春眠暁を覚えず 生態学研究センターの先生方の大変悲しい事故があって、あまり気分は晴れないのですが、春は僕の気分など関係なく訪れました。ここWoods Holeでもちらほらと花が咲き始めています。といってもまだ少し寒いのですが。
仕事以外では、3/31に、自動車免許を取りました。日本語で試験を受けたいと言ったところ、試験問題が見付からず、faxで取り寄せることになり、思わぬ時間がかかりました。しかもなかなか問題は難しくて、これは勉強しなければだめだなあと思いました。一応1週間ちゃんと勉強したので、合格しました。その日のうちに、悪名高い「路上試験予約電話」に電話しましたが、15分くらいでつながりました。回線が1回線しか無く、いつも話し中ということを聞いていたのですが、運が良かったようです。
路上試験は国際免許を持っているのでスポンサーを必要とせず、しかも受付で「日本で10年くらい運転している」といったために、hand signalが出来ることを確かめて、RMVの裏に行ってbackを10mほどして、3 point-turnをして、それで終わりでした。あっけないものです。
とりあえず、2ヶ月ほどで、一応の生活水準を整えることが出来たと思っています。これも皆様のおかげです。ありがとうございます。3月はとにかく眠くて、それは1日中英語の環境で緊張していること、著名な研究者がいっぱいいて緊張していること、分からないことばかりで緊張していること、とにかく自分が気がつかないうちに緊張していたからだと思います。それも3月が終わることには7時間睡眠まで減りました。
こちらに来て、本当にいろいろなことを考えさせられます。今は夏の仕事の計画を立てているのですが、「とにかく好きなことをやりなさい、サポートは出来るから」などといわれて、本当にびっくりしてしまいます。大変優れた研究者に囲まれて、今までの大変な仕事の実績があって、いろいろなことが分かっていて、お金もとりあえず知らないことにして研究のことを考えなさい、ということは、全く持って自分の技量を試されていることだと考え、この数週間、大変な思いをして計画を立てました(といっても残念ながら大したものではないのですが)。そんな状況ですから、立てた計画は全く壮大なもので、とても自分一人で出来るものではありません。実際のところ、どれだけの時間、どれだけのman-powerを割けるかは、大勢の人が一斉に研究するので、直前にならないと分からないのですが、とりあえず、自分のしなければならない仕事、将来のためにしておきたい仕事、興味があるけれど身になるかどうか分からない仕事、まったくchallengingな仕事、などhierarchyを付けて準備を始めるところです。
計画を立てるために、今までアラスカで行われてきた仕事を勉強しようと思ったのですが、余りの量に参ってしまいました。主要な論文をコピーするだけで1週間かかってしまいました。しかもよく読むと、今年発表される仕事のデーターは1995年のデーターだったり、1992年のデーターだったり、実は彼らでさえ、仕事をしたらすぐ論文になるなんて事はないのでした。しかも、それぞれの論文は、比較的小さな事を、非常にきちんとしたデーターで説明していて、決して大きな事を言おうとしていないことを知りました。そして、それら(小さい事柄を扱っていると言っても、超1流の雑誌に報告しているのですが)をまとめた上で、ぽんと、全く教科書のような論文を書くのです。
Gus (Shaver)に「Terry (Chapin)と1975年に初めてプロットを張ったときには、今のような姿を想像してはじめたのか?」と聞いたところ、「いや、ただ単に広くて繰り返しがとれると良いなあと思っただけだ」という答えでした。彼も神様ではないのだなとほっとしましたが。
4/3−4とHarvard 大学の演習林にてHarvard Experimental Forest Annual Meetingが開かれました。全く関係ないのですが、あの有名なHFだということで、参加させていただきました。2日間にわたって開かれたworkshopは、教授からポスドクまで、土壌微生物からGISを使った土地利用まで、幅広い研究が1カ所で有意義に行われていることを伺わせる、大変レベルの高いものでした。The Ecosystems Centerからは土壌中のリター、根っこを全部とって二酸化炭素放出を測定する研究、森林でのメタンの動態、そしてアメリカ全土の炭素収支の将来予想という研究テーマで発表が行われました。ここでも思ったのですが、非常に我慢強く研究を続けるものだなあと感心しました。たとえば、二酸化炭素放出の研究ですが、森林の中である区域は、全くリター(落葉落枝)が落ちないように、カバーをしてしまう区域、またある区域は、カバーをして得られたリターを添加する2倍区、そしてある区域は土をブルトーザーで全部堀とって、中にあるリターや根っこをすべて取り除いて、また埋め戻した区、というような実験設定で、10年間研究しています。大変興味深いのは、5年までの結果と6年から10年までの結果がまるで異なり、5年で研究を止めていたら、全く逆の結果になっていたことです。日本でも同じような研究は実はあるのですが、私はこのように長期間の研究結果は見たことがありませんし、私の知っていた結果は、彼らの5年までの結果でした。
文字ばかりで申し訳ないので、ページを換えます。
自分は歴史のある日本という国で過ごしてきたけれど、あまり歴史とか、時間がもたらすこと ということを重要視してこなかったけれど、アメリカの文化は、歴史が浅いのに、自国の歴史をとても大事にするし、自分の研究も長期間のスパンで考えるなあ
と思っているところです。