Kei Koba's weblog in CER, Kyoto University ~ Are we on the right track ? ~

| Feb. 22, 2007 : 皆さん、卒業おめでとうございます!

東工大のM2のB4のみんな、農工大のM2のB4の皆さん、お疲れ様でした。そしておめでとうございます。

NくんとMくんの発表は聞けませんでしたが、東工大をはなれて4ヶ月、その間に、みんなすごく成長したんだなぁ、としみじみ思いました。また、農工大の皆さんは、最後の最後まで、本当によく頑張りました。お見事です。

毎年毎年、この時期は、色々考えさせられる時期でもあります。まぁ、卒業して行くみんなのことを考えると、ちょっと汚染値?、おセンチになりますね。ちょっと、やっぱり、さみしいなぁ。

2月は、教員として、最もしんどく、最もうれしい時期です。みんなの頑張りが形になりながら、崩されて、それでもまた形をとろうとする、、、その議論の積み重ねを通じて、みんなは、自分の頑張りを自分で身にしみて分かって行くはずです。本当の、人としての成長というものは、過去の自分の頑張りをしっかりと理解することなのかもしれません。

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この数週間というもの、学生の皆さんは、とにかく必死で、自分がやってきたこと、自分が言いたいこと、そして自分が言えないことを、どう扱って良いのか、とにかく必死だったと思います。今まであやふやだったことが、いざ文章にしたり、図にしたり、表にしたり、プレゼンテーションにしたりすることで、目の前になまなましく映し出される、逃げ場のないものになってしまい、その化け物にとにかく様々な手を尽くして、対決しようとしてきたのだと思います。

結局、毎年、いや、毎日のように同じことを言っているのですが、そして、ああ、結局、D2のときの助手の面接から、たとえば京大で飲んだくれていた時も、東工大でAっちに話していた時も、そして昨晩も、全く同じことばかり言っているのです。そして、昨日来た新聞の取材にも、全く同じことを答えていました。

自分の意見をぎりぎりまで推敲して、その推敲に自信を持つこと、そしてその自信をも推敲するがために、批判を甘んじて受け入れること、そのプロセスがどれだけしんどく、どれだけ自分の考えを精錬させて行くものか、そういう大変な営みを行うためには、その営みを行うだけの勇気を与えてくれるような、そこまでの自分の努力が必要なのでしょう。だからこそ、修士論文には2年という膨大な時間が必要なのだとも思います。自分のやってきた営みから逃げることが出来ない、そんな過去の自分への責任感は、これまでなかなか感じ取ることが出来なかった経験だと思うのです。

大学という場所は、始めて、答えのない、いや、問題すら見付けることの難しい「現状」という世界の中で、自分で問題を定義し、その解決を図る場所であり、それよりもなによりも、その解決がことごとく上手く行かない、99%は上手く行かない、そんな場所であると思っています。大学に入るまでの「勉強」においては、解くべき問題は色々用意されていたし、答えがちゃんとあって、合っている、合っていない、ということが判定出来たのですが、たとえば、卒業論文は違います。また、自分の問題定義の正しさを示さなければならない、その問題自体が本当に問題なのか?また車輪を発明しているのではないのか?そんな思考は、これまでの勉強では余り行ってこなかったものだと思います。そして、さらに、答えがない。答えがないけれど、向かうべき方向に進んでいるのかどうかを議論し証明する必要がある、そんなまどろっこしい相手に対峙することも、ほとんどなかったと思います。

だから、間違ったらいいのです。自分が言いたいことのほんの、ほんの一部しか言えないと言う事実に愕然とするべきなのです。そして、そんな中でも、ほんの少しだけでも、きちんと言える、きちんと人に理解してもらえるポイントがあり、それがどれだけ科学の進歩に貢献出来る可能性があるのかをしっかりと表現出来る、その事に心を配ることが出来ればそれで良いのです。

同位体比が測れたって、微量元素が測れたって、多くの人にとっては、その後の仕事において、ほとんどメリットはないでしょう。しかし、しかしです、問題を発見し、捉え直し、解決へのアプローチを探し、自ら実践すること、きちんと疑うこと、自分の出した結果を真摯に受け止め、改善を常に模索し、他の人との意見交換を通じて、自分の論理展開の客観性を常に磨き、自分の考えをきちんと他人に伝えること、そういった、研究の一連の流れというものは、これからの人生でも当たり前のように行って行かなければならないことです。昔、Aっちが、自らこんなようなことを言ってくれたあの瞬間は、教員としての、何か大事な瞬間だったと思います。

21世紀は、不確実性の中でどう新しい価値観を想像して行くかという時代だと思います。分かることなど、予測できることなど、ほんの少しであることは既に分かっています。だからといって、我々は手をこまねいていてはいけないのです。未来の自分たちに責任を持てるように、しっかり考えた上での行動をすることが出来る人が求められていますし、そういう人を大学は輩出しなければなりません。研究は、その、ほんのさわりを、教えてくれる、とても大事なプロセスなのです。社会のニーズに対してだけではなく、もっと利己的なところも考えていいのですよ、みなさん。自分の成長のために、研究してください。自分のために頑張ってください。

