Kei Koba's weblog in CER, Kyoto University ~ Are we on the right track ? ~

| September. 30, 2007 : 何とか締め切りを死守しました。

ミニレビューをとにかく送りました。明日からは琵琶湖の堆積物調査です。

季節の変わり目ですが、みなさまお体ご自愛下さいませ。

ああ、明日の新幹線、何をしようかしら!久しぶりに時間が取れる!!!先日、偶然手に入れることが出来た「スーパーバグ」の窒素固定のところでも読もうかしら(あれ、色々なところでこの本、まだ手に入りますね)、それともデータの整理でも、はたまた、、、

おじさんになると、新幹線の時間は貴重です。

 

| September. 22, 2007 : 人間ドック

わんわん!

ドッグではなかったですね。

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19日はピンポイントで府中にてDGGEを教わっておりました。Y先生、何から何までありがとうございます。これまでの予備調査が示すところは、、、とっても面白いなぁ、、微生物と物質循環、、、というところでしょうか。

20日は朝からボートの試験、21日は人間ドックでした。

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以前、柳田邦男さんの著作を立て続けに読んでいた頃、常に頭の中にあったのは、圧倒的な真剣さでした。人の命を守ろう、人の「健康」を考えようとする人々の、本当に真剣な営みを知るにつれ、さて、僕ら、生態系の「健康」や生態系を「守ろう」と研究活動をしている我々の真剣さは、挑戦は、覚悟はいかほどなのだろうか、と半ば泣きそうになったのを思い出します(それで研究をやめようと思ったのかも知れません。たしかM1の頃だったのではないかと思います)。

人間ドックでやって頂いたことと、我々がやっていることを比較してみましょう

まず尿を取り(これは、渓流水サンプリング?)、血液を採り(土壌溶液サンプリング:注射針もいつも使っている22ゲージだったり、採血管も(中にN2Oがたんまり入っているやつ)、両針も、慣れ親しんでいる器具ばかりです)、超音波で内臓を見たり(これぞリモートセンシング!)、ピロリ菌の検出のために、呼気をt=0とt=25minでとってみたり(これはsubstrate-induced soil respirationではないですか!13Cも使っていますし!)、そして最後は胃カメラを飲みましたが、これぞまさに、mini-rhizotron !

僕らはいつになったら予防原則を生態系保全に適用できるだけの覚悟を身につけることが出来るのでしょうか。僕らはいつになったらその覚悟を身につけるための確固たる知見を提供できるようになるのでしょうか。

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かなり手強い査読を2つ終えて、これから自分の仕事に取りかかれるかどうか、、というところです。

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DGGEの結果は、メインストリームではないサンプル、つまりメインの試しサンプルの、さらに試しサンプル(なにがつまりだ)が面白くなってきてしまいました。これはこれで新しく何か考えたいですね。

これからやってみようと思っているテーマ5(#DGGEのマスター次第)
硝酸生成を制御するメカニズム: 誰が犯人?何が犯人?

土壌の窒素無機化というプロセスは、植物や微生物に利用しやすい無機態窒素(アンモニウムや硝酸)に有機態窒素を変換することを示します。このプロセスは様々な生物によって行われますが、無機態窒素としてまずはアンモニウムに有機態窒素は変換されると考えてられています。

そのアンモニウム態窒素は、硝化細菌(アンモニア酸化菌+亜硝酸酸化菌)の働きによって、亜硝酸、硝酸に変換されます。同じ無機態窒素といっても、アンモニウムとして存在するのか、硝酸として存在するのか、によって、窒素循環は大きな変化を生じます。その辺は、昔々「遺伝」に書かせて頂いたお話し(「森林生態系における無機態窒素の動態(木庭啓介・徳地直子)」を参考に出来る方は参考にしてください)。

土壌中の硝酸は、独立栄養細菌であるアンモニア酸化菌によって亜硝酸に、亜硝酸酸化菌によって硝酸に変換されたもの、とこれまで考えられてきました。一方、他のbacteriaやfungiによって、有機態窒素から直接硝酸まで酸化されるプロセスも知られています。さらに、最近ではアンモニア酸化を行うArchaeaが土壌にも多く存在していることが分かってきました。

Archaean nitrification(Ammonia Oxidation by Archaea: AOA)についてはまだ始まったばかりでほとんどそのphysiologyは分かっていない状態ですが(しかし、色々な予想はされていると思います)、 Heterotrophic nitrification、そしてAutotrophic nitrification(Ammonia Oxidation by Bacteria: AOB)の相対的な重要性がどのようになっているかについては、ほとんど分かっていません。

