京都大学 生態学研究センター

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生態研セミナー

生態研では、8月と3月をのぞく毎月の第3金曜日(変更になることがあります)に、外部の方をお招きして生態研1階第2講義室において生態研セミナーを開催しています。そのほか、不定期に生態研セミナースペシャル、また独立した公開セミナーを開催することがあります。開催については、HPのイベント欄でお知らせします。

第294回 2018年2月16日(金)15:00~17:00

入江貴博(東京大学大気海洋研究所)

海産ベントスの種内変異と幼生分散に関する謎 
Intraspecific variation and larval dispersion of marine benthos

 海産ベントスでは、幼生期をもたない直達発生の種から、1年近くにわたる長期の浮遊幼生期間をもつような種まで、初期生活史に著しい多様性が見られる。浮遊幼生の野外での生態情報は非常に乏しく、とりわけ個体群間での遺伝的交流の実態を正確に理解することは、海産ベントスの研究における最大の未解決問題である。幼生の研究が難しい理由は、対象が非常に微小であるうえに、分布域は広大で、さらには全個体群をまたいだ総個体数は莫大であることにある。そのいっぽうで、昨今めざましい躍進を見せているDNAシーケンシングの高速化と並列計算機の高性能化は、これまで困難だった課題に挑む動機を我々に与えている。本講演では、私がこれまで研究を続けてきた潮間帯に棲むタカラガイを対象に、この数年間で進めた幼生に関する研究の途中経過と今後の展望を紹介したい。

スペシャル 2018年2月2日(金)15:30~17:00

白水 貴(三重大学大学院生物資源学研究科)

見えないきのこの多様性を探る—子実体×菌糸体×環境DNA 
Exploration for hidden mushroom diversity: fruiting body × mycelium × environmental DNA

 きのこやかびなどの真菌類は陸上生態系における共生者・寄生者として様々な動植物と相互作用ネットワークを構築するとともに、強力な分解者として物質循環の要ともなっている。一方、150万種とも1000万種ともいわれる多様性のほとんどが未知の状態にあり、この情報不足が分類や生態・進化に関する研究の障壁となっている。真菌類の多様性探索法は、古くは子実体(きのこ)採集にはじまり、培地による菌糸体の分離培養,DNAクローニングや次世代シーケンサーを用いた環境DNA解析と、技術の進歩とともに発展してきた。これらの方法にはそれぞれ一長一短があり、研究目的に合った方法を選択する必要がある。しかし、方法の比較や効率的な併用についてはほとんど検討されていない。本セミナーでは、子実体採集、分離培養(改変Dilution to Extinction法)、環境DNA解析(DNAクローニング、次世代シークエンサ—)の3つを併用したきのこ類の多様性探索について紹介する。

第293回 2018年1月19日(金)14:00~17:00

岩見真吾(九州大学大学院理学研究院&JSTさきがけ)

Ecological Epidemiology:ECOEPI(えこえぴ)研究の展開 
New era of ECOEPI in Japan

 2016年4月1日よりECOEPI Virtual Institute(http://ecoepi.jp/)というネットワークを組織して、昆虫・動物と人のインターフェイスにある感染症を対象とした研究領域である"Ecological Epidemiology"、略して「えこえぴ」に関する研究を国内外のチームと共同で進めています。生態研セミナーでは、私達が行っているPure Science(純粋科学)とSocial Implementation Sience(社会実装科学)の両側面からえこえぴに関する話題を提供したいと思います。具体的には、長崎大学熱帯医学研究所と共同研究で行っている南アフリカにおけるマラリア流行動態の解析及び予測研究について報告いたします。そして、このような専門的な研究の背景にある生態学・個体群動態の面白さを社会一般の方々、あるいは、中高生に伝えるために開発したウェブアプリケーションである"Virtual ECOSYSTEM"について紹介したいと思います。また、時間が許せば、このVirtual ECOSYSTEMを社会実装するために行っている活動についてもお話できればと思います。

中谷友樹(立命館大学文学部地理学教室&立命館大学歴史都市防災研究所)

感染症の過去・現在・未来をみる空間疫学 
Spatial epidemiology with perspectives on the past, present and future of infectious disease outbreaks in Japan

