柴田淳也 (技術補佐員)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


生物多様性を維持するためには,各生物が必要とする生息環境を守っていくことが重要です.動物の場合特に,成長・繁殖において必要とする環境が異なり生涯にわたり様々な生息地を移動し利用する種がいます.彼らの安定した生存を保障するためには,彼らが必要とするすべての環境が守られることはもちろん,それらの生息地間のネットワークが分断されることなく自由に行き来できる状態を維持することも重要となります.

近年,メダカやコイ・フナなど身近にいた「小魚」の減少が叫ばれ,昔から農業など人の営みとのかかわりの中はぐくまれてきた生物多様性の喪失に危機感が高まっています.そのような身近な存在であったはずの魚達が数を減らした原因として,農業を取り巻く環境の変化と共に,田んぼ−水路,水路−湖・河川のつながりが分断され魚の行き来が困難となっていることがひとつの可能性として言われています.

では,水田・湖・水路間のつながりが絶たれることが,魚の繁殖・成長にいったいどれほどの影響があり,個体群の絶滅リスクを上げてしまうのでしょうか?

これらの問いかけに対し,数値として科学的に示されたデータが乏しいのが現状です.そこで,本プロジェクトではこれらの問題に答えるために

 

1)生息地ネットワークの構成要素となる様々な環境の魚類の生存・繁殖における好適性を評価

2)移動の評価 - 安定同位体をマーカーとした魚類の生息地移動の評価技術の確立

3)過去100年近くある漁獲データと土地利用に関する統計データを利用して,生息地のネットワーク構造が個体群動態に及ぼす影響の数理モデルを構築し,個体群存続可能性分析を行う

以上3点を主な目的に,琵琶湖沿岸・内湖・水路・水田で調査を展開しています.