Kei Koba's weblog in CER, Kyoto University ~ Are we on the right track ? ~

| July 23, 2005 / いろいろありました

ずっとreviewを書きつつ、うなっておりました。火曜日にはCOEのプレゼンテーションがあり、いきなり35億年前の事を考えたり、結構むちゃくちゃでしたね。山田さん、上野さん、豊田さん、大河内さん、吉田先生にいろいろヒントをいただいて、怪しいプレゼンを終えて、ああよかった。木曜金曜日は鈴木さんの酢酸サンプリング準備で桐生試験地に。いつものごとく森林水文の方々にはお世話になりました。伊藤さん、尾坂さん、特にいろいろとありがとう。今度はつくねを倍食べましょう。木曜日はホテルに1:30ごろつき、金曜日は朝から桐生へ。chamber baseの傾きを直そうと思ったのだが、現在2年近く埋まっているbaseを攪乱するのもいやなので、月曜にchamber baseの延長を業者に依頼しましょう。鈴木酢酸サンプリングはまぁまぁか。tention lysimeterのporosityを考えると、すでに荒く濾過はされているであろう溶液をさらに濾過すべきか、とにかく量をとるべきか、、、難しいところ。Dore et al. Marine Chemistry (1996) 53:173-185では、海水サンプルを果たして濾過すべきか、それともとにかく凍結すべきか、という議論がある。まぁ、こういったことは常にいろいろ問題なんだけど。。。硝酸のpreservationについてISOGEOCHEMにメイルを投げようか。そっちも問題だし。桐生から帰り、残りのGCをうって、勝山さんに2日連続でうまいコーヒーをもらって、京都にレンタカーを返し、551はもう飽きたから、KYK(うぅーん)にいってトンカツ食べて、新幹線に乗って帰ってきました(家には10:30には着いたから楽だった)。Brian FryのPacific Scienceを読みながらうんうん考え、そのまま深い眠りについていました。新幹線、このごろ至福の時。

僕が学生の頃は、確かに1年間会えないことが2度ほどあったとはいえ、徳地さんも大手さんも今のように忙しくはなかったのではないだろうか?(武田さんや和田さんは本当に忙しかったから、話を聞けるのは年に何分という感じだったかも)。調査地も、徳地さんといつも竜王とほとんど決まっていたし、大手さんとは桐生と決まっていたし、調査にいつもついてきてもらっていたわけでは全くないけれど、ま、とにかく、みんなもうちょっとのんびりしていた。お金もなかったし、プロジェクトも走ってはいたが、、という気がする。今の学生さんは、その点では大変なのではないかしら。e-mailがあるとはいえ、いろいろな情報が手に入りやすくなったとはいえ、いろいろと不安があるのかもしれない。

同様に、あのころの僕と指導してくれる先生方の関係と、今の僕の学生さん達と僕の関係を考えた時に、やっぱり僕は忙しすぎるのかもしれない。いろいろなプロジェクトに関わっているから、いろいろな調査地が全国各地に散らばっているから、いろいろなことがあるだろうけれど、講師という立場はいろいろな仕事を持っているし、プロジェクトにしても、僕個人が関わっているものとしては地球研くらいしかない(それすら学生さんが使う機材や旅費を提供してもらっているし)、結局学生さんが動きやすいように、研究活動しやすいように、道を舗装するために忙しくなっている、という言い訳(認識)を持っている。本当はもっともっと忙しくなれるけれど、逆にじっと我慢してG5に居ることが多い。そうは思えないだろうけどなぁ。

なぜ、G5にいるのか、、って、変な問いなのかもしれないけれど、時間がちょっとでも出来た時にG5に戻らず実験室で少しでも自分の仕事をしたい思いをぐっとこらえてG5に戻るのだが、それは、僕の中でどうしても死守したい事の一つだからなのですけどね。