AOBはheterotrophicな微生物と比較して、アンモニアの獲得競争で負ける、低pH環境で弱い、ということが一般に考えられています。しかし、特にpHについては、日本の森林土壌のような酸性土壌であっても硝酸生成が活発な土壌がたくさんあり、そのような土壌では、AOBによって(実際にはAOBとNitrite Oxidation by Bacteria: NOBによって)、硝酸が生成されているのか、またはfungiなどがその役割を担っているのか、未だに議論が行われています。

AOA、AOB、Heterotrophic Nitrificationを分けるにはどのような手法があるのでしょうか

1. 阻害剤を使う
2. 15N tracerを使う
3. 15N+18O tracerを使う
4. 15Nと18Oの自然存在比を使う
5. 遺伝子情報を使う(なぜここだけこんなにあやふや?)

1が一般的で、アセチレンを少量加えた状態で土壌を培養すると、AOBの反応が止まると考えられているため、それでも硝酸が出てくる場合はHeterotrophicなnitrificationであると解釈します。

2は最近本格的に始まった研究で、ただし、どうやら計算には今までのシンプルなパラメーター決定では対応できないようで、Bayes計算、MCMCを使った計算が今始まっています。

3.は2の応用ですが、まだやられていないかも知れません。Wrage et al. (2005) RCMやMenyailo and Hungate (2006) JGRを読めばすぐアイディアは分かると思います。

4.もMayer et al. (2001) GCAで議論されているように、AOB+NOBで出来る硝酸とHeterotrophic nitrificationで生成される硝酸では同位体比が異なるでしょう。世界のどこかですでにやられているはずですが。

5. が最もhotなやり方でしょう。ただし、硝化速度にどれだけ寄与しているかを考察するのは困難です。

本テーマでは、まず5を使って、硝酸生成をになっている微生物についてのスクリーニングを行います。すでに(経験的に)、AOB、AOA、Heterotrophic nitrificationの貢献度が違う土壌には当たりをつけてあります。AOAの遺伝子による検出については、まだ始まったところなので、横目で見つつ、AOBについての検出を行った上で、次に1、アセチレンなど阻害剤を使った土壌培養を行い、さらに4で土壌から生成される硝酸について15Nと18Oの測定を行うことで、通常考えられているAOB+NOB由来の硝酸と異なる同位体シグナルを持つかをチェックし、さらに3を行います。この時は、おそらく13CO2も使って、Stable Isotope ProbingとIsotope Dilusionを併用することで、確実にheterotrophic nitrificationを追いつめます。

まぁ、それほど甘くはないでしょう。議論の根幹であるpHの影響についても、それほど高くなくてもAOBは充分アンモニアを酸化できそうですし、定量的な議論は至難の業です。しかし、qPCRでも追跡しきれないところを同位体でやらないと、見えないフローの重要性を顕現させないと、同位体をやる意味がないのですよね。

SIPでfunctionalなAOBを取り出した研究は
Freitag et al. (2006) Environmental Microbiology
Whitby et al. (2001) Letters in Applied Microbiology
くらい?あとはメタン酸化との関連では良く引っかかってくる。可能は可能。

とにかく読むべきは、Jordan et al. (2005) AEM(AOBの寄与は、酸性雨が降っているところで少ない?)、 De Boer and Kowalchuk (2001) SBB(そのものズバリ、酸性土壌での硝化についてのreview)。

AOAのprobeがどれだけ上手く引っかかるのか、全く分からないので、これは大きな不安要素。

相変わらず尻切れトンボですが、、、3年生や一緒にやっていただいているY先生のために、何か書いておかなければと思いつつ、別の要件がどんどんとメイルで入ってくるのですよ。もうtime's upです。

さあ、原稿原稿!

いや、その前に、もうちょっとメモを上に加えよう、、

 

| September. 18, 2007 : 死のロード、ふたたび?みたび?

