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研究 Research
現在進行中の研究
現在、私はマレーシアのボルネオ島サバ州キナバル国立公園を流れるLiwagu川で、
熱帯山地における河川食物網と陸上食物網のつながりに着目して研究しています。
@ 陸から河川への影響:熱帯山地林河川の食物網構造
温帯の河川では
河川食物網の栄養起源については古くから研究がなされています。
一般に 源流域では森林由来の他生性資源(落ち葉など)
下流域では河川由来の自生性資源(付着藻類など)
がそれぞれ河川の生物の餌として重要であるということが知られています。
(河川連続体仮説)
熱帯の河川では
最近の研究で、「どうも熱帯の河川では源流域でも河川由来の自生性資源の方が重要らしい」
ということがわかってきました。
原因はよくわかっていませんが、「河川の水温が高いために落ち葉は微生物に分解されてしまう」とか、
「熱帯の陸上植物は物理的にも化学的にも防御が卓越しているので水生昆虫が食べにくい」とか、
いろいろな理由が考えられています。
熱帯山地林河川では
私は、熱帯山地林の河川源流域で、河川の生物の餌としての森林由来の他生性資源と河川由来の自生性資源の
重要性について調べています。具体的には、そこに生息する生物の種類と数を調べ、さらにそれぞれの種類が何を
食べているのかを安定同位体分析という手法を用いて調べることで、全体としてどちらの資源が重要かということ
を調べています。
まだ、研究の途中ですが、だんだんと面白いことがわかってきました。
どうも、私の研究している標高の高い(1600m)源流域のサイトは、熱帯にあるのに、温帯とそっくりで、
「やっぱり森林由来の他生性資源が重要らしい」ということがこれまでの研究でわかってきました。
現在は、どういった要因がこれらの餌資源の違いに影響を及ぼすのかについて、近接した環境条件の異
なったサイトを比較することで調べています。
A 河川から陸への影響:川から羽化した水生昆虫の陸上への影響
生物は、自らの力で動くので、移動は重力方向だけとは限りません。
生物を介して海から川に影響が及んだり、川から森林に影響が及んだりします。
カゲロウやトビケラといった水生昆虫は、幼虫の間は川で育ち、成虫になると水面から出て
川周辺の陸地に生息の場を移します。川から出てきた水生昆虫は、陸上で鳥やコウモリやクモなど
様々な生物の資源となって森の生態系を支えているのです。
私は、川からの羽化量や羽化後の水生昆虫の分散などを調べることで、川で育った虫たちの、森の中での役割
について明らかにしようとしています。