しっかり考えて、しっかり反省すること。そんな簡単な言葉の中には、無限の可能性と、無限の怖さが潜んでいます。

社会人になって、悩んだ時に、自分の卒業論文や修士論文を見て、ああ、今必要なことはここにあるじゃないか、と思ってくれたら最高なのですが。

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D研のお二人が飲み会に来てくれたのは、むちゃくちゃうれしかったです。外部の人がどう見るのか、というのを聞きたいというのは、まったくもってすごく良い立場だと思います。そういう態度は見習わなきゃいけないと素直に思いました。

発表のなかで、自分のやっていることの世界的な研究の流れの中での位置づけが弱いのが気になります。そんな大げさなことではなく、具体的には、研究のreviewが足りないのです - 世界で何が今問題になっているのか、その問題にみんなどんなアプローチをしていて、どんな結果が出ているのか、その上で、何が問題なのか - 。だから、問題提起の際に、その問題の重要性が伝わってこない、だからこそ、localな問題なのかと、ad hocな問題を対象としているのではないかと、何となく思ってしまうのが気になりました。

とはいえ、自分の修士論文発表は、全く記憶にないので、ただえらそうなことをいっているだけかもしれませんね。。。

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Yさんの誕生日をお祝いするケーキ、おいしかったです!誕生日をケーキで、歌まで歌って貰ってお祝いしてもらえる先生って、僕は大学で始めて見ました。Yさんのキャラクターとはいえ、溺愛されてますね、先生。

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さて、今まで、何かの組織に属した時には、何かしらの良い方向に何かを動かして、5年で出て行こう、と思ってやってきましたが、農工大ではどんなことを考えたらいいのでしょうか。ボランチとして、攻撃的に行くのか、守備的に行くのか、あるいは局面で変えるのか、、、あるいは、サッカーをラグビーに変えてしまうとか?!

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19日:ヒュウマの姉のようにSSKくんとFくんの発表を聞き、時間が押していたので、まさに飛んで帰り、打ち合わせを終え、PreconとN2O gasの納入があり、その後発表練習会。結構ぐったりしますね。東工大と農工大の間、長いのです。

20日:発表練習は続きます。その間に書類と格闘したのですが破れました。負けた。。。

21日:Y研修論発表でした。気がつけば、他の研究室の発表に質問している自分がいます。内容はとてもおもしろい。のですが、色々疑問もあります。しかし、本当に様々な点で、一緒に研究をやれる気がします。専攻をかき回すには絶好のポジションですよね、今の僕は。それが上手く活性化につながるようにするには、どんな仕組みが可能なのだろう、そんなことを考えながら発表を聞いていました。15時に取材が来ました。取り上げられないようなきわどいコメントばかりお伝えしてみたり。僕は、やっぱり、人とは違うのかもしれません。今後大学は、教育の善し悪しがブランド力になるはずですとか、熱くコメントしました。とりあえず、やっぱり、教育の現場に立ちたい、と、特に2月は思ってしまう。大学は僕にとっては教育機関です。

22日:市ヶ谷で行われたシンポジウムのメモです

例のプログラムについて、2回目の公募を実施中だそうです。文科省としては、

「期間中は採用した研究者が自立した環境で研究出来るような全学的なサポートが必要(スタートアップ資金、スペース、機器、人的保証、経験豊かなメンターなど)」

「5年終了後、しっかりと継続すること(5年間の研究者支援ではない。スタート台として、つぎに定着させること、独自の予算確保、人材システムの構築)」

この2つがないと採用出来ませんよ、とのこと。もちろん農工大としては関係ないけれど、文科省の方針は分かった。

シンポジウムでは、森林生態の先輩であるY先生が、名古屋大学副理事として発表なさっていた。貫禄充分。さすがにこのレベルの人々は、切れていておもしろい。結局プログラムの問題点の多くは、きちんと代表の方々には伝わっている様子で、うれしかった。そして、農工大がイニシアチブをとっているのも、とても心強いし、9大学がとりあえず意見表明するなんてことは、これまであったのだろうか?大学がそれぞれ独自性を持ちつつも、協力して流れを作って行くのはすばらしいことだなぁと。

 

| Feb. 18, 2007 : 過去ログ整理

東工大の頃のweblogを整理しました。過去のものをそのまま、cssにだけ手を入れて掲載しております。今日は修士論文発表の練習を聞きに行ってます。さらに、京大のころのものも再掲しました。これ、Wordでつくってある、とってもみすぼらしいhtmlですが、会えてそのままで行きます。

ですが、容量が100MBと限られているので(100MBですか、、、)、とりあえずテキストだけ乗っかったと思って頂ければ、幸いです。2月中にアラスカの予定をfixしなければならないので、過去の失敗を参照するためにuploadしてみたのですが、役に立たない予感がします。。。北海道のHさん、どうぞ今年はFairbanksへ連れて行ってください。Toolikも行きましょう!

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修論発表練習。みんな頑張って!