今週から10/4までほとんど府中におりません。ご連絡はメイルでお願い致します。なんとかチェックしますので。物理的に捕まえたい方は、9/19は学内におります(朝からDGGEを教えて頂きつつ、paperworksと琵琶湖堆積物調査の準備と、木崎湖準備があるので、どうにもこうにも、、ですが)、9/28の夕方(木崎湖から帰ってきます)を狙ってください。

今日はこれから京都大学生態学研究センターに行ってきます。

 

| September. 12, 2007 : soil DNA --> PCR

毎日、全く知らない分野での手法を学べて最高です!楽しいです!!今日は電気泳動で、DNAがちゃんと取れているのかの確認などでした。いまPCRさんが一生懸命増やしてくれているはずです。ああ、明日が楽しみです。DGGEが上手くできるようになったら、本当に色々なことにトライできるのですが、、、頑張らないと。とはいえ、どんな難関が待ちかまえているのか未だ全く知れません(全ての測定において、そんなに簡単にいくことなどはほとんどありませんから)。しかし。とにかく楽しいから頑張ります!どなたか一緒に頑張ってくれるかた、いないかしら、、、

これからやってみようと思っているテーマ4(#DGGEのマスター次第)
物質循環と微生物群集:Response, Resistance, Resilience, and Recovery from Disturbance (R4D)

生態系における生物群集構造、その群集がもたらす生態系機能がどのように制御されているかについては、非常に興味深くかつ本質的な生態系の意地構造に関わることから様々な研究が行われてきている。

土壌微生物というのは、分子微生物学的手法の発達により、生物群集の多様性、変化などを追跡するのに、今や適した対象となりつつある。比較的小さなサンプルサイズ(例えば1gの土壌)の中に、多種多様な微生物が多種多様な機能を発揮しつつ存在しており、今や土壌の中に存在するプレーヤーについての情報を比較的容易に得ることが出来つつある。

森林土壌での物質循環を考えるときに、今まで多くの研究では微生物群集についてはブラックボックスとして扱っており、たとえば窒素循環では、硝酸が生成されたり生成されなかったりという現象はpHやDOC、水分状況やアレロパシーなどの要因と関連付けることで、硝酸を生成しているであろう微生物の活性を予測し、議論を行ってきた。しかし、単純に考えれば、硝化を行う微生物がその土壌にいるのか、いないのか?それを確かめることが先であろう。そして、最近の分子生物学的手法は、物質濃度の増減を追跡しているこばのような人間にもアクセス可能な程に発展してきている。

そこで本研究では、土壌または地下水中の微生物群集構造と、そこでの物質循環を改めて捉え直し、物質濃度変動から予想される微生物群集構造が本当に環境中で確認されるのか、我々でも比較的習得の容易な分子生物学的手法(DGGE)を用いて研究を行う。もちろんその対応を見るだけでは、研究にはならない。もっともっと小難しいところまですすみましょう。

土壌中の窒素循環の中で、生態系での窒素保持という側面から考えると、土壌中の窒素がアンモニウムに無機化されたあと、どれだけ硝酸に変化されるかというファクターが非常に重要である。アンモニウムは硝酸と比較して、微生物に利用しやすいと考えられており、さらにアンモニウムよりも硝酸は土壌から流出しやすい。つまり硝酸はアンモニウムと比較して、利用されることなく、流れてしまう可能性が高いと考えられている。また、硝酸が脱膣を受けると一部が一酸化二窒素の放出をもたらし、硝酸は下流の生態系の富栄養化を促進する可能性がある。

同じような土壌、たとえば斜面の上部と下部、という違いだけでも土壌が硝酸を生成したり、硝酸を全く生成しなかったりというコントラストを持つことが知られている。実際には総硝酸生成速度(gross nitrification)を測定すれば、硝酸が微量ながら生成され、急速に消費されていることが多いのであるが、土壌pHなどの環境が劇的な変化を見せないのにもかかわらず、土壌は硝酸生成について非常に異なる性質を持つことがある。さらに、土壌へ攪乱を加えたとき、例えばライシメーターを設置したり、トレンチを切って根を切断したりする場合に、硝酸の急速な生成(flush)が認められることが多い。生態系レベルで言えば、伐採を行うと渓流水に硝酸が高濃度で流出してくる。さらにこの現象には、生態系のインパクトから幾ばくかのタイムラグがあって後に生じることが分かっている。そのタイムラグは、アレロパシー、硝化菌の遅いdoubling timeなど様々な可能性が示唆されているものの、未だなぜそのようなタイムラグが生じるかについて決定的な解答は得られていない。