 健康リスクの地理的な差異やその環境要因との関係性といった空間的な疫学分析研究は、近年では空間疫学と総称されます。それは、疾病・健康指標のデータから地理的な健康リスク分布を効果的に見えるものとし、対策に有用な新たな知識を引き出します。地理情報システム(GIS)の発達、地理情報の充実、空間統計学モデルの高度化によって、空間疫学の可能性は飛躍的に高まり、現在ではさまざまな研究課題に用いられるようになりました。本セミナーでは、もう1つの演題にあわせて、感染症の空間疫学に焦点をあて、流行の近代期の記録(例えば腸チフス)から、近年のインフルエンザや梅毒等の流行、さらには温暖化に伴うデング熱流行リスクの拡大といった話題を通し、日本における感染症流行の過去・現在・未来を地理的に描き出す空間疫学研究を紹介します。そこで活用される空間モデル、地理的視覚化の方法、様々な地理情報の可能性や課題とともに、時間が許せば同様に空間分析研究を発展させてきた生態学分野での研究との関連性などを議論できればと思います。

第292回 2017年12月15日(金)14:00~17:00

北島 薫(京都大学大学院農学研究科)

湿潤熱帯林の日陰という極限の環境 
Tolerance of the ultimate shade in the understory of tropical moist forests

 耐陰性は、植生遷移と森林動態の理解において最も重要な概念といえよう。しかし、耐陰性の仕組み、すなわち、樹木種の間の耐陰性はどのような生理的生態的な形質の違いによってもたらされるかについては、相反する仮説が存在する。今日のセミナーでは、パナマの湿潤熱帯林で、Tachigali versicolor (Fabaceae)の実生の生存と成長を同一コホートで29年観察した結果、実験的にすでに0.8% の光しか届かない林床でさらに90%の被陰処理をした実験、また、60種以上において実生の機能形質と生存確率を比較した結果などを紹介する。これらの結果から、樹木の実生が、光合成の光補償点ギリギリの日陰で生き延びるためには、光合成収入と成長速度を最大化するような資源配分ではなく、多様な天敵に対する防御ができる丈夫な体を持つこと、さらに、負の成長を余儀なくされたのちに速やかに回復するために、ある程度の資源は貯蔵しておくことが重要ということが示される。

小林 真(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)

寒冷地に特有な撹乱と気候変動が北方植生へ及ぼす影響 
Effect of unique disturbance and climate change in cold biome on northern vegetation

 大量の炭素蓄積など重要な生態系能を担っている一方で、気温上昇による影響が大きい北方林や北極圏ツンドラ — その構造や機能の将来像を予測するには、寒冷地に特有な植生の維持機構を理解する必要がある。植生は撹乱により動的に維持されている。演者らは、北極圏ツンドラの土壌凍結、北方林における山火事などの自然撹乱が、植生を動的に維持するメカニズムを研究してきた。これまでの研究から、ツンドラでは強度の土壌凍結が発生してからの経過時間によって種多様性に違いが生み出されていること、北方林の山火事後に更新する植物の成長は、火事で生成される炭によって支えられていることなどが明らかになった。また、北方林で進行している雪解け時期の早まりが、植物へ及ぼす影響について、私たちの研究林で行っている大規模操作実験により明らかになってきたメカニズムについても紹介したい。

第291回 2017年11月17日(金)14:00~17:00

嶋田正和 (東京大学大学院総合文化研究科)

共存か消滅か?-2種の寄生蜂の推移行列から適応進化を見る!
Coexistence or extinction?: projection matrix analysis and adaptive evolution in two Anisopteromalus parasitic wasps

寄生蜂ゾウムシコガネコバチAnisopteromalus calandrae とその隠蔽種A. quinariusの推移行列は、両種で生活史パラメータが大きく異なり、elasticity(適応度λへの各行列要素の敏感さ)の比較解析の観点で興味深い。A. calandraeは産卵管でストローを作り宿主の体液を吸汁するので、餌(ハチミツ)の有無によらず多産で、寿命は約40日である。一方、A. quinariusは宿主を吸汁しないので、無給餌では少産で寿命も約4週間だが、給餌条件では生産数はA. calandraeに近づき、寿命も80日以上生きて、表現型可塑性が大きい。競争置換実験では、A. calandraeは種内競争が厳しく、A. quinariusに対しても強い負の種間干渉作用を示して、産卵管による殺卵で相手の生産力を大きく低下させた。A. quinariusが成虫期後半を長く生きてもelasticityはゼロに等しく、適応度に最も効くのは羽化までの生存率と羽化直後の生産力だった。よって、この実験条件ではA. quinariusは共存できないことになるが、実際にはこの2種は欧米で広く共存している。広域共存の鍵となるのは、異なる一次宿主の生息場所であることが分かった。

土畑重人(京都大学大学院農学研究科)