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去年アラスカで一緒だったMさんから、5月でPh.Dコースを中退して、Masterをとって卒業し、もっとconservation寄りの研究に移行する予定だとメイルを頂きました。今年も一緒に研究出来ると思っていたので、ちょっとがっかりです。Toolikも、すっかり様変わりですね。Toolikでの研究を知っている皆さん、Science誌上のレポートですが、これ(Beloved Arctic Station Braces for Its Own Climate Change)が読める人は、読んでみると、ちょっとなかなか腕組みしてしまいますよ。

 

| Feb. 17, 2007 : 最近読んだ本の中から

いやいや、書いている時間はないのですが、1つ、ショッキングな出来事が、、、ついに、一度読んだ本を生協で注文してしまいました、、、ついにこの日が来たか、、という感じです。一度、amazon.comで予約注文していたものを、さらに注文してしまい、2冊来てしまったことがありましたが、今回は純粋にミスです。あああ、、、

以前、楽しみにしていたライブの日を間違え、ああ、こんなに忙しくして、ライブの日を間違うなんて生活は全く持って本末転倒です、と、ラミネートしてチケットを永久保存しているのですが、永久保存すべき、本が出来てしまったようです。あああ、ショックです。。。

ピンク本を注文しました。。。これは2冊目といっても、1冊目を誰かが持っていってしまったからです、、、誰か返してぇ!!オレンジのマーカーで僕の名前と購入年月が書いてあることまで記憶しているのに!

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「蝶が飛ぶ、葉っぱが飛ぶ」 僕には読みにくい本でした。あまり頭に入ってこない、というか、よく分からないのです。「火の誓い」のようには読めないのです。しかし、最後の最後、柳宗悦さんの「河井に送る」という文章が、大変感動的で、本当に読んで良かった本でした。僕はこれほどの情熱をもった、これだけの深い理解をもった文章を、この文章以前にいつ読んだのでしょう。確執はあったのでしょう。しかし、それを乗り越えさせてしまうほどの、深い深い、工芸への共通の思いが、この文章に結晶しているような気がします。「君から貰った真理は一つや二つではない」なんて、書けるものでしょうか?すばらしい。博次さんとの対話も、本当に暖かみのある、それでいて鋭いもので、本当に素晴らしいです。

「硝酸塩は本当に危険か?」 非常に考えさせられました。知らないことが多すぎて、ドッグイヤーで本が二倍にふくれてしまいました。巻末の引用文献が充実しているのも大変良くて、この中のいくつかは、原著に当たってみようと思います。

「17歳のための世界と日本の見方」 「遊学III」を読むのを勧めるのは難しいけれど、こちらの語り口なら、学生さんにも勧められると思います。すばらしいです。まさに縦横無尽。ここまでのステージにいって、始めて有機的なつながりが見えてくるのだと思うと、ちょっと呆然としますが。

「下流志向」 結局、人は間違うものである、という根本を我々は忘れてしまっているのではないかしら、と思いながら、いたるページで溜飲を下げる一冊でした。

 

| Feb. 09, 2007 : 忙中忙あり

ああ、COEのannual reportですか!事務局から連絡がなかったので、全くノーマークなので、ちょっとまいりました。とにかくY先生に1日締め切りを延ばして頂いたので(すみません)、目前に迫ってくるものをなぎ倒して、何とか時間を作らないといけません。12日までにA4 4枚、と書くと結構簡単そうですが、英語で4枚って、それなりにタフなのです。昨年は2週間くらいかけていたはずです。まずいなぁ、、、

と、ぶぶー言っていないで、とにかく、まとめて行く作業は、自発的であれ、外圧であれ、大切にしないといけません。ということで、とにかくばりばり書きます。ばりばり書きますよ。11日まで!今日は17:30から卒業論文発表練習です。頑張ってね!2人とも!それまでばりばり書きますよ。

書き始めると、ああ、TさんやYさんやUさんも頑張っているのかなぁ、とか、しゃべりたいなぁ、、とか雑念が、、、ええい!飛んで行け〜〜

 

| Feb. 08, 2007 : へこたれてないで頑張るぞ!

昨日は色々なことに失望して、とぼとぼ帰ってしまったので、今日は英語を聞かず音楽ばかり聴いてテンションを上げて仕事に来ました。頑張ります!スガシカオさんの曲でもGotaさんがたたいてるのですね!

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窒素循環について、ちょっとまとめて行かないといけないなぁと思い始めました。微生物をやっている人に一緒に入ってもらって、でも、微生物をやったことのない僕がイニシアチブをとると、それなりにへんてこりんな、でも物質循環→微生物生態という見方に立った、reviewが出来るかもしれません。ちょっと頑張ってみます。どうせ頭を整理する必要はあるのですから。

その前に、現実から逃げてはいけません。モデル計算しないと。。。。しかし、現実のモデルに取りかかる前に出張の書類などの作成提出で午前が終わります、、、あああ、、、。もっとちゃきちゃきやらないと。

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昨年、11月から12月いっぱいまで有休は3日あったのですが、出張が重なり、しかも外部資金の出張は、すべて「業務外」とのことで、年休を取れ、ということで、結局、年休が足らず、2日オーバー、、、という処理を先ほどして頂きました。事務方にはご迷惑おかけしてばかりです。

お仕事しているのに、休み、ってカウントされるのは、本当に精神的なダメージが大きいです。お金の問題じゃないのです。。。。仕事するなといわれているようで、本当に悲しいです。日数を数え損なった自分も情けないですが、、、しかし、科研費やJSTや兼業の出張は年休扱いにしてくださいといわれた時には既にオーバーしていたのではないかしら、、、、、なんてことでしょう。外部といろいろお仕事をすればするほど、つらい気持ちになるなんて。

もともとこのweblogの大きな目標は、ある制度を改善するための提言を少しずつまとめることだったのですが、いろいろなことがボディーブローのように効いていて、ダメージが色々あってなかなか書けません。

