「病原生物と人間との相互作用」

 

 近年、新興感染症が頻繁に勃発するようになってきました。その多くは、本来、ヒトを宿主としない病原生物がヒトの体内に侵入することによって引き起こされたものです。このような病原生物は、元の宿主の体内では過剰な有害性を示しません。病原生物は、宿主の適応度を極端に下げることによって自身の増殖の場を失うため、宿主とは付かず離れずの微妙な関係を保ちながら進化してきたのです。新興感染症が発生する原因は、ヒトが不用意に自然界に踏み入り、野生生物と接触したことにほかなりません。一方、ヒトが自然界の生態系を改変することによって、野生生物同士にも新たな感染症の問題が生じるようになりました。本プロジェクトは、世界的に猛威を振るうコイ・ヘルペスウィルス(KHV)に着目し、水塊生態系の構造を改変する人間活動がKHVの感染パターンに与える影響を調べることを目的とします。また、野生生物の感染症の蔓延によって生物多様性の消失や生態系機能の劣化が起こると、ヒトの社会システムにどのようなフィードバックが働くのか理解することを通じて、病原生物との付き合い方、ヒトと野生生物の共存関係の在り方を探ることを究極的な目標に掲げています。

 

 

共同研究者

川端善一郎@総合地球環境学研究所

菱田達也@京大生態研センター

中野孝教@総合地球環境学研究所

内井喜美子@総合地球環境学研究所

 

 

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