種内表現型多型のスケールアップ効果:湖沼生態系に与える影響の実験的検証

 

表現型多型(集団内に見られる形質値の不連続な分布)は原核生物から高等脊椎動物に至るあらゆる分類群に見られる普遍的生命現象です。種内の表現型多型は種分化や適応放散を生み出す進化の源泉であると同時に、環境変動に対して集団を維持する適応機構の一部ともなっています。従って、種内の表現型多型は生物多様性の維持・創出機構を考える際の必須要素と言えます。

 表現型多型の分子発現機構は一部のモデル生物で解明されているものの、野外において表現型多型の発現を支配する環境要因や多型を維持するマクロな仕組みについての理解はあまり進んでいません。また、被食防衛や摂餌形質の種内多型は被食者-捕食者間の相互作用を変化させることが知られていますが、種内多型の存在が生物群集全体に及ぼす影響を実証的に示した研究は限られています。ましてや、生態系機能・安定性に与える影響に着目した研究は皆無といってよいでしょう。現状では、単純化された生物群集を用いた室内実験の域を出ていません。しかし、はたして、単純な系において見られる表現型多型の効果はより複雑な系においても有効なのでしょうか?この「種内表現型多型のスケールアップ効果」を検証できれば、種内の生物多様性が生態系の持続可能性にとって重要であるという生物多様性科学の新たなパラダイムを拓く研究へと発展することが期待されます

本プロジェクトでは、琵琶湖をモデル湖沼として、当センターが所有する先端メソコスム実験システムに野外の生物群集を内包した中規模スケールの生態系を再現し、高次消費者である魚類の表現型多型を操作することによって、群集動態ひいては生態系機能・安定性に与える影響を実験的に検証することを目的としています。

共同研究者

吉田丈人@東京大学

小北智之@福井県立大学

近藤倫生@龍谷大学

永田俊@東京大学

陀安一郎@京大生態研

岸田治@京大生態研

酒井陽一郎@京大生態研

西村洋子@京大生態研

福森香代子@京大生態研

西松聖乃@京大生態研

中島哲郎@京大生態研

兎本博介@龍谷大学

柿岡諒@京大動物生態

 

 

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