生態系にインパクトを与えた場合に、どのようにシステムが反応し、どれだけシステム(たとえば機能)がその状態を維持し、どれだけの回復力を持っているのか、そしてどのように恢復するのか、というシステムダイナミクスを考えるときに基礎となる知見について、本研究では、硝酸生成(アンモニア酸化+亜硝酸酸化)という機能に着目して、どのような土壌ではこの機能が発揮されないのか、また、どのような状態が(多重)安定解なのか、その土壌にどのようなインパクトを与えると機能が発揮されるのか、そして、どのように攪乱の影響は回復して行くのかを、DGGEでの機能レベルでの解析(アンモニア酸化、亜硝酸酸化)と様々なインパクトを与えた土壌培養を駆使することで明らかにしたいと考えています。土壌養分循環としての重要な側面として硝化を選択していますが、そこにとどまらず、あるシステムの安定性をどう考えることが出来るのか、という難しい名大まで発展させることを目的とします。

科学研究費補助金基盤研究(B)で北海道・高知・鹿児島・群馬の土壌を使った土壌入れ替え培養実験を大規模で行うので、それらの土壌を利用することにより、地温・降水量・窒素供給量などのバックグランドを大きく変化させた土壌それぞれについて、窒素無機化が硝化まで行くか行かないかという、そのregulation factorはどのようなものなのか、という問に対してかなり一般性のある議論を展開できるはずです。 この研究テーマは、農工大・北大・鹿児島大・森林総研のみなさまをはじめとした、木庭と共同研究を色々な形でしてくださっている関係者みなさまのご協力がなければ不可能であることを念のため付記しておきます。

生態学を志している人間としては、やはり生態系システムの安定性について、なんとか自分なりの意見を持ちたいのです。北大苫小牧のMさんといつも話しているように、土壌微生物は群集と機能をリンクして考えるときに最適な対象だと思うのです。

あした、Prosserさんの論文のように絶妙なバンド数でDGGEが行えると良いのですが。この論文とまずは同じようなことを出来るようになって(全ては無理ですが)、上に書いたようなアンモニウムで止まる系と止まらない系の移り変わりという、Hくんと4年生の時から分からないなぁといっている問題に(ようやくですが)取り組みたいものです。9/6に紹介したカオティック論文もある意味同様なことを、もっとしっかり問題として扱っているのですが、あれほどの議論は難しいです。qPCRとか、でも、すぐにはじめていそうな気もしてきました。楽しいなぁ、、、

 

| September. 11, 2007 : soil DNA

夜中に、とりあえず科研費書類を仕上げて、朝寝ぼけて登校。今日は土壌からDNAを抽出する日です。なんだか出てきた!感動です!でもまだ汚れています。明日は、ついに、ゲルに流せるかしら?

研究支援チームに、科研費プレテスト書類をおくって、せっかくなので、共同研究をさせて頂いている先生方の中の何人かにも、書類をおくって、もしもお時間あればコメントを頂ければ、、と送ってみたら、早速北海道のS先生からコメントを頂きました。ありがとうございます。何となく気になっていたところをやはり直そうという気になりました。

アイディアは出来る限りオープンにして行きたいものです。

裏番組はあわただしいです。裏の裏番組は忘却の彼方です。これは、、、来週は厳しい、、、、

 

| September. 10, 2007 : paperworks

今週はDGGE講習なのですが、裏番組はpaperworks祭りです。うむ、、、あまり楽しくない書類が多いです。皆さん書けました?僕は、肝心の所が全くです、、、

明日が科研のお試し審査締め切りなので、今夜は眠れないかもしれません。また明日!

 

| September. 7, 2007 : 台風一過

さすがに朝から蒸し暑かったですね。かなり太い枝も折れていて、台車で荷物を運ぶときに巻き込んで大変でした。エレベーターのない6号館の木庭でございます。

朝からエタノールでRedox microsensorを洗ってみたのですが、、、やはり、思わしくないような気がします。デンマークにまたメイルですね。

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14時から、Wさんの学会発表練習。そのあと凍結N2Oマスター、Yさんが遊びに来てくださいました。MIMSやMicrosensorで出来そうな、あんなこと、こんなこと、そんなこと。是非ご一緒に遊んでください!とりあえず凍らせて、44/40、32/40を見てみましょう。

今日はここまで。科研費書類進めないといけません。査読論文も山になってますが、、、

 

| September. 6, 2007 : 台風なかなかすごいですね

朝から、Redox microsenserを1:1硝酸で洗っておりました。しかし、まだ電圧が安定しません。安定しないと言うのは間違いで、安定するのですが再現性がありません。

デンマークに昨晩メイルを出していたのですが、夕方に返事が来て、どうやらずっと標準溶液にセンサーをつけている状態なのがまずいとのことで、Woops !と部屋に飛び込みました。明日、また洗わなければだめのようですね。何はともあれ、異国の地から、いろいろとサポートしてくれるのが大変有り難いです。