とにかく、このままでは僕はまずいと、心底反省できました。ここまできたら、走り始めないと、本当にダメ人間です。頑張らなきゃ。今までの頑張り方とは違うし、そのやり方は嫌いではありますが、嫌いだと言い続けて逃げているのは、まさに最低です。8年間も逃げてきたので、ついに年貢の納め時なのでしょう。とはいえ、なんだかいきなりメイルの返事とか遅い人になるのはいやですねぇ。。。

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。。。明日、僕も修論提出したみんなと一杯飲んでから帰ろう。。。みんな頑張ろうね!ビール買っておきます!って、あ、、教授会だった、、、。あ、でも時間があるな。みんな本当に体に気をつけてね、、PCにも、、、って、みんな読んでないと思うけど、、、

 

| Feb. 07, 2007 : なんでもありですねぇ、、

京大のAさんから刺激的な論文を教えてもらい、頭がこんがらがってきました。もう、硝化菌とか脱窒菌とかアナモックス菌とか、やめましょうよ、、、。みんなみんな生きているんだ、でも友達かしら?

 

| Feb. 06, 2007 : トレーサーと自然存在比の共存について

明日は朝一番で東工大にて博士論文審査です。Y研によって行きたいのですが、そのあとすぐさま農工大へ戻らないといけないのです。みんな元気なのでしょうか?頑張ってね!

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いわゆるトレーサーレベルでの同位体比の利用と、僕がやってきたような同位体の自然存在比での研究を、どう行って行くかについて、昔、研究室内へ書いたメイルに、手を少し入れて載せてみます。未だに、どうしたらよいかはよく分からないので、是非ご意見あればいただければと思います。計算間違えも多々あると思います。。。

我々が良く用いている「同位体トレーサー手法」というのは、実際には「安定同位体比の自然存在比」というものの変動を「トレーサー」として利用するというものです。一方、一般に「トレーサー実験」と言うときには、濃縮した同位体を用いることになります。たとえば、土壌に99atom%15Nの硝酸を添加して、その硝酸が植物にどれだけ吸収されているか、を算定する、というように利用します。15Nのような同位体は濃縮された形で購入することが出来、そのときの単位はatom% というものがよく使われます。99atom%とあったら、その物質中の窒素の99%が15N、つまり、15N/(14N+15N) x 100 = 99ということで、ほとんど全ての窒素元素が15Nという特殊な状態であるということです。 一方で、自然界に存在する物質を考える際に、15Nはある割合でほとんどの化合物に含まれています。僕の身体にも皆さんの身体にも必ず含まれています。その割合は約0.36%、または14N/15N=約273(15N/14N=0.003677)となっています。

さて、通常用いている単位、δ15N(パーミル)という単位は、ご存じの通り、メジャーな同位体とレアな同位体の存在比を比較し千分率で表したものであり、かなり特殊なものです。これを、一般の人にわかりやすい単位に直してみます。例えば、窒素については、自然生態系で観測される同位体比は-10から+15パーミルのレンジを取ります。そこで、これを変換してみると -10パーミルを15N/14Nにすると0.0036402、+15パーミルを15N/14Nにすると0.0037321 となり、その差は0.0000919しかありません。15N/14Nは15Nの存在比が大変小さいため、ほとんど15N/14N=15N/(14N+15N)と近似でき、先ほどのatom%とほとんど同じ値だと思ってください。つまり、自然生態系の非常に低い同位体比と高い同位体比の差は、atom%でたった0.00919%だけである、ということを覚えておいてください。通常の研究ではもっともっと小さな差を見ているわけです。

ここで問題が生じます。トレーサーを使っている実験と、我々のような同位体の自然存在比を測定する実験とを平行して行うことは、かなり気を遣わなければならないと言うことです。 たとえば、僕が学生時代使ったトレーサー溶液は、99atom%(15N)で1mMの硝酸でし た。これを土壌に添加して実験を行っていました。また、現在硝酸の窒素同位体比測定には、現在約20nmol-N必要です。

さて、99atom%15Nをδ15N値で表すと 26923123パーミル、2700万パーミルとなります。もうなんだかわけが分かりませんが、、 2マイクロモル/Lの硝酸濃度を持ったサンプルを10ml使い、硝酸の同位体比を測定しようとします。そのときに、近くに99atom%、1mMの溶液があったとしましょう。サンプルの窒素同位体比が0パーミルとします。たとえば、もしもトレーサー溶液が10ピコリットル(こんなものは飛沫としても見ることが出来ないでしょう)混じり込んだとします。そうすると、ラフなマスバランスを取れば、13パーミルとなります。

0パーミルのものが13パーミルと測定されてしまう危険性があるわけです。問題の本質はそこではなく、我々はサンプルの本当の同位体比を知るために測定しているのですから、13パーミルという値がでた場合、それが間違っているという別の証拠がない限りはこの値を信じるしかないと言うことです。そのために、通常、試料が含んでいる20nmol-Nがきちんと質量分析計でも回収されているか、といった回収率を検討したりします。しかし、1mMの溶液が10ピコリットルコンタミしたところで、それを濃度情報として検出するすべはありません。

薬品を秤取った時に、必ず秤を掃除するという習慣をつけている人はよく分かります。全くこぼしていない、と思っていても、必ずいろいろなものがこぼれていたりするものです。自分の行動に絶対などあり得ません。だからこそ、逆にこぼすはずだと思って動線を考え、使用前使用後のこと(掃除したり、エタノールで実験区画を拭いたり)を行うわけです。