昆虫を用いた社会性進化の実験的検証
Experimental tests of social evolution in insects

演者は,社会性の適応進化をテーマに,理論研究と実証研究との橋渡しをすべく研究を行っている.セミナーでは昆虫を対象とした以下の2つのトピックについて話題提供する.1) 社会性昆虫の一種アミメアリの野外集団において,利他性を示さない「裏切り系統」が混在していることを突き止め,利他性を示すワーカー系統との間で生じる適応上の対立関係(公共財ジレンマ)の実証を行った.これは,多細胞生物において遺伝的基盤をもつ社会ジレンマの厳密な検証を行った初めての研究である.2) 個体間の社会的相互作用が形質進化に及ぼす影響を定量するため,貯穀害虫アズキゾウムシの室内飼育集団に血縁選択をかける実験を継続中である.アズキゾウムシでは複数の幼虫が豆粒内で資源競争関係にあり,競争形質の進化が競争相手との血縁度(きょうだいか否か)に応じて変化することを期待したものである.暫定的な結果として,高血縁度処理の集団で自己犠牲的に相手の適応度増加に貢献しているとみなせる形質が進化した.

第290回 2017年10月20日(金)14:00~17:00

佐々木(関本)結子 (東京工業大学生命理工学院)

植物細胞外脂質の進化と多様性 
Evolution and diversity of land plant extracellular lipid

 植物の陸上環境への適応は現在の陸上生物の繁栄に至る重要な転換点であったと考えらえる。このような適応過程を理解するために、私達は水陸両生の藻類であるKlebsormidium nitens (車軸藻植物門 クレブソルミディウム藻鋼、以下クレブソルミディウムと表記)に着目し、ドラフトゲノム配列を報告した(Hori et. al., Nat commun 2014)。
 比較ゲノム解析の結果、クレブソルミディウムのゲノム上には陸上植物型のクチクラワックス生合成遺伝子群の存在が示された。そこで、クレブソルミディウムのワックス成分の分析を行った結果、その主成分はトリアシルグリセロールとアルカンであり、細胞壁画分からは多量の脂肪酸が検出された。そのため、クレブソルミディウムは脂質と糖タンパク質より構成されるクチクラ様の疎水層を持つが、その組成は陸上植物のクチンとは異なる組成であると考えられる(Kondo et. al., Front Plant Sci. 2016)。
 陸上植物とクレブソルミディウムのクチクラワックス組成を比較した結果、陸上植物ではクチクラワックス組成が高度に多様化していることが明らかになった。本発表では陸上環境への適応におけるクチクラの役割について考察する。

田中和幸(タキイ種苗(株))

種苗会社での野菜育種の現状と新技術の応用例 
Traditional vegetable breeding in seed company and application of new breeding technology

 野菜の品種改良(育種)は、古くは各地域の環境に適したより良い個体(地方固定種)の選抜と維持から始まり、より多くの形質を一つの品種に持たせる交雑種(F1)の活用へと変遷してきました。その過程では常に人間の求める要求や経済性に則した選抜圧がかけられ、有用な遺伝子を集積した系統が選抜されてきました。偏った見方をすると、人為的な選抜圧による植物種の進化と見る事も出来ます。近年、多くの作物のゲノム情報の活用が可能となり、その改良の速度が加速してきています。また、今まで出来なかった改変も実現できるようになってきました。そのような育種技術の変遷の過渡期である今、伝統的な育種で為し得た部分と、それを超越した革新技術で進める品種改良についていくつかの具体例を示して、農作物の改良の方向性について話題提供をします。

第289回 2017年9月15日(金)14:00~17:00

Richard Karban (Visiting Professor, Center for Ecological Research, Kyoto University / Department of Entomology and Nematology, UC Davis)

What Can Plant Biologists Learn About Communication From Animals? 

Animal communication and behavior are far better understood than similar processes in plants. Plants lack central nervous systems but nonetheless face similar selection pressure to sense their environments and to respond appropriately. Human behaviorists differentiate between judgment and decision making. This distinction may also be useful for plants. Plants that do not respond appropriately may err in judgment or decision making.

Animals and plants differ in other important ways. Plants tend to be less mobile; instead of fleeing, they redistribute defenses or valuable resources. Plants tend to be made up of redundant, modular organs; this allows them to be better able at accomplishing multiple tasks simultaneously. Plants can generally tolerate attack and loss of tissues better than animals; this makes induced defenses a more profitable strategy for plants than for animals.