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AGUのアブストラクトを添削したり、自分の事務書類を提出したり、IRMSの真空度をチェックしたり、Microsensorの電圧をチェックしたり、科研の書類を書こうとして1文字も書けなかったり。そんな中、Sさんの溶存N2OのHeadspace法での測定、うまく行きそうです。非常に初歩の初歩の測定ですが、出来るはず、と、実際に出来るようになっている、には大きな差があります。これでばりばり測定が出来るはずですね!とりあえず5月の湖水試料からはじめると言っていましたが、ちょっと楽しみです。

これからやってみようと思っているテーマ3
森林での窒素循環:窒素飽和状態の窒素循環を新しい同位体測定で捉え直す

-- FM多摩丘陵は、いわゆる窒素飽和状態の森林としてよく知られています。これまで多くの研究によって、土壌中・地下水中での脱窒がN2Oの放出、硝酸の濃度減少・同位体比上昇などの点から議論されてきています。また、窒素飽和の原因の一つである、降水中の多量の窒素についても、同位体比のキャラクタリゼーションが行われつつあります。

-- 本研究では、今までのFM多摩丘陵南の沢での研究を踏まえた上で、もう一度、降水・窒素固定(インプット)からアウトプット(渓流水・ガス放出)、そして内部循環(微生物による無機化・硝化・不動化、植物による吸収)を安定同位体を駆使して捉え直すことを目的とします。

-- 窒素循環のさまざまなプロセスの中で、特に注目するのが、降水でもたらされる窒素の運命です。窒素飽和状態では、窒素が余っている状態ですから、降水で供給された窒素は、微生物や植物にあまり使われず、そのまま流出してしまうことが考えられています。この「浄化能力」の低下については様々な議論がなされていて、どのようなプロセスが原因であるかは、良く分かっていません。

-- 2000年代に入って、この「浄化能力」の一つの査定手法として、降水と渓流水の硝酸について、その窒素と酸素同位体比を利用し、 渓流水中にどれだけの降水由来の硝酸が含まれているかを計算する研究が盛んになってきています。しかし、このやり方だと、入り口と出口を押さえただけで、中身がブラックボックスになっています。それが利点ではありますが、一方で手法の信頼性をしっかりと吟味するために、入り口・出口・そして中身の全てをきちんと考える必要があります。

-- そこで、様々な研究がすでに行われてきた利点を行かして、FM多摩丘陵南の沢にて降水から、土壌・地下水・植物体・そして地下水まで硝酸に着目して、その同位体比を追跡することで、硝化・脱窒・吸収という複雑なプロセスがどのように硝酸の同位体比を変化させるのか、そして渓流水の硝酸から、「浄化能」の低下を高い信頼性を持って査定できるのか、について議論します。

-- もちろん、酸いも甘いもご存じの方は、本のさわりの部分しか書いていないことが分かると思いますが、N2Oのisotopomer比、硝酸の酸素同位体異常、N2Oの酸素同位体異常、地下水のN2/Ar比など、非常にきわどいところまでの発展が色々考えられます。その第一歩として、硝酸に着目するのが良いでしょう。この研究テーマは、農工大・東工大のみなさまをはじめとした、木庭と共同研究を色々な形でしてくださっている関係者みなさまのご協力がなければ不可能であることを念のため付記しておきます。

とにかく3年生にとって何か情報になれば、、と書いてみてはいますが、どうなのでしょうね?こんなものでは全く分からない気もします。とはいえ、とにかく。

今日のお持ち帰り論文(久しぶりに本気で文献チェックできました)

  • 土壌中のDNAの同位体比測定(SBB in press):うそ、これは持ち帰りませんでした。
  • 細胞外DNAの土壌中での挙動(SBB in press): 吸着、分解、そして取り込まれる、という3つの運命。そして、DNAがおいしいこと、さらに情報を持っていること、これにつきます。
  • 土壌構造を保持したまま微生物を染め分ける(SBB in press): まえにも、ポリエチレングリコールで土壌を固めて、土壌構造を見るのだから、それとFISHやRadioautographyをリンクさせたら面白いはず、という話は、ここにも書いたかもしれません。が、本当に出来ちゃうのですね。素晴らしい。
  • 硝化のカオス的な振る舞い(ISME Journal): カオスのことは分かりませんが、硝化がchaoticであり、それがAOBとNOBの危うい関係に起因しているというのは、とても納得です。しかし、これだけのサンプルをqPCRかけるのですか、、、

あとは、GCAの土壌の鉄同位体プロファイルでしょうか。明日は、陸水学会の発表練習もありますし、頑張って台風を切り裂いて登校します!