実際の具体的な話をすると、トレーサーを使った時に、どのように研究環境を「汚染」してしまうかは分からないのです。

アラスカでは土壌に15Nを添加する実験を行う場合、机、ガラス機具、ペン、機具をつけ洗いするための酸・アルカリ容器、 様々なものが汚染されます。そしてもっとも問題なのが、ほこりです。ほこりはいつどのようにどのサンプルを汚染するか分からないのです。 僕はアラスカで数年前、今年と同じようなつらい徹夜作業を繰り返して同位体比測定用のサンプルを収集していましたが、数週間前に隣の部屋で15Nトレーサーを利用 していたことが発覚し、結局全てのサンプルを捨てて帰ったことがあります。最近教科書を出版したルイジアナのBrian Fryさんも90年代に同様の汚染の被害を受け、結局一夏の作業を棒に振ったことがあるとのことでした。現在アラスカではB. Fryさんの購入し たStable Isotope-Free Labというところで作業を行っています。ただ、僕は、そして恐らくB. Fryさんも、いやな気はしなかったと思います。信頼出来ないデータを得て、謝った結論を導くよりは、データ、サンプルを捨てる方が何万倍もましですし、問題は、実験室の使い方をきっちりと整備出来なかったことにあるわけですから、そこを改善すればいいのです。

15Nに限らず、14C、13Cなどのトレーサー実験を行ったり、行っている環境と近い場所で過ごしたりということはあり得ます。覚えておいて欲しいことは、とにかく近寄らないことです(否定的な意味ではなく)。どのように自分が汚染されて、どのようにサンプルを汚染するか分かりません。そしてそのサンプルが汚染されたかどうかを確認するすべはないのです。単におかしい値だから除去するなどと言うことは科学的に出来ませんし、 特異的な値が(汚染のため)得られ、その特異的な値をfeatureして論文を書いてしまうということは容易に起きそうなことです。近年微量試料での同位体比測定を行えるようになってきましたが、試料が微量であるだけに、汚染の危険性は極めて高いことを良く覚えておいてください。 そして、それは自分自身が信頼出来ないデータを得てしまうだけでなく、他の人のデータ収集にも影響を与えてしまう可能性もあることを覚えておいてください。留学していた頃、トレーサーを含んでいる可能性のある試料を粉砕するときは、まず粉砕スペースを別のビルに構え、服を着替えて入り、粉砕中に着ていた服は、大量の水で何回も洗ったあとようやく家に持ち帰り何回も洗濯する、などということをやってました(自分でもあほちゃうかと思いながらやっていましたが)。14Cをトレーサ ーで利用したときは、14Cの自然存在比をやっている友人から、歩く道をお互い変えようと、半分冗談、半分本気で話し合ったこともあります(彼は14C-DOCで先駆的な 論文を書いていました)。

トレーサーを利用するのが悪、のように言う人もいるでしょうし、逆に、自然存在比の人は、見えないものを気にしすぎているということもあるでしょう。それぞれの手法には長所短所があり、お互い、真実を明らかにしようと頑張っていることに変わりはありません。とにかく、Happy mediumをしっかり見付けようと言う営みをしっかりすることが、お互いのためですよね。

どこまで気をつけてもどうもしようもないのだから、、ということはもちろんありますが、一方で、だからこそ、一番気にしている人に全ての人が合わせるべきだ、 というのが僕が先輩から教わってきたこと、そして今の僕の意見です。実際には同位体比が1パーミル動いたということは大変な事実を示唆している場合が多々あります。また、同位体研究の先端研究をすればするほど、データの信頼性についてはさらに高い質が当然のように求められるようになります。

トレーサーに限りませんが、自分がやっていること、自分の周りの仲間がどんな研究をやっているか、についてよく知ること、そして良く配慮することが大切です。

もし、トレーサーを自然存在比を測定している環境で汚染してしまった可能性がある場合、どうしたらいいでしょうか?難しい問題です。もしも、実験台に1mM、 99atom%15Nの溶液の飛沫が飛んだ場合、、を考えます。皆さんどうしますか?

木庭は、、、飛沫を拭く前に、普通の硝酸(15Nをほとんど含まない)の濃い溶液を作り、敢えて硝酸で実験台をまんべんなく汚染します。そのあとに時間をかけて丁寧に硝酸をふき取ります。これは、まずは汚染全体の中で15Nの割合を下げなければならないと言うことです。たとえ硝酸が多少残って汚染した(しかし濃度レベルでは汚染が確認できないレベルで)としても、その同位体比が通常であれば、同位体測定結果にはほとんど問題がないはずです。15Nが濃縮した状態では、ほんの、ほんとうにほんのわずかの汚染が命取りとなるのです。そうであれば、とにかく15Nを希釈することが、硝酸そのものの汚染よりも大事になるということです。これが良い解決策か分かりません。特に経験豊かな皆さん、こうしたらいいなどご意見ありましたら是非お願いします。

