水域生態学分野

 

私たちは、湖沼、河川、海洋といった様々な水域に生息する微生物群集から魚類にいたる多様な生物群集の生態や進化・多様性、および、生態系における生物地球化学的な循環に関する研究を行っています。水圏生態系は、植物や微生物によって作り出された有機物が、動物プランクトン、底生動物、魚類などの大型動物に利用され、再び微生物によって分解されるという循環によって成り立っています。つまり、微生物同士の相互作用である「微生物環」と大型動物による「生食連鎖」を両輪として駆動する物質循環システムと捉えることができます。人間活動によって、水環境や生物の生息環境が改変されると、生物群集の構造が変化します。群集構造の変化に伴って、この駆動システムがどのように変化するのか調べることは水圏の生物多様性と生態系機能の関係を理解する上で非常に重要です。また、水生生物の個体群変動機構や群集の相互作用網を明らかにするための実験研究も行っています。私たちは、水生生物と環境の相互作用を詳しく調べることで、水圏生態系の保全や、地球環境の理解に貢献することを目指しています。

当センターの前身である理学部附属大津京都帝国大学医科大学附属臨湖実験所(大正3年に創立)は、我が国における陸水学研究に先鞭をつけました。私たちはその学術的な伝統と知的財産を継承し、琵琶湖生態系の中・長期的な変動に関する研究を行っています。調査船「はす」を利用した生物試料の採集や環境計測モニタリングを実施し、琵琶湖の将来予測に資する、生態系変動の機構解明に挑戦しています。世界有数の古代湖である琵琶湖は、固有の生物相を有し、生物多様性が生み出され、維持される仕組みを解き明かすうえで格好のフィールドなのです。一方、集水域における人間活動の急激な増大は、琵琶湖の生態系に深刻な打撃を与え始めています。この緊急の課題に対応するために、私たちは、生物や栄養物質の安定同位体比を調べることで、集水域における人間活動が、琵琶湖に及ぼす影響を総合的に診断する研究にも取り組んでいます。

 

 

 

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