Junji Takabayashi (Center for Ecological Research, Kyoto University)

A novel enzyme secreted from spinnerets of feeding silkworms hampers green leaf volatile production in mulberry leaves 

In response to herbivory, plants emit volatile organic compounds, such as green leaf volatiles (GLVs) and volatiles terpenoids that attract carnivorous natural enemies of herbivores. The attraction was called induced indirect defense of plants against herbivores. Since the attraction of natural enemies is maladaptive to currently infesting herbivores, it is likely that herbivores have evolved to suppress the production of such volatiles to make themselves more inconspicuous to natural enemies. However, this possibility has not yet been tested. Here, we clarified this in a tritrophic system of mulberry plants, silkworms and parasitoid flies, Zenillia dorosa. Silkworms suppressed the GLV production in mulberry leaves by using a novel enzyme in the spinneret secretion, and its function was only for this suppression. The suppression made silkworms less conspicuous to the parasitoid flies. This study showed that herbivorous insects could manipulate induced-indirect defense in plants.

安定同位体生態学セミナー(公開)(京都大学生態学研究センター 第2講義室)2017年7月27日(木)14:00~15:30

Erik Hobbie (University of New Hampshire, http://www.eos.sr.unh.edu/Faculty/Hobbie)

Isotopic Explorations of Fungal Functioning in Ecosystems 

Fungi are ubiquitous in terrestrial ecosystems, with many either being key decomposers (saprotrophs) or forming symbioses with many of the dominant plants of temperate, boreal, and tundra ecosystems (ectomycorrhizal fungi). In this latter function, fungi receive carbon as sugars and in return supply nutrients to their host plants, with fungi differing greatly in their exploration strategies and enzymatic capabilities. Here, we explore fungal functioning using stable isotope (C and N) and radiocarbon measurements, including: (1) saprotrophic lawn fungi as integrators of competition between C3 and C4 grasses in lawns, (2) wood decay fungi partitioning resources among species based on the age of the wood being assimilated; (3) fungivorous small mammals preserving a signal of organic nitrogen uptake by fungi in their hair, and (4) linking exploration type in ectomycorrhizal fungi to enzymatic capabilities, carbon demand, and where fungi are active in the soil profile.

公開セミナー (京都大学生態学研究センター 第2講義室)2017年6月29日(木)14:00~

Masanori Fujimoto (University of Florida, Department of Microbiology & Cell Science)

Microbe mediated ecological processes in natural and engineered systems 

In this seminar, Dr. Fujimoto, a research assistant professor at the Soil and Water Sciences Department in the University of Florida, will present an overview of his previous research projects that explored fundamental ecological processes related to microbes in both natural and engineered systems. He will first discuss his dissertation research which dealt with microbial successions on embryos of endangered fish species Lake Sturgeon in the face of changes in environmental conditions due to anthropogenic activities. He will then turn to addressing his early postdoctoral work on the assessment of ballast water treatments for invasive species controls using a next generation sequencing (NGS) platform called “Ion Torrent”. He will also provide a brief overview about his postdoctoral research on bacteria-driven biogeochemical processes in Lake Michigan. The main focus of his presentation will be on his most recent work at Marquette University that includes key findings on microbial syntroph diversity and abundance in anaerobic digestion. He will conclude his talk with his current project regarding nutrient cycles in the Everglades ecosystems and future plans at the University of Florida including practical application of fundamental microbial mediated processes to solve both local and global issues. The various projects he will discuss all share a common thread of seeking to better understand the roles of microbes and the threats our activities pose to fundamental ecological processes.

Jack (John B.) Sculley (Berkeley Initiative in Global Change Biology, University of California, Berkeley and Research Centre for Palaeoclimatogy, Ritsumeikan University)

Forecasting basin-scale shifts in productivity in response to climate change using artificial stream channels, biological surveys, remote sensing and paleo-proxy indicators from marine and lacustrine sediment cores 

Evaluation of the decadal-scale importance of food-web processes as controls of river primary production is difficult due to the paucity of long-term studies and low frequency of depositional environments which would allow retrospective fossil analysis. In addition, the potential for riverine subsidies to nearshore marine environments during low nutrient (downwelling) conditions typical during winter and spring has only recently been explored. To address this issue we quantified siliceous remains of freshwater diatoms from a well-dated undisturbed sediment core in a nearshore marine environment to estimate how epiphytic production in the Eel River, N. California may have varied over 80 years, including 21 with direct monitoring of changes in diatoms on their macroalgae host Cladophora. In addition we quantified potential nutrient subsidies from the Eel River Basin to the Cape Mendocino nearshore ecosystem using chlorophyll a concentrations monitored by satellite from 1986-2001, in-stream channel experiments and 3D model studies. We report that the abundances of freshwater diatom frustules exported to Eel Canyon sediment from 1988-2001 were positively correlated with annual biomass of Cladophora surveyed over these years in upper portions of the Eel basin. Over the entire 25-year survey, peak algal biomass was higher in summers following bankfull, bed-scouring winter floods. These patterns are congruent with studies suggesting that bed mobilizing floods scour away overwintering grazers, releasing algae from spring and early summer grazing. During wet years, growing conditions for algae could also be enhanced by increased nutrient loading from the watershed, or more sustained summer base flows. Total annual rainfall and frustule densities in laminae over a longer 83 year record were weakly negatively correlated, however, suggesting that positive flood effects on annual algal production were primarily mediated by “top down” (consumer release) rather than “bottom up” (growth promoting) controls. In addition, we report significant, strong correlations between observed winter/spring marine chlorophyll a and annual biomass of Cladophora. The results of in-stream channel experiments and 3D NPZ model studies suggest that the Eel River Basin may subsidize marine plankton blooms during winter/spring downwelling conditions, with potential implications for temperate river-ocean interfaces worldwide.

