「琵琶湖のCOD増加にかかる難分解性有機物の発生機構の調査検討の取り組みについて」
早川和秀(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター)
琵琶湖の水質保全に多くの対策を施してきたにもかかわらず、有機物の環境基準項目のCODは上昇傾向にあり、減少傾向にあるBODとの乖離が進むなど、環境基準を達成する状況にないだけでなく、対策の糸口も見出せていない。そのため、水環境行政ではこれらの水質汚濁機構の解明が求められている。県ではこれまでに難分解性有機物について、有機汚濁発生源や排水等の分解実験、フミン物質の同定など各種調査により基礎データの収集を実施してきたが、難分解性有機物等の収支について把握できていない。そこで、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターでは、平成19年度より琵琶湖における難分解性有機物の分析法の検討とともに難分解性有機物の発生源や環境基準点等の状況の把握調査等を行ってきた。今回はその取り組みについて報告する。
取組みには、琵琶湖における難分解性有機物の定義の確立および分析法の検討、湖水、河川水、排水等での難分解性有機物の把握、湖内生産および分解にかかる難分解性有機物を考慮した有機汚濁メカニズムの解明に分けられる。前者2つの取組みからは、難分解性有機物が陸域からと湖内からの発生源があり、過去から難分解性有機物の負荷が減少していない可能性が示された。後者の取組みからは、粘質鞘をもつ植物プランクトンの増加が湖内の有機物増加に寄与していることが明らかとなった。