「琵琶湖の水草標本の同位体比から富栄養化の変遷を再構築する試み−他の近過去解析の事例を紹介しながら−」
高津文人
琵琶湖の沖帯の生物および有機物の窒素同位体比は1960年代から1970年代にかけて3.5‰程度上昇し、人為起源窒素の流入の増大および湖内での脱窒活性の上昇を示唆するものとして注目されている。しかしながら、もっとも富栄養化の影響を受けやすい沿岸帯の同位体比の変動とそれに基づく窒素汚染の近過去復元の試みはほとんどなされていない。今回は、流入河川と沖帯表層水との混合モデルを用いて水草の同位体比の変動を解釈することで、琵琶湖の沿岸帯における近過去復元を試みた研究を紹介する。また、水草や藻類など一次生産者の同位体比を用いた人為負荷の解析に関する先行研究も紹介する