 

 

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