第288回 2017年7月21日(金)14:00~17:00

後藤龍太郎(京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所)

住み込み共生する二枚貝の進化と適応 
Evolution and adaptation in commensal clams

陸上の生態系では、送粉共生、菌根共生、種子散布共生、アリによる防衛共生など、植物と動物の共生関係が溢れています。一方、海洋では、植物が関わる共生関係は少なく、その代わりに動物同士の共生関係が卓越しています。例えば、クマノミとイソギンチャク、ハゼとテッポウエビ、掃除魚と掃除される魚の共生関係はよく知られた例です。さらに、他の動物の体表や巣穴を住みかとして居候する様々な生物が織りなす「住み込み共生」の多様性の高さも海洋の生態系を特徴づけるものの一つです。

今回の発表では、ウロコガイ科という二枚貝を主な題材として、海洋の住み込み共生者の進化と適応について紹介する予定です。ウロコガイ科は最も種数が多い二枚貝の科で、多くの種がそれぞれ決まった動物の体表や巣穴内部で共生生活を営みます。共生生活と独立生活という対称的な生活様式の進化的変遷、動物門を越えた寄主転換による多様化、共生生活への形態的適応などのトピックを中心に、フィールド調査の様子も交えつつ、お話する予定です。

金尾太輔(京都大学大学院人間・環境学研究科)

好白蟻性ハネカクシの多様性と進化 
Biodiversity and evolution of termitophilous rove beetles

シロアリと特異的に関わる好白蟻性昆虫は、これまでに12目39科もの分類群より知られている。その中でも、甲虫目ハネカクシ科ヒゲブトハネカクシ亜科における好白蟻性種の種多様性は群を抜いて高い。好白蟻性ハネカクシには、腹部が肥大した寄主シロアリによく似る体形や、カブトガニのように扁平な体形など、非常に特殊な形態を呈する種が数多く含まれる。また、一般的に寄主シロアリと種特異的に関わる好白蟻性ハネカクシは、近縁種が同じシロアリを寄主として同所的に生息していることも多い。

演者はこれまでに、ヒゲブトハネカクシ亜科における好白蟻性種の更なる種多様性とその進化史の解明に向け、熱帯地域を中心とした野外調査を基盤に分類学的・系統学的研究を行ってきた。研究の進展により、これまでに未調査の地域より多数の未記載種が発見されたほか、同種とされているものでも地域ごとに分化し、複数の隠蔽種が含まれていることが明らかとなった。また、亜科内の幅広い分類群を対象とした分子系統解析により、亜科体系の混乱や好白蟻性種の複雑な進化史が明らかになりつつある。本公演ではこれらの成果に加え、好白蟻性ハネカクシの基礎生態の解明に向けた研究成果の一部も紹介する。

第287回 2017年6月16日(金)14:00~17:00

小林和也(京都大学フィールド科学教育研究センター)

身勝手な遺伝子が築く社会と群集 
Selfish genes establish complex community

かつてダーウィンによって自然選択説が提唱された際、立ちはだかった壁の一つにアリやハチなどの社会性昆虫がいた。ダーウィンの自然選択は、より多く子供を残すような性質が集団中に広まっていくと予測したが、アリやハチなどの社会性昆虫では、巣内のごく少数の個体(女王アリや女王バチ)だけが繁殖し、その他の多くの個体(働きアリや働きバチ)は子供を産まない。なぜこのような子供を産まないという性質がアリやハチの仲間に広くみられるのだろうか? この疑問に対し、1964年にW.D.ハミルトンは、働きアリは自分の親の繁殖を助け、同じ遺伝子を共有する兄弟姉妹を増やすことで、次世代に自分の遺伝子をより多く残していると考えた。即ち、自分の直接の子供の数ではなく、遺伝子の数を増やす性質が集団中に広まっていく。このアイデアは血縁選択説と呼ばれ、特に社会性のアリやハチが生産する子供の性比と血縁選択の理論予測が良く合致したことで、不妊の進化を説明する仮説として注目されてきた。しかし、近年、血縁選択説の普遍性に疑問が投げかけられている。その論拠の一つとして、アリやハチと同じく真社会のシロアリでは既存の性比理論による検証が不可能だったことが挙げられ、普遍性に疑義が呈されている。