以前、「正しいとは思えないけれど、自分の能力と、自分に課せられた仕事のロードを考えた時に、最大のアウトプットを出すためには、自分が相手に対していちいち「異なる自分」で教育研究をしていたら全く間に合わないのだ」というようなことを書いたのだが、ああ、やっぱりくやしいなぁ、そんなのいやだなぁ、とさらに方向修正して教育活動をやってきているつもりです(というのを鈴木大先生にしゃべったら、「それ書いてないじゃないですか」といわれ「書いておいた方が良いですよ」とたしなめられたので、、、)。もうちょっと大きな話から書いておこう。また来週は何も書けないしね。。

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僕は、今までやってきている、今やっている研究そのものが好きで好きで仕方ない、というスタンスではなく、いつもあるケーススタディとして研究をやってきているし、今後生き残れたとしても、その方針は変えないと思う。もっと根本的にやりたいことは、何度も書いているけれど、システムそのものだったり、考えること、そのものについてのことだと思っている。その根本的なことを煎じ詰めて考え抜くのは大変なことだし、だいたい生活をしてゆけないので、折り合いをつけられるところでやっているというのが(語弊があることを了承した上で)、本当のところである。だから一流にはなれないのかもしれないけれど、それはそれでかまわない。好きだけど、研究のために全てを犠牲にするなんて言うのは許容できない(今は??ははは)。

なぜ、考えること、そのものを考えたいのか、そんなことをつらつらと考えてきているのだが(循環論法か?)、子供じみた結論としては、自分の欲求する方向性を見定めたいこと、もっと簡単に言えば、自分の好みを正確に把握してゆきたいこと、そしてその好みの状態に近づけるように、きちんと努力できるようになりたいから、そのためだと考えている。自分が何者か、というようなおどろおどろしい言葉だとわけが分からなくなってしまうので、少しでも身近な言葉に落とし込むように心がけているのだが、、、。「リスクを管理するため」とか「少しでも他人にかける迷惑を減らすため」というような事も途中では出てくるのだけれど、もっと利己的な言葉にしないと嘘のような気がして、、、

子供に「なぜ算数を勉強しなければならないの?」と問われても、今では「自分の好みをはっきりさせる訓練なんだ」と、もっと大きな話で言えば、「考える、ということを訓練しているからなんだよ」と自分の中でしっかりとした背景を持って言うことが出来る。だからこそ、算数だけではだめだし、社会も国語も道徳だって必要だ。考える、ということには様々なやり方があるし、考えるための対象を見つけることすら様々な方法を使わないとままならないのだから。考えることの多様性、そしてその背景にあるのかもしれない、大文字のやりかた、について思いを馳せることが出来るようにならないといけないわけで。小さい頃は分からないかもしれない。だけれど、一生懸命やっていたら、考える事って難しいし、大変なことなんだって分かるようになるのではないかしら。逆に、いろいろな人がいろいろな対象で、頑張っている(=考えている)事のすばらしさも分かってくるんじゃないかと思う。努力の仕方=如何に考えるか、でもいいや。他人がどれだけ頑張って努力しているのか、その営みがわかるようになるのじゃないだろうか。

研究だって、僕にとっては、ある事柄を考える、ということのモデルケースでしかない。同位体を使おうが、帰納法を使おうが同じ事。そして、特に大学、大学院というところは、社会に出る直前の最後の訓練の場所となる可能性が高い。そして、最後の訓練として、それなりにターゲットを絞った難しい訓練(修士論文)をするチャンスが与えられている。難しい、という意味は、問題の所在から考えなければならないという意味である(問題があってそれを解く、という訓練は大学受験でもう良いだろう)。知らない事柄に飛び込んで、どれだけ自分の偏見から自分を解放して新しい思考の地平を見いだすか、その勇気を身につける良いチャンスだと思っている。内田樹氏のこの文章にはうんうん首がちぎれるほどだ。

