「Microcystis属の形態種組成と栄養塩環境の関係」
本間隆満(福井県立大学)
浮遊性藍藻類は淡水湖沼生態系を支える重要な一次生産者であるが、富栄養化した水界では大量発生によって著しい水質汚濁を引き起こすことが知られている。その上、浮遊性藍藻類の中には有毒物質を産生する種が多く存在していることから、藍藻ブルームの発生機構の究明は重大な課題とされている。本邦における代表的な藍藻ブルーム形成種であるMicrocystis属は、細胞サイズや群体中の細胞の配列の異なる多様な形態学種や藍藻毒素microcystinを産生能持つ有毒株と持たない無毒株が混在していることが知られている。これらのMicrocystis属の形態種組成や有毒株と無毒株の割合は同一の湖沼においても時空間的変動を示すことが報告されているが、それらを制御する環境要因については未だ不明瞭な点が多い。本発表では、諏訪湖における12年間の長期観測結果及び農業用温水溜池における1から3日間隔での観測結果を紹介し、Microcystis属の形態的種組成及びmicrocystin濃度と環境因子との関係について考察を行う。また、現在取り組んでいる異なる遺伝グループに属するMicrocystis分離株を用いた混合培養実験の結果についても紹介し、栄養塩濃度が遺伝グループの組成に及ぼす影響について議論したい。