 

| September. 5, 2007 : ああ、落ち着いて書いている時間が!

仕事が立て込んでいるというか、雪崩を起こしています。

とりあえず、

これからやってみようと思っているテーマ2
ミクロコズムとしての堆積物・土壌:微小環境での物質循環を扱ってみよう

-- 湖沼や河川には有機物が降り積もって出来た堆積物が存在しています。堆積物は比較的安定な、付着しやすい媒体なので、微生物活動が盛んに起きており、堆積物の中ではさまざまな物質循環が生じています。ヘドロが、ぶくぶくとメタンガスや硫化水素を放出したりするのは皆さんご存じでしょう。湖水中や河川水中よりも、微生物活動としては、堆積物は活発な場かもしれません。

-- 嫌気的環境と酸化的環境の変化(酸化還元境界層のゆらぎ、と指導教官である和田英太郎先生は良くおっしゃいますが)が、物質循環、ひいては温室効果ガスの発生に大きな影響を与えることはよく知られています。たとえば汽水湖のようなシステムでは、塩分の濃い、硫酸を多く含む海水が、常に深層にあり、酸素が消費されるために深層では無酸素で、硫化水素やメタンが発生します。一方表層では光合成によって酸化的な環境が形成されまる。それらの間、境界層では非常に狭い範囲(たとえば数十cmの間)で、劇的な物質循環の変化が認められます。

-- ところで、例えば湖の堆積物をとってくると、表層1cm程度で酸素がほとんど消費されてしまって、さらに深層では酸素のない環境での物質循環が見られたりすることがあります(堆積物の性質や、湖の酸素条件にもちろん左右されますが)。これは、酸化還元境界層に着目して物質循環を捉えるとすれば、湖全体と同じような物質循環を長さ5cm程度の堆積物コアの中で見る(しかも、いじる)ことが出来ると考えられます。たとえば、水の中にリンが増えるとどうなるのか、温度が上がると酸素はもっと消費されるのか、など様々なアプリケーションを試すことで、より酸化還元境界層のゆらぎについての知見を増やすことが出来ます。これは湖全体を研究対象としていてはなかなか困難なアプリケーションです。

-- 現在、microsensorという機械をつかって、0.2mm程度の分解能で溶存酸素の鉛直分布を書いてみる仕事を始めています。今後、色々な堆積物の酸化還元環境を記述して行きたいと考えています。記述した上で、堆積物中の養分濃度、たとえばリン酸、硝酸、アンモニウム、鉄などの鉛直分布、並びに窒素化合物の安定同位体比測定によって、堆積物中で、どのような物質循環が生じているのかを明らかにします。そして、堆積物中での物質循環が、上方の環境、例えば湖水、河川水の水質にどのような影響を与えているのか、特に窒素除去能力(脱窒)に着目して、堆積物の役割を明らかにしたいと考えます。たとえば、木崎湖では、一酸化二窒素(N2O)が湖水中に存在しますが、N2Oが湖水中で生成されたのか(脱窒?硝化?)または、堆積物中で生成されて、拡散して湖水中に存在しているのかを分離することは、今後の木崎湖のN2Oを考える上で非常に重要かつ基礎的な情報ですが、その分離はきわめて難しいのです。

-- また、可能であれば、養分循環だけでなく微生物群集構造の鉛直変化を描くことで、酸化的環境と還元的環境に生息している微生物についての情報を得、さらにはその環境にゆらぎを与えたときの反応(resilienceとresistance)も、物質循環とあわせて見たいと考えています。特に河川堆積物は、日中・夜間で大きく異なる環境になっている可能性があります。そのようなところで微生物群集構造はどのような変化を見せるのか、結果、物質循環は、河川の水質はどのような影響を受けるのか?