例えば修士論文について、教員にとっては最終的なゴールが、何かしらあるのだが、まず、学生さんにとっては、それが見えないだろうと思う。そのゴールに向かう道は様々にあることも知るだろう。そして、どの道を選ぶか、どの道を造るか、というものが非常に重要であることにも気づくはずだ。そこは必死で考えないといけない。そういった勉強はあまりしてこなかったのだ。逆に言えば、今までの「勉強」は勉強でしかない。考えるための訓練であって、これから実際に考えないといけないわけだ。

いくつかの道が見えてきて、さて、どの道で行くべきか、という時の最終的な決定には「好み」が入ってくる。どの道を行くにせよリスクが伴う。将来は見えない。そのときに自分の決定を自己肯定するためには、好みの力を借りないといけない。自分はこれで行く、と決めた何かがあったのだから、これで頑張るのだ、そこがあやふやだと、結局成し遂げたことも、そしてもっと大事なことだが、失敗も、自分で十分受け止められないのだ。そんなことを何度繰り返したところで、成長できやしない。

オーダーメイド医療以上に必要なのは、オーダーメイド教育なんだろう。そして、大学院というのは、かなり高いレベルで(高いレベルというのは上述の通り)それを実現できる数少ない環境だと思う。しかし、考えて欲しいのは、オーダーメイドは、自らオーダーしなければならないということだ。医療は分からないけれど、たとえば服を作る時、もちろん「俺に任せとけ」というテーラーもあるだろう。しかしたいていは、お客と一緒にあれやこれやと考え、実際に着させてみて、mm単位でいろいろなところを変えてみることで、客の好みを顕現させるものだ。僕は教員として、この「好みを顕現させる」ということが最も大事なことの一つだと思っていて、言葉を換えれば、inspireするでもいいし、自分で考えさせる、というのもほとんど同義だ。好みが分かり始めたら、その後はその人その人ごとに違ったやり方で一緒に頑張ってゆく。

しかし、客が居なければどうしようもない。潜在的な客が居ても、ドアを開けてもらわないと、少なくともどんな服を作りたいのか決めてきてもらわないと、僕としてはどうしようもない。そして、僕自身、いろいろなアイデアがあって、自分で試してみたい服が山のようにデッサンされているのだ(しかも、自分でそういったものを発表していかないと、職がなくなるし)。だから、店を閉めて自分の工房で没頭したくなる気持ちも常にある。

しかし、それは出来るだけやらない。すずかけにいる時は必ず出来る限り開店して、お客が来るのをじっと待っている。お客が来て、二言三言ヒントになるようなことをぽつりと言い残してくれることを祈りながら。僕が、自分を絶対に曲げないところは、ここで無理な営業をしないことだ。理由は、日本の文化では、「先生」からの無理強いした営業では、客の本心を曲げることにつながってしまうから。最初から最後まで「自主的」な活動を貫かせないと、上記の通り、中途半端な成功と反省が積み重なってしまうだけだ。この点は、どんな学生さんに対しても、自分を変えることは考えていない。営業しないことで、時間は恐ろしいほどかかる。でも、その恐怖に打ち勝たないと、本当の意味での、僕のやりたい教育は出来ない。それを曲げてまで教員として生き残るための努力をしたいか、それとも初心を貫くか、の迷いもずっとあるけれど、武士は食わねど高楊枝、で後1年ちょっと過ごすつもり。そここそ中途半端ではその先の反省が薄まってしまうし。

と、ここら辺が書くことの出来るぎりぎりかしら。暑くなってきましたね。皆さまお体ご自愛ください。

 

| July 12, 2005 / キーワードは時間遅れ?