本セミナーでは我々の研究グループが行った理論的拡張とその実証をご紹介したい。そこでは、血縁選択説をアリやハチ以外の生物でも検証する方法を確立し、実際にシロアリの社会に血縁選択が働いていること示した。この結果は、シロアリにおいても、働きアリは遺伝子の数を最大化するように振る舞っていることを示している。

また、現在私が進めている研究として、この「全ての個体は自らの遺伝子数を最大化する」という進化の原則が種の壁を越えてその地域の生物群集に与える影響を示し、遺伝子レベルの最適化が自然界に及ぼしている影響について議論したい。

庄田慎矢(奈良文化財研究所/ヨーク大学)

土器に残された脂質からせまる縄文海進期の日本海沿岸の食 
Organic residue analysis for the reconstructing of cuisine in the coastal area of the Japan Sea during the Holocene sea level rise

 私達が行っている先史時代の研究において、ヒトがどのような自然資源をどのように加工し食料として利用していたのかは、極めて重要な検討課題である。近年、イギリスを中心とした海外では、遺跡から頻繁に出土する土器から脂質を抽出し、その化学的特性を把握することにより、どのような飲食物が調理加工されたのかを復元しようとする研究が盛んに行われている。日本でも、演者らの研究により、福井県鳥浜貝塚の縄文草創期から前期(14k-5k BP)の土器が、水産物を主たる対象として用いられていたことが示されている。本発表では、朝鮮半島にも土器が登場する完新世海水面上昇期(8k-6k BP)の環日本海沿岸地域の複数の遺跡において、上述と同様の傾向が見られるのか、あるいはその傾向が鳥浜貝塚に特有のものであるのかを検討する。対象とするのは、福井県鳥浜貝塚、秋田県菖蒲崎貝塚、佐賀県東名貝塚、蔚山市細竹貝塚、蔚珍郡竹辺里遺跡の5遺跡から得られた土器胎土粉末試料143点、土器付着炭化物試料78点である。これらの試料について、GC-MSによる生物指標の同定やフィタン酸におけるSRRジアステレオマー比率の測定、GC-c-IRMSによる個別脂肪酸の安定炭素同位体比の測定を行った。分析の結果、全ての遺跡において、水生生物に特有の生物指標や、フィタン酸における高いSRRジアステレオマー比率、海産物に対応する値の個別脂質安定炭素同位体比が確認された。今回の分析対象とした遺跡においては、共通して水産物を強く指向した調理内容が復元され、この傾向が鳥浜貝塚だけに特殊なものではないことが明らかになった。日本海沿岸地域にみられたこうした共通性は、同じ時期にユーラシア大陸に暮らしていた人々のそれとは大きく異なっていることから、先史時代における資源利用や食文化における大きな地域的特色を指摘できる。

第286回 2017年5月19日(金)14:00~17:00

Karel simek (Biology Centre AS CR, Hydrobiological Institute)

Community dynamics of bacteria and bacterivorous flagellates modulates carbon flow to higher trophic levels in freshwater ecosystems 

Small protists, largely heterotrophic flagellates, are considered to be the major link connecting dissolved organic material, bacteria and the grazer food chain in aquatic ecosystems. We are now facing a paradox in contemporary microbial ecology: high throughput molecular techniques have provided detailed insights into bacterioplankton community composition, but this is in sharp contrast to our knowledge concerning the ultimate fate of particular bacterial groups. Ignorance of dynamics, both bottom-up and top-down induced, translates into the discovery of high proportions of particular lineages in freshwater bacterioplankton but this may not imply that these bacterial groups grow rapidly or play an important role in carbon flow to higher trophic levels.Selective grazing of flagellates on bacteria has been suggested to modulate bacterioplankton community composition. However, the flagellate predator-bacterial prey relationships are so flexible that changes in the prey community, vice versa, may induce extremely rapid changes in the flagellate predator community as well. We show that the rapid flagellate growth, as detected by their feeding on different bacteria, tightly corresponds to doubling times for rapidly growing bacterioplankton groups. Notably, different bacterioplankton species likely represent different food quality resources for flagellate communities, affecting their growth, community dynamics and carbon flow to higher trophic levels. However, our knowledge of these essential aspects of carbon dynamics in plankton environments is quite limited.In this seminar, I present our research on the flagellate predator-bacterial prey trophic interactions, efficiency of carbon transfer from relevant bacterioplankton groups to the predators, and some novel techniques allowing us to study these trophic interactions at a high taxonomic resolution. We propose a conceptual model explaining the strong linkages between rapid bacterial community shifts and succeeding flagellate predator community shifts, which optimize prey utilization rates and carbon flow from various bacteria to the microbial food chain.