あと、トレーサーを含んだ物質を、自然存在比を測定している質量分析機で測定するかどうかですが、必ず先輩・先生にまずは相談してください。トレーサ ーレベル(atom%で表現するレベル)とnaturalレベル(δ値で表す、我々のレベ ル)のサンプルを1つの質量分析計で測定することには、いろんな意見があります。 大丈夫だという人と、絶対だめという人と様々です。僕の経験では、トレーサーを1 度測定したために、元素分析計のカラムなど流路を全て取り替えたことがあります。某所では、たしか元素分析計はnatural用とtracer用と2台別々に用意していると記憶しています。元素分析計は1000万円以上しますが、それをもう1台用意 するほどシリアスなわけです。一方で違う某所では3000パーミル程度の「やんわりとした」トレーサーであればnaturalと併用しても何の問題もないということも聞いています(ただ、そこでは大変経験豊かな方々が気をつかってチェックしているので可能なのだと思います)。

硝酸のスタンダードとして利用している国際標準物質は窒素同位体比が180パーミルです。実際、どこまで「重い」サ ンプルを測定すると、どんな影響があるのかは、よく分かりません。ただ、木庭の感覚としては、自然存在比を測定している質量分析計を利用するときは上限200パーミル程度と考えています(180パーミルのスタンダードまで)。それ以上の同位体比を取る場合は、先生に相談しようとするでしょう。また、測定したとしても、測定後に軽い試料、標準試料を繰り返し測定して、測定が影響を受けていない(メモリー効果がない)事を確認してから次の人に引き継ぐと思います。また、トレーサーレベルの試料については自然存在比を測定する元素分析計+質量分析計のセットでは測定しないようにしています(海外に依頼分析を出します)。僕にとっては180パーミルのスタンダードは現実にはトレーサーで、余りさわりたくないというのが正直な印象です。感覚として、自分の測定している試料と20パーミル同位体比が違うものは、出来るだけ近くに置かない、さわるときは手袋を変える、薬さじは必ず変える(拭いてごまかしたりしない)などを心がけていま す。

同位体比・アイソトポマー比計測は相対計測です。常に自分の測定が正しいかどうかを判断し続けること、正しく測定されていることを確認する不断の努力を行うこと、それしか、データの真の声を聴くすべはありません。是非、皆さんで情報を共有して、より良く、正しく、測定を行ってゆきましょう。

 

| Feb. 05, 2007 : インタビュー

Nature Podcastを更新したら、バクテリアの共生がどのように進化するかについて、あの論文(リンク先は、英語版のabstractになっているでしょうか)についてPaul Raineyさんが語っていました。 聞いた方がよく分かりますね。ああ、北大のMさんとお話ししたい。。。微生物生態に生態学はもっと食い込んでいかなければダメですよね。しかし、美しい。。。遺伝子でここまでチェックしなければならないのか、という驚きはありますが、逆に言えば、チェック出来るという強みがありますね。

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先週、D論公聴会を拝聴したのですが、そのKさんが、わざわざお越しになって、コメントをくださいとのことだったので、週末を挟んでコメントしてみました。続いて、京大のAさんから投稿準備中の論文についてコメントをくださいとのことなので、それにも。これで午前中は終わりそうです。恐らくもう少しです、頑張って!

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テキストの崩れは、フォントをメイリオにしているからのようですね。僕だけの問題なら、よかったよかったです。

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図書館に申請を出したら、すぐさまアカウントをactivateしてくださいました。助かります!早速T. Blackburnさんの論文を申請しました。

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| Feb. 04, 2007 : ミュージシャンのインタビュー

時間をかけても、まともなものが書けないこと、そしてペースが全くつかめなくなることがよーく分かったので、先週から突然、更新ペースを上げています。防備録が必要になってきていることもありますが、ま、気の向くまま、、です。

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ああ、また某グラフソフトが、再起動を要求しています、、卒論のころから困っていることは全く変わらないですね。そして、一生懸命グラフを描いてはみたものの、、、、、

N2O還元の働きを1枚目では75%から99%としたのに対し、2枚目では1%から99%と緩和してみると、だいぶ変わります。しかし、脱窒菌の細胞内でN2Oはどれだけ還元されるのでしょうか。さらに、3枚目では脱窒強度の縛りを緩和すると、、、あれ?余り変わらないですね。いや、そんなこともないですね。うーん。グラフ描くのは楽しいのですが、、、

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未踏、車輪の再発明、といった言葉を、物質循環や生態学では、いつ使うことが出来るようになるのでしょうか。

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CDを買う、買わない、というラインの微妙なところに、ずっと数年いるバンドがいくつもあります。ベスト版が出たりすると、トリガーが引かれるのですが、、RhymesterとSoulheadは、まさに引かれてしまいました。Beat Crusadersが気になりますねぇ。安藤裕子さんも木村カエラさんも、インタビューおもしろいなぁ、、。ものを作っている人はすごいですね。言葉に血が通ってます。難しいことを言っているわけでもないし、ミュージシャンですから言葉では上手く表現出来ていないと思うことも多いのでしょうが。

何かを一生懸命やっている人は、一緒に話していてもやはりおもしろいのです。一生懸命と言うことの意味を、ある活動を通じて分かっている人は、いろいろな別のところでも分かってしまうからなのでしょう。

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年をとることはいろいろなことを引き連れて、引き離して行くものですが、音楽については、年をとることは思ったよりよいです。10年後はどんな音楽が出ていて、自分がどんな音楽を聴いているのか、とても楽しみになっています。10年前と比較すると、自分の聴く音楽の幅がだいぶ広がりました。へんなこだわりもだいぶ消えつつあります。いや、そうでもないですね、絶対に聴かないものも1つ2つあります。生理的にどうもしようがないという音が分かってきた感じです。おもしろいですね。音楽を聴くということにおいては、上手く年齢を重ねているような気がしてうれしいです。保守的にならないように、かといって新しいものにむやみに飛びついたりしないように、そのバランスをちょっと離れたところから見つめるのは、恐らくいい訓練になるのではないかと。