朝、体の芯が疲れている感じ。のろのろと大学に向かう。10時から専攻WG。難しい問題がめじろおし。昼飯も食べずにメイルに返信を重ねる。Oさんの論文をなんとか19日までにコメント。これはできがすこぶるいいので多分気分転換で出来る。問題は眞壁さんとの大手さんシンポ総説書き(もうちょっと頭を整理しないと訳の分からないものが出来上がりそう)、COEのプレゼン(実際何をどうやったらいいのか方針が経たない)、そういえば、21日から桐生に行くのだろうか?鈴木大先生?、8月の入試、9月のFISH+温泉サンプリング、陸水学会では眞壁さんが琵琶湖同位体祭りを発表してくれるはず。尾坂くんも桐生の硝酸を発表してくれるとのこと。硝酸データ、すでにあんなに測定終わってるなんて恐ろしい。僕の論文なんて窒素をちょぼちょぼ測っただけだったしなぁ、、すげーよ尾坂。あ、戸張くんと北大に行かないといけないのかな?、、、、、返信が緊急に必要だったメイルはおそらく20通くらいだったけど、サイボウズにまだ書き込んでいない予定を考えると、ちょっと、昨日まであの大平原にいた自分がうそのよう。あべっちのゼミ資料を読みながら早めに家路を急ぐ。

今日のお持ち帰り論文(といっても最新ではないんでしょうけど。2週間ぶりですしね)

  • 植物の資源競争におけるデトリタス:有機態で存在する窒素やリンの役割を古典的な(D. Tilmanのモデルは古典的なんだね、、)モデルに組み込むことで、新しい解釈が可能となっている。と言っても、まだ前半しか読めていないのですが、これはいい。すばらしい。Hedinはこんな論文も書けるのか!とおもったが、確かに有機態栄養分の大家ではあるものね、すでに。でも、EdのMELでも同じようなことが出来ていたのではなかろうか。
  • 硫黄のMIFはSO3の光分解?:これで分かる人は分かるでしょ?僕はあんまり分かっていないけど、、大気の酸化力とMIFといった関係は見直されることになるのかしら?セバスティアン、おしえてね!
  • 土壌C/NはN2O放出速度の良いパラメーターとなりうる:これは美しい。一つの点を出すのに大変な努力が見えるし、その結果だと考えれば感動もひとしおだったろうな。C/Nが25というのは硝化が起こり始める値だし、硝化だろうが脱窒だろうが、とにかくN2Oの発生するphaseに突入することには変わりない。この号のGCBには松尾さんに読んでもらいたい酸素と炭素話がでている。アラスカ話だけれど、こういった大きな話にもなるのかもしれない。pyrolysisのデータは。
  • labile DOCが現頭部の生態系にどう影響を与えるか: Table 1がすごい。こんなに炭素が使われて行くのか!
  • 硫酸還元プロセスとその同位体分別の基質濃度依存性:綺麗だ。同位体分別係数のミカエリス・メンテン的解釈は、当然と言えば当然なのだけれど、その大変な測定を考えると、本当に画期的かも。もう、同位体分別係数については、こういったレベル、または複数同位体の分別係数比、のレベルまでやらないといけないんだと思う。そう言い続けてきたのだけれど、実際こういったものを見てしまうと圧倒される。こういった関係式を使って行くことで、例えば古代地球の酸化還元状態ってもっときちんと表せるようになると思うんだけど。

以上です。今むりやりイカとマグロを食べました。DetritusにしてもSO3 photolysisにせよ、遅れて影響が出てくるのですね(定常状態では遅れには見えないけど)。 タイトルはそういうことです。ああ、海外遠征中に色々考えたことが頭の中で結晶化せずに分解されて行く、、、、。スーツケースを受け取ったら大洗濯大会です。

ああ!SchlesingerのBiogeochemistry(といっても、あの本ではなく、Treatise on Geochemistryというシリーズの第8巻)、これ、すごく良いです。Biomineralizationとか僕にはなじみのないものが入っていますが、素晴らしい。還元的な条件での物質循環、とか、代謝系の進化、とか、かなり良い感じです。僕の机にあるので、ぱらぱらめくってみて下さい。吉田研のみなさま・・・・って、吉田研の人はこれを果たして読んでいるんだろうか、、、、

ああ!(2回目)。GRLにGreg Michalskiの硝酸論文を見つけてしまった!Carol!おしえてくれよ!!32‰ってすごいな、anomaly、、、。 あらあら、こんな論文まで、、、