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腸内細菌

 典型的なジェネラリストである霊長類は、さまざまな食物を食べます。それぞれの食物は異なる分布、物理、栄養特性を持っており、それに対して、どのように霊長類はどのように柔軟に対応しているのでしょうか。わたしも含め、多くの霊長類生態学者は、遊動や活動時間配分など、食物を探索する過程に見られる行動面での適応を主に研究してきました。
 食物を口に入れて以降の、消化の過程で、着目しているのが腸内細菌の役割です。霊長類1個体は500-1000種程度の腸内細菌を持っていると考えられ、腸内細菌の遺伝子の総数は、宿主である霊長類のゲノムの遺伝子数の100倍にも達します。これらの遺伝子を、どのように霊長類が利用しているのかは、採食生態学の大きなフロンティアです。
 大学院生たちと協力しながら、食性の季節変化と腸内細菌叢の変化、試験管内発酵実験による腸内細菌の発酵能力の評価、日本、中国、タイ、マレーシア、モロッコ、ウガンダ、ガボンのさまざまな霊長類の腸内細菌と、宿主との共進化についての研究を進めています。


屋久島上部域と海岸部のニホンザルの腸内細菌の発酵能力

 食性が大きく異なる屋久島の上部域と海岸部で、新鮮なニホンザルの糞を採取し、ヒサカキの葉の粉末と混ぜ、試験管内で発酵させました。葉を多く食べている上部域の糞の方が、果実を多く食べている海岸部よりも発酵が多く行われることがわかりました。遺伝子解析の結果、上部域と海岸部で腸内細菌の種構成が分かれていること、海岸部では糖の貯蔵に関わる特定の遺伝子経路が多く含まれていました。これは、腸内細菌が、柔軟に変化する宿主の消化を助けるはたらきをしていることを示唆しています。この結果は、「Microbial Ecology」誌に発表しました。


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<文責: 半谷吾郎 (hanya.goro.5z<atmark>kyoto-u.ac.jp)>
<問い合わせ先:半谷吾郎 (hanya.goro.5z<atmark>kyoto-u.ac.jp)>
<最終改変日: 2020年5月26日>