もっと根元的なことに落とし込めば、好きだと体が分かったものは、誰がどうであれ、自分の頭がどう反応しようと、好きだとすること、その自由さをかみしめることができます。これは、自分で自分のことを考える訓練のうち、最も簡単なものではないでしょうか。

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ようやく、「経済ってそういうことだったのか会議」を読み終わりました。とてもおもしろく読みやすいのですが、10ページと行かないうちに眠っていました。同じく、「自由論」も遅々として進みません。まぁ、こちらは、電車の中で、論文か、これか、という扱いの毎日なので、時間はだいぶかかりそうです。非常に読み応えがあります。さすが名著です。

 

| Feb. 03, 2007 : いろいろ

このところ色々刺激的でした。色々ありすぎて忘れてしまいましたが、、

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いろいろな人に、いろいろなことをお頼みして、逆に色々ご依頼をいただいて、色々やっております。皆様、いろいろよろしくお願い致します。

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IPCCの報告書についてのニュースが、全回のリリース時よりもずっと目につきます。単純に喜ぶことは出来ませんが。

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1月末のJSTの微量計測シンポは、微量計測ということで、医療、薬学的なものが多かったのですが、とにかくすばらしかったです。日本のものづくりは安泰ではないかしら、と感じてしまうほど、素晴らしい研究が多かったです。もちろんJSTの採択ロジェクトと言うこともあるのでしょうが、誰も測れないものを測り、誰も観たことのない世界を切り開く、正にフロンティアでした。ミカエリスメンテンの話は特に衝撃的でした。なんとなしに信じ込んでしまっていることは、いろいろな場面で、いろいろとありますね。

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このごろ、論文を手に入れるために、著者に直接メイルすることを覚えました。自分自身も、論文を送ってくださいといわれるとうれしいのだし、積極的に連絡することは悪いことではないはずです。論文以外のことも色々聞くチャンスも出来ますしね。早速、月曜日には送ります、とUKからお返事が。ちなみにお願いしたのは、IPT(Isotope Pairing Technique)の MEPS論文です。AISTのSさんと、IPTなりanammox測定なり、とにかく基質の15Nについての測定がちょっと甘いために、過小・過大評価になっていないか、ということを検討したいと思っているのですが、既に行われているようです。

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ああ、Ralf ConradさんとJim Prosserさんが書いているので、高い本を注文してしまいました。amazon.comから今なら安いよ!と宣伝メイルが来ていて、2日ほど考えあぐねていたのですが、結局amazon.co.jpから、ギフト券の力を借りて、購入してしまいました。今日はY先生の本棚から古いJames Tiedjeさんの論文を掘り出し、この20年前に出版された本は今でもすごいなぁと思い、購入しようと思ったのですが、残念ながら高値が付いていました。学術本はすぐに出回らなくなってしまいます。

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今日は、あの名著のBacterial Biogeochemistry、または15N同位体希釈法の生みの親であるHenry Blackburnさんが、1990年に堆積物のsimulation modelを作っていたのを発見し、驚愕しました。この、"Denitrification in soil and sediment"という本は、違う人が書いた章ばかり読んでいて気が付きませんでした。よかった、、、。

N2Oのデータを説明するために、試みに(なんちゃって)モデル計算をしていたのですが、計算式の中に頭を抱えたくなるようなミスを見付けました。ああ、昔の僕も賢くなかったのです、、。JSTのポスターに組み込まなくて本当に良かったです、、、。脱窒に関する関数をどう表現すべきか、具体的には、N2O/N2をどう表現すべきなのか、と文献を探し始めて、上記のJ. TiedjeさんやH. Blackburnさんにたどり着いたのです。温故知新ですね。

N2Oや15Nと表記すると、レイアウトがだいぶ崩れますね。OperaやFirefoxでは大丈夫ですが、IE6ではなかなかつらいものがあります。みなさんのブラウザー環境ではどうでしょうか?メイリオの問題なら良いのですが、、、Vistaなら収まりはいいのでしょうか。

1992年に論文になっているものとこの本のcodeが同じであればいいのですが、H. Blackburnさんのモデルは1994年のAEMに向けてだいぶ進化していったようなので、途中の1992年のFEMS Microbiology Lettersに素直に受け継がれているのか心配です。ということで、このFEMS論文を手に入れないと、と探したのですが、しかしFEMSの所蔵は小金井図書館で、小金井への文献複写依頼の申請はもちろんまだ行っていないので、その手続きを、、といろいろ困りますね。ああ、色々匍匐前進ですが、仕方ないですね。とはいえすでに3ヶ月経っています。うーん。

単なる情報の収集にかける時間は出来るだけ少なくしなければならないと思います。その分、時間を考えることに費やすべきでしょう。文献を手に入れるだけでお仕事したと思ってしまいがちです。

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こばけんきゅうしつ、の立ち上げは遅々としてなかなか進んでいないのですが、今感じている、何とも言えない焦燥感は、米国に留学していた時によく似ています。しかし、幸か不幸か、今はあのときほど、挑戦的な環境ではないのです。なにせ今回は日本で異動しただけなのですから。この、うっかりすると見失う環境の良さに甘えず、逆にもっともっと外を向かないと、挑戦しないといけないのでしょう。