Luisa I. Falcon Alvarez(Visiting Professor, Center for Ecological Research, Kyoto University / Professor, Universidad Nacional Autonoma de Mexico)

Biogeography and phylogeny of Synechococcus: Lake Biwa and Mexican lakes, home of sister groups 

Cyanobacteria have evolved to be one of the most diverse and ancient groups of bacteria on Earth. They contribute significantly to global primary production via photosynthesis and some in addition to the nitrogen cycle via nitrogen (N2) fixation. Cyanobacteria are common components of aquatic ecosystems, responsible for ~40% of global CO2 fixation. Genome scale analysis suggests that oxygenic photosynthesis evolved early in the cyanobacterial radiation. The capacity to use water as electron donor in oxygenic photosynthesis, with its consequent generation of free oxygen, most likely appeared by 2,700 million years ago (MYA). Picocyanobacteria are common in lakes and oceans, where Synechococcus are amongst the dominant genera. Synechococcales are a non-monophyletic diverse group comprising both unicellular and filamentous forms, all with parietal thylakoids. Although the ecological relevance of this group is widely acknowledged, questions regarding the phylo-genesis of Synechococcus remain unclear. So far we know that there are endemic Synechococcus, whereas other members of the genus relate to environmental parameters including salinity, and certain species are widely distributed, while others are constrained. Recent advances in the field have suggested that Synechococcus form clades with specificity to oceanic, epilimnetic saline and freshwater ecosystems. Interestingly, Lake Biwa Synechococcus isolates are closely related to strains from Lake Atexcac in central Mexico. Both lakes are freshwater, P-limited environments that sustain large populations and diversity of picocyanobacteria, including Synechococcus. The Biwa/Atexcac cluster is further associated to subalpine lake Synechococcus, as well as to high altitude Patagonian lakes. The vast genetic dispersal of certain Synechococcus strains makes them an excellent model to study both biogeographic patterns in microorganisms and adaptation mechanisms from closely related picocyanobacteria inhabiting a vast geographical and environmental range. I will discuss the proposed approach to work with Synechococcus from different ecogeographic regions as a model to help explain the phylogenetic relationships in the group, as well as ecological parameters related to s diversity. The study models are Synechococcus from Lake Biwa as well as other strains from Mexican lakes. We want to understand the life history behind similar Synechococcus strains retrieved from highly different environments. This study aims to unravel what are the contributing factors that explain co-occurrence of Synechococcus from distant environments and if there are other components of the bacterioplankton assemblage also shared between geographically distant sites.

第285回 2017年4月21日(金)14:00~17:00

東樹宏和(京都大学生態学研究センター)

誰も知らない生物間相互作用を求めて 
Exploring novel interactions in ecosystems

従来の群集生態学では、現実の自然の中から「植物群落」や「節足動物群集」といったサブセットを抜き出すことから研究が始まるのが常であった。しかし、この人為的なサブセットの中で見出される知見の蓄積だけでは、生態系レベルの動態を本質的に理解することはできないであろう。次世代シーケンシングによるDNAバーコーディングを始めとする技術が登場した現在、一人の生態学者がさまざまな生物群を研究対象とすることが可能になってきた。動物・植物・真菌・原生生物・細菌の多様性と自然史に関する知識を果敢に統合した先にこそ、まだ誰も思いつきもしない群集・生態系動態の鍵が隠されているのではないだろうか?本発表では、動物・植物・真菌・原生生物・細菌を対象に進めてきた未知相互作用の研究について、最新の知見と手法を紹介しながら語りたい。また、次世代シーケンシングやDNAバーコーディングを用いた研究の次に来るべき分野の動向についても議論したい。

宇野裕美(京都大学生態学研究センター)

複雑環境の中の食物網 
Food webs in the heterogeneous world

自然環境は多様で空間的に複雑な構造を持つ。また、その環境は季節や一日の時間によって大きく変化する。そんな中、生物は各々の成長段階や環境変化に応じて、様々な景観の間を移動し利用している。自然界での生物間相互作用を理解するうえでは、このような環境の複雑性と生物の移動・フェノロジーを考慮することが必要不可欠である。私はこれまで、自然の中でも特に複雑な環境を有する河川―渓畔林生態系を対象として、その空間的な複雑さや環境の季節変化が生物多様性の維持に果たす役割や、生物間相互作用に与える影響について研究してきた。本セミナーでは、河川渓畔林食物網のなかで重要な役割を果たす水生昆虫が複雑で変化に富む河川環境をどのように利用し、さらにその動態が河川渓畔林食物網にいかに影響を及ぼしているかについて紹介する。