-- microsensorはガラス製なので、残念ながら、もう一つの重要なミクロコズムである土壌には適用することが出来ません。そこで、微小なガス取り口を(なんとか)作成して、Membrane-Inlet Mass Spectrometry(MIMS)に直結することで、土壌中のガス濃度プロファイルを、なんとか3mmから5mmの分解能で書くことを目指しています。土壌は堆積物と比較して遥かに不均一な媒体で、ガス濃度分布も単純な鉛直分布を示すとは思われません。100ccのドジョウを捕ってきても、たとえば脱窒が行われているのは、体積にしてたった0.1%の微小環境だったというような研究もあります。土壌の不均一性に微小環境測定で真っ向勝負して、どのような土壌の顔が見えてくるか、に挑戦するために、MIMSの土壌への適応を行いたいと考えています。

-- 特にMIMSでの利点は、空気中のガスも、溶液中のガスも濃度測定が(理論上)可能なことです。土壌中では、例えば地下水面のような水分環境が変化する場所で、おそらく微生物活動は非常に大きいのだと思われます(養分が供給されるでしょうし)。しかし、今までのガス測定では、水と空気の境界、つまり最も重要である部分の試料を扱うことはきわめて困難でした。しかしMIMSを使えば、土壌コアの水に浸されていない部分から水につかっている部分まで連続的に測定を行うことが理論上可能です。このMIMSをつかって、特に土壌では、水分環境のゆらぎが土壌中、そして土壌から放出される各種ガス成分(CO2、CH4、N2Oなど)にどのような影響を与えるかに着目したいと考えています。この研究テーマは、農工大・東工大・産総研・京大のみなさまをはじめとした、木庭と共同研究を色々な形でしてくださっている関係者みなさまのご協力がなければ不可能であることを念のため付記しておきます。

ああ、、、これでは書かないほうが良かったかもしれませんが、、、でも、すこしでも3年生の手助けになれば、、ということで、挙げておきます。多分、改訂します。とにかく寝ます、、、明日も早起きします。

とりあえず今浮かぶテーマ:CH4とN2Oの培養実験(MIMS連続測定)、脱窒菌をつかった脱窒研究(NOは?)、植物の降水硝酸利用(NRAも)、N2Oの化学的発生(低pH)、微生物の同位体比(培養実験)、森林N2O-NO3(多摩丘陵)、DO15N(多摩丘陵)、土壌の微生物群集構造(DGGEでresilience)

あ、ステンレスチューブに小さな穴が空いていたのを、朝から汗だくになって発見しました。とりあえず今日は佳い日でした!色々情報を下さった関係者各位、本当にありがとうございました!

 

| September. 3, 2007 : 機械に追いかけられています

朝一番で、GCCIRMSとMicrosensorを立ち上げ、JSTの会計監査があり、ガスの納入があり、人間ドックの再予約があり、月例報告を忘れそうになり、GC-ECDの立ち上げがあり、査読がまた来て(昨日1つ終わらせたのに!)、あれよあれよの1日でした。

三年生のMさんがお話を聞きに来てくださいましたが、やっぱりなんというか、難しいですね。試みに、来年から始めようかな、と思っている研究テーマでも挙げていきましょう。具体的なものを何かたたき台にした方が話がしやすいでしょう、と考え直しました。

これからやってみようと思っているテーマ 1
小河川のメタボリズム:河川の「息づかい」を聞き取りましょう

-- 河川の中では養分が常に様々なプロセスを経て循環しています。その中でも脱窒は、窒素分を自然に浄化する能力として注目されており、色々な研究が行われています。しかし、脱窒というプロセスは、最終生成物がN2という濃度定量の困難な物質であること、河川での脱窒は主に堆積物で行われていると考えられるが、堆積物の空間的異質性が非常に高く、平均的な脱窒速度を見積もることが困難であること、などの問題点があり、定量的な議論が出来ずにいました。しかし富栄養化が進む陸水生態系で、どれだけ窒素が自然に除去されているかを見積もることは、今後の健全な生態系の維持管理に大変重要です。

-- 河川生態系は、とても身近な生態系ですが、昼と夜で全く異なる顔を持つ可能性があります。日中光合成が盛んで、(Production/Respiration比が大きい)酸素が十分にある状態では、酸化的環境であるために脱窒速度は抑えられ、一方夜間では酸素の生成がないために、還元的環境が形成される可能性があります。または、堆積物の中では常に酸素が無くて、河川水の溶存酸素濃度はまったく河川の窒素除去能力に関連がないかもしれません。日中酸素が多いと言うことを、酸素を生産する生物が多いと考えれば、もしかすると夜間は酸素の消費が非常に多いことになっているかもしれません。