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2006年11月16日のメモ

14時から、Kさんの博士論文執筆状況についての話し合い。はっきり言って感動した。すごい。負けず嫌いの社会人(と、ご自身でおっしゃっていたけれど)の底力をまざまざと見せられた。感動した。博士論文の最初と最後に、ポンチ絵をいれて、その最後のポンチ絵には、今後数年〜数十年で解決してゆくべき項目を入れる、その絵を持ち歩いて、今後の研究活動を進めてゆく、というような話をする。みんな、自分が学生の時に、Wさんに教えてもらったことなんだが

 

昨日、そのKさんの博士論文最終版が送られてきました。別の研究室の、物質循環や同位体とは全く関係のない研究をなさっている学生さんですが、審査官を承っています。審査途中で農工大に異動したのですが、継続して外部審査員として申請して頂きました。

教員になって、はや9年目に入りましたが、いろいろな学生さんがいました。彼等との関わり合いの中から、自分の中での様々な基準が作られているのですが、だんだんとその基準が甘くなることに突然気づかされます。その甘さは、自分自身への言い訳が降り積もった結果なのです。

気づくその瞬間は、Kさんのような素晴らしい営みをすることの出来る学生さんに出会った時です。自分はいろいろと手加減しすぎなのではないか、もっと高みを目指すように問い続けるべきではないか、そんなことを反省します。博士論文の中の言葉が少しずつ重みをまして行く過程を、見せて頂きました。博士論文とは、これほどまでに人の思考の営みを洗練させて行くことが出来る媒体なのかと、改めて感じました。人の真剣な頑張りというものは、本当にすばらしい。本当にありがとうございます。大変勉強させてもらいました。最終審査、楽しみにしております。

このような、真摯な頑張りようをありありと見せつけられると、教員という職業は、やはりやめられないと思うのです。灰色に染まることの多い日常の中に、ちょっと光が当たります。ボート部のコーチをしていた時と同じだけの、真剣さと情熱を取り戻さなければ。ときどきは良いことがないといけません!

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先日京都から送られてきた試行データも、とても刺激的でした(Yさん、すごい!)。いろいろな人が、様々な形で丁寧に頑張っている、その営みを、良い形でさらに違う、高次のものへと変えて行く、企業でのPMのようなものを超えた方法論を考えなければならないと思います。そんなことを考えることは、今の職場では求められていないことかもしれませんが、今後の大学で、教育と研究を平行して上手くやって行くためには、かなり考えを詰めてゆかないといけないと思うのです。今、考えられている以上に。上手に反省出来るだけの真剣さを持って。

上手に反省することは、本当に難しいです。ただ、はっきりしているのは、真剣にやらなければ、反省には至らないと言う、当たり前のことだけです。当たり前のことですが、その当たり前なことが心にすとんと落ちるようになるまでには、かなりの時間が必要でした。そして、実際に出来るようになるのは、もっともっと時間がかかります。

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休みの日はなるべく音楽をかけっぱなしにしています。top100のようなものを流す番組だと、100から30位までの曲はまじめに聞きます。余りアクセスが良くないですから。このごろ良く聴いているFrank McCombさん(ここも音が流れます。ご注意を)は、数年前のある日、そんな低いランキングで出会った記憶があります。低いランキングだろうがなんだろうが、いいものはいいのでいいのですが(なんじゃこりゃ)。先日Yさんと「原稿を書く神様が降りてくる曲」について、話しましたけど、Frank McCombさんの曲はかなり近いです(Pat Metheny Groupには適わないのですが)。今度の椎名林檎さんの作品には、斉藤ネコさんがふぃーちゃーされているのですね。斉藤ネコさんがCDのクレジットにある作品を手に入れると、いつもにこにこしていたので、かなりうれしいです。いぶし銀。ピアニカ前田さんも出てくるとなんだかうれしい。

僕はPMからは学べないかもしれないけれど、いわゆる音楽プロデューサーからは、いろいろ学ぶところがあるはずなのです。空間プロデューサーよりも、人と人との関わり合いが強そうですし。気が付けば、邦楽では、亀田誠治さん、森俊之さん(リンク先は音が出ます。ご注意を!)、屋敷豪太さん、小林武史さんが関わっている作品ばかり聞いています。ぱっと流れた音を、探って行くと、やっぱりこの人だったか!ということばかりです。いま生協に注文しているのは、オフコース、Rhymester、Soulhead、スガシカオさん、平原綾香さんのCD。ベスト版ばかり、、、、。

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と、だらだら内容のないことを書きながら、モデルのチェックを行っているのですが、、、あ!また恥ずかしいミスを発見しました。。。本当に良かった、、、発表しなくて、、、

 

| Feb. 01, 2007 : 2がつにげないで

さて、2月ですね。皆様色々頑張りましょうね。 3日間文献収集をさぼっていたら、大変なことになっていました。世界は色々動いていますね。

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JSTのシンポジウムの間、simulationを回していたら、個人設定が壊れてしまい、結局12月にバックアップをとった時点に戻ってしまいました。データは毎日バックアップをとっているものの、windows特有の設定などは、手薄でした。いろいろと設定していたんだなぁと、半ばあきれながら直してます。