京都大学 大串研究室

メンバー

生物間相互作用が植物の繁殖成功に与える影響
井田 崇 (機関研究員)

固着性の植物にとって、環境に応じて柔軟に資源分配を変えることは自身の繁殖成功に非常に重要な影響を与えます。資源有効性や生物間相互作用が変動に着目して、植物の繁殖生態を明らかにする研究を行っています。

(研究キーワード: 生態学、植物学、交配様式、ポリネーション、繁殖生態、資源分配)

オスとメスの存在が群集ネットワークに与える影響
岸 茂樹 (研究員)

オスとメスは同じ種でも行動が異なるため、資源利用様式が異なっていることが多い。このことはオスとメスが生物群集に異なる影響を与えることを予測させる。しかし、これまで群集生態学では種と種のつながりを対象にしてきた一方、性を考慮した研究はほとんどない。そこで、訪花性昆虫のオスとメスが訪花性昆虫群集や開花植物群集にどのような影響をあたえているのか研究を進めている。

(研究キーワード: 性、群集、訪花性昆虫)

花の性差が花と昆虫の相互作用に与える影響
辻 かおる (学振特別研究員)

雌雄異株植物には雌雄差があり、花の形質も例外ではない。花には、送粉者、花食者、捕食者など多くの昆虫が集まり、複雑な相互作用網を形成している。この相互作用において、花形質の雌雄差が昆虫にどのような影響を与え、ひいては、花の繁殖成功にどのような効果をもたらしているのかを明らかにするため、雑居性雌雄異植物ヒサカキと、その花に集まる昆虫に着目し、研究を進めている。

(研究キーワード: 間接相互作用、花の防御、花食者)

植食性昆虫の種間共存における、植物の食害誘導反応の意義
橋本 洸哉 (D3)

寄主植物を共有する植食性昆虫の種間共存のメカニズムを理解することは、生態学における大きな課題の一つです。近年になって、植食性昆虫間の相互作用を食害後の植物の形質変化(食害誘導反応)が媒介する事が明らかになってきました。これは、古典的な競争理論で考えられてきた、単に資源を取り合うことで起こる相互作用とは全く違うメカニズムです。食害誘導反応を考慮に入れると、資源を共有する植食性昆虫同士の競争的関係はこれまで考えられてきたよりも植物に強く影響されると予測されます。しかし、植物の食害誘導反応が植食性昆虫間の競争的関係に与える影響の検証は端緒についたばかりです。さらに、植食性昆虫間の競争的関係を媒介する植物の食害誘導反応は、植食性昆虫間の新たな共存メカニズムになる可能性があります。

私は一見共存が難しい条件でありながら現実に共存している2種のチョウ(ホソオチョウ・ジャコウアゲハ)を材料に、寄主植物(ウマノスズクサ)の再成長を介した両種間の相互作用を明らかにするとともに、食害誘導反応が両種間の競争的関係に与える影響を検証しようとしています。これらを明らかにする事で、両種の共存における寄主植物の食害誘導反応の意義を明らかにしたいと考えています。

(研究キーワード:再成長、種間競争、個体群生態学)

花を介した節足動物群集の相互作用の解明
池本 美都 (D2)

花と昆虫の相互作用は古くから多くの注目を集めてきました。従来の研究では送粉者との直接的な二者間の関係ばかりが取り上げられてきましたが、しかし実際のところ、花に関わる生物は送粉者だけではありません。花食者や盗蜜者、送粉者を狙う捕食者など異なる機能を持った生物も花には数多く訪れます。また、葉食者の食害によっても、花の形質は変化させられます。近年、これら送粉者以外の節足動物が直接的、間接的に送粉者の行動や植物繁殖に大きな影響を及ぼしていることが明らかになってきました。真に植物繁殖に関わる選択圧を理解するためには、これら送粉者以外の生物を含めた総合的な相互作用 の理解が必要です。私はセイタカアワダチソウを用いて、花を巡る節足動物群集の相互作用を明らかにし、さらにそれが植物にどう影響するのかを研究しています。

(研究キーワード:植食者、花食者、送粉者、捕食者)

外来植物セイタカアワダチソウと外来昆虫の侵入段階にともなう自然選択の影響
坂田 ゆず (D2)

外来生物の中で定着に成功した生物は、時間の経過に従って、新天地における個体群の成長や生物学的環境が変化により、局所的な進化が起こることが考えられます。時間経過を伴った外来生物の形質の変化を明らかにすることは侵入植物の長期間の侵略的形質や周囲の在来生物に与える影響を把握する上で重要であり、また短い時間スケールでの生物の進化を理解することにつながります。セイタカアワダチソウは、北アメリカ原産の多年草で、植物と昆虫の相互作用のモデルとして研究されており、世界各地で侵入植物として定着しています。本研究では、近年日本に渡ってきた、セイタカアワダチソウの天敵である アワダチソウグンバイとの相互作用に注目して研究をすすめています。

(研究キーワード:外来生物、生物間相互作用、進化生態学)

捕食者が植食者の行動変化を介して植物の食害誘導反応に及ぼす影響
平野 滋章 (D2)

捕食者の存在は植食者に行動や生活史、形態などの形質の変化を引き起こします。このような植食者の形質の変化は、植食者のエサである植物にもその影響が波及することが知られています。これまでの研究では植物の量に対する影響が注目され、捕食者の存在によって植食者の行動が変化し、植物の食害量が減少することが示されてきました。一方で、植物は植食者の食害に対し、防衛物質である二次代謝物質を生成したり、新たな側枝を伸展させるなどの誘導反応を起こし形質を変化させることが知られています。そのため捕食者は植食者の形質変化を介して、植物の量だけでなく、植物の形質にも間接的に影響を与えている可能性があると考えられます。

私はハナグモの存在がヤナギルリハムシの幼虫の行動を変化させることによってヤナギの食害誘導反応に及ぼす影響を研究しています。

(研究キーワード:捕食者、捕食回避行動、食害誘導反応、トップダウン効果)

植食者が植物の形質の変化を通して落葉変換者に与える影響
山村 駿太郎 (M2)

植物の質は植食者の摂食によって変化することがわかっている。その変化は時間的、空間的に離れた対象にまで影響する。その一つに、地下部の生態系がある。これまでに、植食者が植物を通して根食者、菌根菌、分解群集による分解速度に影響をあたえることについてはよく研究されているが、分解者の生物相へ与える影響についてはあまりわかっていない。この、分解者の生物相の中で、分解系の中で初期段階を担うため、その影響が大きいであろう落葉分解者に注目して研究する。

(キーワード:分解、地上部‐地下部相互作用、落葉分解者)

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