第284回 2017年2月24日(金)14:00~17:00

光永 靖(近畿大学農学部)

持続的漁業を目指したテレメトリーによる琵琶湖魚類の行動解析 
Telemetry study on native and alien fish in Lake Biwa for sustainable fishery

これまで琵琶湖の在来・外来魚類に超音波発信機を挿入して放流するテレメトリー調査を行ってきた。湖に設置した34台の自己記録式受信機,和船に搭載した1チャンネル受信機,モーターボートに搭載した4チャンネル受信機を用いて,行動を解析した。ビワマスは北湖全域で表層から底層まで広く利用していること,ニゴロブナは産卵期に特定の水温域を目指して南湖内を移動すること,オオクチバスは2月に大きく移動するため刺し網などの受動漁具での捕獲が有効であることなど,持続的な漁業に向けた行動解析結果を紹介する。

木村里子(京都大学フィールド科学教育研究センター)

音響観測で探るイルカの生態:アジアの超沿岸域に棲むスナメリを例として 
Passive acoustic monitoring for dolphins and porpoises: a case of finless porpoise living in shallow waters in Asia

水棲生物の多くは、光や電磁波と比べて伝達減衰の少ない音を利用しています。中でも鯨類は、コミュニケーションや環境認知等に音を積極的に用いています。近年この特性を利用し、鯨類の発する音を受信して存在位置や行動を割り出す、受動的音響観察と呼ばれる手法が広く用いられるようになってきました。

私は、この手法をアジアの沿岸域各地で適用し、イルカ類の行動や生態を明らかにしようと研究をおこなっています。主な対象は、スナメリというアジアの沿岸域、河川域にのみ生息する小型のイルカです。大きな回遊をせず一生を沿岸域のみですごすため、継続的なモニタリングが最も必要となる海棲哺乳類種の一つです。しかし、本種は目視観察による発見が難しく、野生下における行動や生態があまり明らかになっていませんでした。

本発表では、発声行動、日周性、来遊パターン、分布の季節変化、個体群の分断、資源量など、スナメリの発する超音波を捉えることで見えてきた、彼らの生態について紹介させていただきたいと思います。

第283回 2017年1月20日(金)14:00~17:00

村瀬雅俊(京都大学基礎物理学研究所)

未知への挑戦‐未来創成学の展望‐ 
Challenging to Unknown Situation: Perspectives on the basis of Advanced Future Studies

グローバル化によって、人類は政治・経済・情報・産業・医療・教育など多様なシステムの集中化と脱集中化を繰り返し、世界総体はあたかも巨大生命システムと化した。その結果、あるシステムの最適化・効率化が別のシステムの脆弱化を招き、システム全体が崩壊に至るという”相殺フィードバック”に、私たちは翻弄され続けている。安定な時代には有効であった、一度に一つの方法、固定されたものの見方を適用するという伝統的な縦割り的アプローチは、もはや通用しない。今こそ、斬新な視点に基づく、新たなアプローチが望まれている。本セミナーでは、既存科学の限界に挑むべく、未来からの視点を駆使する「未来創成学」の展望を、具体例を示しながらご紹介したい。

大串隆之(京都大学生態学研究センター)

生態進化ダイナミクス:「故き」を温ね「新しき」を知る  
Eco-evolutionary dynamics: Studying the past to learn the new things

自然界における生物の存在様式は、個体・個体群・群集・生態系という生物学的階層によって特徴づけられる。このため、種々の生態現象を理解するには、各階層での現象を個別に扱うのではなく、生物階層間をつなぐ相互作用に基づく必要がある。しかし、20世紀の生態学は各生物学的階層に分かれて発展してきたため、進化と生態プロセスを統合するという発想が欠如していた。ようやく21世紀に入って、「生態進化ダイナミクス(Eco-evolutionary Dynamics)」の考え方が台頭し始め、進化と生態を結ぶ研究領域を拓く機運が急速に盛り上がっている。ここで忘れてはならないのは、生態進化ダイナミクスは今世紀になって新たに生まれた視点ではないということだ。進化と生態を結ぶという考え方は、今を去る半世紀前、1960年から70年代にかけて大きく花開いた個体群動態研究に見ることができる。野外において適応形質が個体群動態に果たす役割についての先駆的な試みとして、(5万匹の個体識別マーキング調査に基づく)植食性テントウムシの実証研究を振り返り、生態進化ダイナミクスの観点から再考したい。

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