-- 近年、最終生成物のN2をN2/Ar比として精密に測定し、河川のような複雑な生態系での脱窒を推定しようという試みが行われてきています。そこで、今立ち上げ中のMembrane-Inlet Mass Spectrometryを用いて、海洋でやられているようなO2/Ar、N2/Ar比の連続観測を、陸上の小さな生態系(農業用水・農工大の池)で行いたいと考えています。今まで(実習でやった)ウィンクラー法を使って、例えば1時間ごとに24時間観測するような、とにかく大変であった溶存酸素濃度変化の追跡を、より詳細に、1分ごとに行い、PARなど環境要因の変化とどのようなリンクがあるのか(タイムラグがあるのか)、P/R比の季節変動は養分条件とどのような関連があるのかについて検討したいと考えています。

-- そして、呼吸としてもう一つ大事な硝酸呼吸(脱窒)についても、その規模およ び速度の決定要因について議論できるだけの詳細なデータを収集したいと考えています。ある河川の脱窒速度は溶存酸素で記述可能なのか?DOC?流速?それとも、、、

-- 出来れば農業生態系を流れるような小さな河川、具体的には木崎湖に流れ込む小河川を対象として、機材を持ち込み、3日間連続観測を目標にしたいと思っています。また、その前段階としては、農工大府中キャンパスの池の水について測定してみたいと思っています。身近な生態系こそ良く分かっていないものです。酸素の呼吸と硝酸の呼吸、さて、どのような息づかいが聞こえるのか、それともまったく静かな世界なのか、、、

-- 発展系としては、河川堆積物のmicrosensing、培養実験、微生物群集構造解析(DGGEレベル)、もちろん各種窒素化合物の窒素安定同位体比測定、溶存酸素の同位体比測定、そしてモデル化までを視野に入れてます。Nutrient Spiralingを同位体比で表現できるかどうか、というのが最終目標です。

-- そして、木崎湖での窒素循環研究に役立つような情報が提供できると、一粒で二度おいしいですね!この研究テーマは、農工大・東工大・信州大のみなさまをはじめとした木庭と共同研究を色々な形でしてくださっている関係者みなさまのご協力がなければ不可能であることを念のため付記しておきます。

いつまで続くか分かりませんが、、書いても書いても足りないですし。というか、自分の科研を書きなさいって、、、テーマ2は、やっぱりmicrosensorでしょうか。

もちろん、他大学、他機関の方で、ああ、それやりたい!という方いらっしゃりましたら、どうぞご連絡を。僕のアイディアはすべてopenです。たいしたアイディアではないですしね。共同研究者になって頂かなければならない方々は、全てのテーマについてありますが、今の段階ではそこまで記載しません。

明日はMicrosensorのリハーサルです。上手く行くかしら、、、GCCも、ECDも。

 

| September. 2, 2007 : ぷろのしごと

ついに9月になりました。だいぶ過ごしやすくなりましたね。

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金曜日は朝からGCC-IRMSと遊んでいて、とにかくCO2をsyringe injectionしていました。CO2というガスは本当にIRMSと相性が良いなぁと感心しました。結構手荒に扱ってもきちんと反応するというか、イオン化効率の問題だけではなく、非常に扱いやすいな、としみじみ思いました。

窒素もN2Oにすることでcryofocus出来るし、NとOの情報が入るし、N-N-Oでsite preferenceも出せるし、だいぶ変わったのですが、基本的なところで、CO2とはだいぶ差があります。

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院試お疲れさまでした!ということで4年生を待ちかまえていたのですが、皆さんすでに逃亡なさってしまったようで、院試を受けていない我々だけで、サントリー工場直送のビールを飲んでおりました。やっぱりおいしい気がしますが、、気のせいでしょうか?

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土曜日は高校の頃の同級生達と、横浜-巨人戦を見てきました。ホームラン有り、乱闘有り、サヨナラ有り、まさにプロ野球フルコースで、満喫しました。工藤が投げてくれれば、、、1日ローテーションを読み誤りました。残念。

それにしてもプロはすごいです。一球一球に対する球場全体の緊張感は、やっぱり球場で見ないと分からないですね。いやぁ、すごかったです。プロの仕事は、ものを作るのでも、スポーツでも、何でも本当にすごいです。

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博士をとって、国内・海外でPDをした後、一般企業に就職していたボート部の同級生が、大学に准教授で戻るという知らせを今朝聴いて、とても嬉しくなりました。とても苦労しつつ、様々な大学・研究所を世界にまたをかけて歩いてきた彼は、アカデミックポストを一度あきらめたのですが、何のかんの行って戻ってこれてしまうのはさすがです。おめでとう!!!